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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
11章 目覚める者、眠りにつく者
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11章-救出作戦③-


一番に飛び出した朱月の〈アサルト〉が〈月薙〉を振り上げて天魔竜神へと迫る。


『オラァ!』


光を反射する白刃が一切の躊躇なく振り下ろされるが、それは天魔竜神の小さな体に触れることなく魔力防壁に阻まれた。

想定通りと言えばその通りなのだが、朱月の一撃がこうもあっさり受け止められるとなるとやはり一筋縄には行かなそうだ。


『というか容赦ないね朱月!?』

『見ての通りあっさり防がれるんだよナツミの嬢ちゃん!』


そんな怒鳴り合いのようなやりとりの中、〈月薙〉を防壁で受け止めていた天魔竜神がそっと腕を〈アサルト〉へと向ける。

その動きを察知した朱月が天魔竜神から離れる。


次の瞬間、天魔竜神の手から発せられた黒い閃光がオレンジ色の空を切り裂いた。


『えげつねぇな!?』

『ってわけだ! 気ぃ抜いてっと風穴開くぞ!』


すんでのところで閃光を回避した朱月は再び〈月薙〉を振り下ろすが、やはり防がれる。

このままでは危険と判断したのか一度距離を取った。


『……確かに手加減できる相手じゃねぇな』



そう言って次に天魔竜神に仕掛けたのはシルバの〈クリストロン〉だった。

大きなクローを振り上げて突撃した〈クリストロン〉が天魔竜神の背後から仕掛けるが、それはあっさりと防がれる。

だがそれは想定内だったようで、シルバは続いてクローとは逆の腕に取り付けられた光学兵器で天魔竜神の横から攻撃を試みる。

相手が機動鎧よりも小さいからこそできる二方向からの攻撃はいい作戦だと思えたが、それでも魔力防壁にしっかりと阻まれてしまった。


一連の流れを見ていて覚悟が決まったのか、他の機動鎧たちも動き始める。


〈クリストロン〉が天魔竜神から離れた直後、〈ブラスト〉が無数のミサイルを放ちそれらが全て天魔竜神に直撃し小さな体が爆炎に包まれる。

そうして立ち込めた煙は強く羽ばたかせた翼で吹き飛ばされるが、その隙を狙った〈スナイプ〉が翼を狙って銃弾を放つ。


しかしそれすらも天魔竜神の防壁を貫くには至らない。


『本当に硬い……ファフニール以上っていうのは本当みたいだ』

『じゃあもっと仕掛けるしかねぇよな!』


〈サーティーン魔導式〉が天魔竜神に肉薄し、腕部のブレードを振り下ろす。

さらに両肩のガトリング砲で至近距離から攻撃を叩き込んでいたかと思えば、おもむろに機体正面に魔法陣が展開された。


そして次の瞬間、眩い閃光が迸って天魔竜神を飲み込んだ。

不意をついた至近距離からの強力な一撃に天魔竜神の小さな体が吹き飛んでいく。


『今の何!?』

『簡易式“十三番目の流れ星”ってな! さすがに効いたか!?』


その場から吹き飛ばされた小さな体は十メートルほど移動してから体勢を立て直した。

吹き飛びはしたものの防壁を破壊できたわけではないらしく、相変わらず天魔竜神は無傷だ。


そして、どうやら今の一撃であちらのスイッチを入れてしまったらしい。


言葉を発することなく天魔竜神が禍々しい魔力を放つ。

たったそれだけで周囲一体の空気が震えているような感覚を覚えるほどだ。


『何か仕掛けてきやがるぞ!』


朱月の注意喚起の直後、天魔竜神の周囲で空間が歪んだ。


「まさか、アンノウンを呼び出す気か!?」


魔物としての力を手にしているシオンであればそれも不可能ではないということは本人からも聞いている。

ここでこちらと戦うためにその力を行使してきたとしてもなんらおかしくはない。


『……いや、もっと厄介なもんが出てきそうだ』


歪みの中からまず最初に出てきたのは漆黒の鱗に覆われたトカゲのような頭部と鋭い牙を携えた口だ。

そのまま止まることなく歪みからでてきた五メートルほどの体は頭部と同じく鱗で覆われ、悪魔のような翼を広げる。


『……ファフニール?』


いつか見た恐ろしい邪竜――その小型版とも言えるドラゴンが咆哮する。


『さすがに本物じゃなくて分身かなんかだろうが、油断はすんじゃねぇぞ』


その言葉の直後、口元に魔力を集めた小型ファフニールが火を吹いた。

アキトたちの機動鎧にそれが命中することはなかったものの、その火に晒された荒野の大地は一瞬にして真っ黒に焦げてしまっていた。

朱月の言葉通り、油断していい相手ではなさそうだ。


「俺たちもいつまでも様子見しているわけにはいかないな」


アキトやハルマは確実に穢れを祓わなければならない。

そのため天魔竜神の動向を様子見していたのだが、小型のドラゴンまで呼び出されては悠長なことも言っていられない。


「俺とハルマも本格的に動く、いいな朱月」

『ああ。思って以上に面倒なことになってきやがったから、むしろありがてぇ』


ひとつ呼吸をおいて、アキトはレバーを握り直す。


「……行くぞ!」


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