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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
11章 目覚める者、眠りにつく者
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11章-強行突破-


戦場は混沌を極めていた。


センサーでまともにカウントできないほどの数の中型や小型のアンノウンが集まり、人類軍の戦艦や機動鎧がそれを迎え撃つ戦場はとんでもなく慌ただしい。


幸い、というか驚くべきことに量産型ECドライブ搭載機動鎧である〈クリストロン〉及び量産型ECドライブ搭載艦である〈グングニル〉はすでにかなりの数配備されているらしく、今回の作戦に参加している部隊のほとんどがそれらを使用している。

性能が高さ以上に、魔法の訓練なしで魔力防壁を展開できるおかげでこれだけの乱戦でも人類軍に目立った被害はまだなさそうだ。


「それはそれとしてやりにくいけどね!」


正面に向かって〈ドラゴントゥース〉の閃光を放ちながらシオンは苛立ち混じりに悪態をついた。


『シオン、アンタなんか調子でも悪いの? いつもほど暴れてないみたいだけど……』

暴れられない(・・・・・・)んですよ!」


心配そうに声をかけてきたアンナにキレ気味に返事をする。


「こういうと悪いですけど、友軍がスーパー邪魔!!」


〈アサルト〉を駆るシオンの戦闘スタイルは、高機動での撹乱および高火力での殲滅だ。

その一方であまり狙いをつけるのが得意ではなかったりする。


「〈アサルト〉で飛び回ろうにもこんな密集してちゃ誰かに追突しそうだし、ぶっ放したらそれはそれで友軍にも当たりそうだし!」


しかもシオンの乗る〈アサルト〉が追突するということは、イコールこの戦場でトップクラスの強度を誇る魔力防壁をまとった機動鎧で体当たりを食らわせるということと同義だ。

つまり、そこらの軍人が乗っている〈クリストロン〉では確実に壊れる。

いつものノリで高火力の攻撃を雑に放つなんていうのももちろん論外だ。


要するに、シオンは自分の得意分野を全く発揮できない状態にある。


『あちゃー、そっか〈ミストルテイン〉(うち)は少数精鋭だもんね……』


アンナの言う通り、〈ミストルテイン〉の機動鎧はと言えば、初期は〈アサルト〉以外に三機のみ、増えた今でもプラス二機の五機しかいない。

たった五機では密集のしようがないし、シオンがとんでもない大技を使うにしても一声かけて退避させるのはそう難しくはなかった。

だからこれまでの戦いでこのような問題が起きたことはなかったわけだ。


「……いっそ二、三機巻き込んだとしても四、五〇体倒せばオッケーなのでは?」

『オッケーなわけないでしょう!』


ボソリと呟いた内容はミスティから凄まじい勢いでNGを出されてしまった。

そうでなくてもダメなことくらいシオンにだってわかっている……ほんのちょっぴり本気だったが。


「というか、こんな感じで足止めくらってていいんですかね?」


シオンたちの目的地はあくまでテロリストたちが使用している放棄された軍事拠点であって、ここではない。

テロリストたちによって差し向けられたアンノウンに捕まって足を止めていてはあちらの思う壺ではないだろうか。


「いっそ強行突破させてもらえると俺はやりやすいんですけど」

『気持ちはわかるが今回は〈ミストルテイン〉単独じゃない。俺たちは慣れてるからどうとでもなるが、他の部隊がお前の無茶に柔軟に対応できるわけないからな』


そうして混乱させてしまうと、その隙にアンノウンにやられてしまったりする可能性がある。間接的にシオンの無茶のせいで死人を出すというのは当然よろしくない。


「じゃあとりあえずこのままやるしかないですか……」

『いや、少し待て』

「?」


ダメということで仕方ないと諦めようとしたシオンをアキトが止める。

どういうことかと首を傾げていると、〈ミストルテイン〉から全体に対しての広域通信が発せられた。


『こちら、特別遊撃部隊〈ミストルテイン〉! 本艦はこれより主砲で前方のアンノウン群を攻撃、その後最大船速で敵拠点へと突撃する! 人類軍各機は射線から退避を!』


突然の宣言にシオンの理解が遅れる。


『ということだ』

「って言われてもわかりませんが!?」

『貴方のやりたがっていたことを〈ミストルテイン〉全体でやるという話です』

『勝手にやっては問題になるが、上の許可を得ればなんの問題もないからな』


つまり、シオンが言い出す前からアキトはこの状況を突破する方法を考え、さっさと上の人間に進言していたということらしい。


「話が早くて何よりですね!」

『だが、この後俺たちは部隊の先頭に立つことになる。相応のリスクはあるから覚悟しておけ』

『問題ありません!』


力強いハルマの返答に続き他の機動鎧部隊からも了解の返事が届く。

もちろんシオンの答えも同じだ。


『〈ラグナロク〉射線上の友軍の退避、完了しました!』

『発射準備も完了してる! いつでもやれるぞ!』

『よし! 〈ラグナロク〉、発射!!』


一拍遅れて迸った閃光が空を裂き、無数の黒い点のように見えていた前方のアンノウンたちをかき消していく。


『続けて最大船速! 突破する!』

『了解!』


ナツミの返答に続いて急加速した〈ミストルテイン〉に続くように〈アサルト〉を飛ばす。


〈ラグナロク〉でかなりの数を葬ったとはいえまだ多く残るアンノウンたちが〈ミストルテイン〉に群がろうとするが――、


「させるわけないってね!」

『ええ、そうです!!』


〈アサルト〉は今までの鬱憤を晴らすように魔術で拡散と強化を施した〈ドラゴントゥース〉を放ち、〈ワルキューレ〉も周囲に展開した無数の魔法陣から光の剣をばら撒く。


他の機動鎧も各々が迫るアンノウンを迎撃しする中〈ミストルテイン〉はアンノウンの群れのど真ん中を荒々しく突破した。


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