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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
11章 目覚める者、眠りにつく者
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11章-救出作戦④-


アキトの操縦で〈パラケルスス〉垂直に急加速する。


大きく動いた〈パラケルスス〉に小型ファフニールが反応しすぐさま無数の閃光を放ってくるが、それらを〈パラケルスス〉まるで舞い踊るように軽やかに回避した。

その背には一般的な機動鎧のような金属の翼ではなくエメラルドのような緑の光の翼が六枚、キラキラと輝いている。


〈シルフ・フォーム〉の最たる特徴がこの光の翼だ。


通常の機動鎧がメインブースターと細々したスラスターで加速や制御を行うところ、〈シルフ・フォーム〉の〈パラケルスス〉はメインブースターと光の翼によって空を舞う。

細かな制御を全て光の翼で行うことで科学のみで生み出された機動鎧では決してできない変幻自在な挙動を高機動で行うことができる。

それこそが〈シルフ・フォーム〉の強みだ。


引き続き無数の閃光が〈パラケルスス〉一機に狙いを絞って攻撃を仕掛けてくるが、右に左に、前に後ろにと軽やかにその全てを翻弄する。


「(想像以上だな)」


事前にスペックや強みを聞かされてはいたが、実際に使ってみればなおさらそのスペックの高さに驚かされる。

アキトは以前少しだけ〈アサルト〉を操縦したことがあるが、この機体は〈アサルト〉以上の速度を出しながら〈アサルト〉とは比べ物にならないほど精密なコントロールが効く。

科学の産物であるスラスターでは不可能だったことが、魔術によって見事に実現されている形だ。


「これなら……!」


上昇を続けファフニールの攻撃が弱まったタイミングで、今度は〈パラケルスス〉を急降下させる。

重力と推進力を合わせて先程以上のスピードを出しながらも、光の翼による精密なコントロールで攻撃を回避しながら小型ファフニールへと迫る。

近づけばそれだけ回避するのが難しくなるのだが、そのデメリットを〈シルフ・フォーム〉の機動力は凌駕している。


「……斬る!」


両手の〈ライトシュナイダー〉を閃かせ、すれ違いざまにファフニールの左の翼と胴体に斬撃を叩き込んだ。

胴体にはそれほどの傷は負わせられなかったが、守りの薄い翼はその一閃で宙を舞う。


だが、まだこれだけでは終わらない。


「右ももらうぞ!」


真上からファフニールをとすれ違った直後、その下をくぐるようにして〈パラケルスス〉はファフニールの右側へ。

そして今度は上昇しながらファフニールの右側の翼と胴を切り裂いた。


空中でUターンしての四連撃で両方の翼をもがれた小型ファフニールが落ちていく。


それを見下ろしつつ、アキトは二本の〈ライトシュナイダー〉を高く構えた。


「……予行練習だ」


天魔竜神となったシオンを救うには穢れを祓う必要がある。

そのための方法は伝授されているが、ぶっつけ本番に不安がないわけではない。


もちろん無駄撃ちは避けるべきだが、眼下にいる穢れに染まった魔力で生み出された邪竜の影は予行練習にはもってこいだろう。


「我、聖なる秘宝と契りを交わせし者 輝ける光を呼び起こし、今ここに悪しきを祓わんと願う」


〈ライトシュナイダー〉の光の刃がその色味を変え、金色の輝きで周囲を照らす。


その輝きに小型ファフニールが威嚇するように咆哮するのを見据えつつ、再び〈パラケルスス〉を急降下させる。


小型ファフニールが牽制するように放ってくる攻撃を今度は避けずに金色の刃で切り払いつつ一気に距離を詰めていく。


そうすればほんの数秒で刃が届く間合いだ。


「――光あれ」


〈パラケルスス〉はすれ違いざまに小型ファフニールの胴体に十字の傷を刻んだ。


一瞬の静寂のあと、傷跡から刃と同じ金色の輝きがほとばしり、光がやんだ時、そこに漆黒の巨体は跡形もなくなっていた。


『結果は上々ってとこだな』

「ああ、これで安心して本番に臨める」


朱月に言葉を返しながらアキトはこちらを見下ろすように空に佇む天魔竜神を見上げる。

その瞳は変わらず虚ろなのだが、その小さな体から発せられる魔力の気配には確かな警戒が感じられる。


続いてアキトたちを囲むように周囲の空間が歪み、無数の小型ファフニールが姿を表す。


その光景は絶望的なものにも思えるが、アキトに――アキトたちはその程度で怯みはしない。


歪みから現れた内の1体が〈パラケルスス〉を狙って飛び出してくるが、アキトの間合いに届くより先に〈セイバー〉の振るった〈アメノムラクモ〉によって首を落とされて消える。


続いて別の1体は〈ブラスト〉の集中砲火に気を取られている隙に〈スナイプ〉によって頭部を撃ち抜かれ、さらに別の一体は〈クリストロン〉のクローに防壁を破られたところを〈サーティーン魔導式〉の放った閃光で消し飛ばされた。


『本体はともかく、影にゃ手加減もいらねぇからなぁ』


首だけ歪みから出てきていた1体を全身が出てくるのも待たずに容赦なく仕留めた朱月が嗤う。


「お互いエンジンもかかってきただろ? ……ここからが本番だ」


〈パラケルスス〉の翼を再び輝かせ、アキトは天魔竜神へと飛びかかった。


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