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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
12章 揃う役者たち
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12章-覚悟と秘策-


「で、具体的にどうする?」


レイル隊との通信を終えてすぐ、アンナが集まった面々を見回して尋ねた。


「すべきこととしては、とにかく人類軍を和平路線に転向させる。ですよね」

「そうね。そうすれば他はどうにかなるかもって話だし」

「問題は、それが現状かなり難しいということですが」


現在の人類軍上層部は戦争に積極的な推進派が主導権を握っている。

アキトたちから提案したところで彼らが簡単に和平に方針転換するとは思えない。


「災厄のことを含め全ての事情を説明しても無理、でしょうか?」

「無理だろうなぁ。推進派とやらだが、あのゴルドの爺さんが死んでいこうやってることがほぼ悪党のそれじゃねぇか」


そもそも戦いを望まない穏健派であったクリストファーを暗殺したのもまず間違いなく推進派の人間であったことは間違いない。

そのためにテロリストたちと通じていただけではなく、その後用済みとなったテロリストたちを始末しようとまでしているくらいだ。


戦争推進派の主張は「危険な人外を退けて世界に平和を」というのが一般的だが、別派閥のクリストファーをテロリストを利用して暗殺までするような人々が果たして「世界の平和」を心から祈っているだろうか。


「人外と戦うだのなんだのはついでで自分たちが美味しい思いをしたいだけのゲスだらけ、なんてことも十分にありそうだからなぁ」

「そう、ですね。認めたくはありませんが、説得できる相手ではないかと」


普段であれば人類軍を擁護するであろうミスティまでこのように言い出すほどに、推進派は信用できないというわけだ。


「しかし、言葉で解決できないとなるといったいどうすれば……」


ガブリエラは戸惑っているが、その答えはとてもシンプルだ。

というよりガブリエラも答えはわかっているのだろうが、それ(・・)を選びたくないだけなのだろう。

それはアキトやアンナたちも同じで、そのわかりきった答えを口にするのに少々ためらいを覚えている。


「んなもん、推進派をぶっ潰すしかねぇだろ」


そんなアキトたちのためらいなど知らないとばかりに朱月が当然のように答えを口にした。


「朱月……」

「実際それしかねぇだろ。言葉の通じねぇ悪党共が相手となりゃなおさらな」


言葉で平和的に解決することができないのならば、あとは相手を排除するしかない。

そして現在アキトたちが置かれている状況は、すでにそういった局面にある。


朱月は、そんな誰に言われるまでもなくわかりきっていた事実を口にしただけだ。


「まあ、実際それはそうなんだろうけどねぇ……まさか軍人やっててクーデター(・・・・・)やらなきゃならなくなるとは思ってなかったわよ」


アンナの言う通り、現在人類軍を仕切っている推進派を排除するというのはそういうことなのだ。


「何、勝てば官軍負ければ賊軍って言うだろ。しっかり勝った上で世界を平和にしてやりゃあ、お前さんたちは世界を救った英雄としてそりゃあもうチヤホヤされるだろうよ」

「完全に結果論ではないですか……」


逆に言えば失敗すれば完全にこっちが悪人という扱いをされるわけで、その場で殺されるか逃げ延びてテロリスト扱いかくらいの未来しかなくなる。


「……とはいえ、それしか道はないか」


少なくとも上層部が推進派に牛耳られている間は和平への方針転換などあり得ない。

やり方はどうあれ、推進派を黙らせるしか方法はないのだ。


「レイル君もそれでいいか……?」

「……いいかと聞かれると悩ましいですが、そうしなければならないことは理解しています。であれば、覚悟を決めましょう」


続いてアンナとミスティにも視線を投げかけるが、ふたりは言葉で尋ねるより先に頷いてくれた。


「やるしかないんだからウダウダ言ってるだけ時間の無駄よね」

「それに、人類軍がそのような輩に牛耳られているというのは非常に不愉快ですから」


意外にもミスティが一番乗り気であることに驚きつつ、アキトもまた覚悟を決める。


「よし! んじゃまあ話はまとまったな」

「ああ。問題はどうやって推進派を排除するかだが……」


善悪はともかく相手が人類軍を動かせる立場にいる以上、いくら突出した力を持っている〈ミストルテイン〉でも単純な武力では勝ち目がない。

頼れる人外たちはいるが、その力を借りて武力で制圧するとなれば人類軍に大きな損害を与えることになる。

今後のことを考えるならそれは最大限避けるべきだ。


「どうにか武力以外で推進派を沈黙させられればいいのですが……」

「それに関して、俺様にひとついい考えがある」


ミスティの言葉に対し、朱月がニヤニヤと笑みを浮かべて言う。


「いい考え……玉藻様に頼んで推進派全員洗脳してもらうとかそういうの?」

「実際できるだろうがそういう物騒な話じゃねぇ。……お前さんたちからすると一番理想的な、ほとんど血を流すこともなけりゃ異能に頼ることもせずに済む方法がひとつあるんだよ」


そんな方法に心当たりはないが、今のタイミングで朱月がデタラメを言う理由はない。


「まあ、今の時点では絶対上手くいくとは言い難いんだが、可能性はそれなりにあるぜ」

「わかった。聞かせてくれ」

「おうよ。それじゃあまず、ひとついい知らせだ」


説明を始めるでもなく、朱月はニヤニヤと笑みを浮かべたまま“いい知らせ”とやらを告げた。


「テロリスト連中のところに忍び込んでやがった見知ったネズミ。しぶとく生き延びてるみたいだぜ?」


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