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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
11章 目覚める者、眠りにつく者
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11章-ひとつの終わりに向かって①-


〈ミストルテイン〉は数日おきにテロリストの制圧を命じられ――その度にこっそり逃したり殺したフリをしたりしながらリーダー格をレオナルドに引き渡してをくり返していた。


そうして何度か目の引き渡しを行なった次の日のこと。


「テロリストたちが集結してる、ですか?」


ブリーフィングルームに集められた〈ミストルテイン〉主要メンバーの前でアキトが言った言葉をシオンは復唱する。


「集結っていうのは、ひとつのテロ組織の話ではなく?」

「違う。テロ組織間の垣根を越えての話だ」


分散して各地で活動していたテロ組織が戦力を集結させるのではなく、異なる複数のテロ組織がなんらかの形で集合し始めているのだとアキトは言う。


「同盟を結んだのかあるいは合併したのか。その辺りの詳しい背景は人類軍では把握できていないんだが、テロリストたちがとある放棄された軍事基地に集まっているらしい」

「なんでまた……ってのは心当たりなくもないわね」


アンナの言う通り、今そのような動きがあることには思い当たる節がある。


「あれだけあちこちで人類軍にテロ組織が制圧されてるとなれば、そういう考えになるのも当然っちゃ当然ですよね」


人類軍によるテロリストの制圧が本格化してからしばらく。

相当な数のテロ組織が人類軍によって制圧されて姿を消してきた。


テロ組織にはそれぞれ強い主義主張があるため徒党を組むことは少ないが、横の繋がりが全くないわけではない。

繋がりのあった組織が消えていく状況の中、多少の主義主張の差異に目を瞑って人類軍に対抗すべく徒党を組んだとしてもおかしくはないというわけだ。


「でだ。わざわざこうして集めたってことは何か上から命令が来たってことでいいんだよな?」


ラムダの問いにアキトとミスティは少々厳しい顔で頷いた。


「〈ミストルテイン〉は近く集結しているテロリストたちの制圧作戦に参加することになる。他の多くの部隊と協力しての大きな作戦になるだろう」


テロリストたちが戦力を集めているのなら、人類軍もまた同じように戦力を集めて対峙するまで。シンプルでわかりやすい流れだ。


ただ、なかなかに厄介なことにもなりそうな気配がある。


「今まで俺たちが制圧してきたテロ組織の分だけでも、アンノウン誘導装置軽く二〇〇個以上は回収しましたよね?」


保持数には多少の差があるが、ひとつの組織あたり最低でも二〇個はアンノウン誘導装置を保持していて、ミサイルやドローンなど様々な形で使う準備をしていた。

シオンたちはそれを使われる前に相手を制圧してきていたので目立った戦闘をしていないが、他の制圧作戦ではそれなりに激戦がくり広げられたと聞いている。


いくつ程度のテロ組織が集結しているのかは知らないが、五つも組織があればざっと一〇〇個の誘導装置が集まることになる。

あちらも追い詰められているはずなので、人類軍を退けるためにその全てを起動させたとしてもおかしくはないだろう。


「しかも相手は複数のテロ組織の集団でしょ? いくらシオンの空間転移で電撃作戦できるとはいえどっかひとつを制圧してる間に他の組織が誘導装置起動しちゃうわよね」


今まではひとつの組織が相手だったので、相手の中枢を押さえてしまえば誘導装置を使われることもなく終わらせられた。

しかし今回のようなケースだとそうもいかない。

どう考えてもそれなりの数の誘導装置を使用されることにはなるだろう。


「一〇〇個使われればざっくり計算でも一〇〇〇体以上は出てくるし、それだけ出てくれば誘導装置がなくても誘発されてアンノウンが湧いてきたとしてもおかしくないですよ」

「……間違いなく厳しい戦いにはなるな」


上層部も馬鹿ではないのでそれ相応の数の戦力を投入するだろうが、人類軍側の被害も決して軽くは済まないだろう。


正直そんな戦いに〈ミストルテイン〉を行かせたくはないのだが、そんな文句を言える状況でもない。シンプルにやるしかあるまい。


「大変な戦いにはなるだろうが、この作戦が成功すればかなりの数のテロリストたちを一気に制圧することができる。そうなれば世界におけるテロリストの活動は一気に下火になるだろう」


シオンからすればテロリストの脅威など大したことではないが、世界的に見ればそれなりの成果になる。

〈ミストルテイン〉もテロリスト制圧任務で忙しくしなくて済むようになれば、本来目指すべき和平に向けてアクションをしやすくなるだろう。


どうあれやらなければならないことなのだ。

細かいことは考えず、無事に作戦を成功させることだけを今は考えればいい。


「(ってのは表向きあるけど、逆に言えばこれで黒幕の掃除が一気に進んじゃうってことでもあるんだよね)」


黒幕が口封じのためにテロ組織を始末しているのなら、これは大チャンスだ。

これまでちまちまと潰していたテロ組織が一気にまとめて排除できてしまう。

黒幕がテロ組織に助言をして集結を呼びかけたのではないかという疑惑すらあるくらいに黒幕にとって都合のいい展開だ。


「(この作戦までに尻尾を掴めないと、テロリスト経由で黒幕を探り当てるのは無理になりそう)」


この作戦にただ参加して戦うだけではなく、何かしら裏で動く必要もあるのかもしれない。


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