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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
11章 目覚める者、眠りにつく者
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11章-人外たちの集い①-


人類軍上層部は相当に混乱しているようで、民間への会見は行われてから一日経過した今日もまだ〈ミストルテイン〉にはなんの連絡もないらしい。


シオンはあまり気にせずに普段通り十三技班の仕事をこなすばかりだったが、その夜シオンの私室にひらりと一枚の手紙が舞い込んできた(・・・・・・・)


言うまでもなく現代においてこのような形で連絡が来ることはそうそうない。

そんな現代に似つかわしくない連絡手段を用いてくるのは当然、現代を生きる人間ではないというわけだ。


「(ある意味下手に記録とかに残さないのにはちょうどいいんだけどね)」


明らかに魔法の類で部屋に届けられた手紙にさっと目を通し、シオンは私室を出た。

手紙に記されていた場所へ向かう道中、ガブリエラと遭遇する。


「シオンも、ですか?」


何がという言及はなくとも彼女の手に手紙が握られているのを見れば目的地が同じであることは一目瞭然なので、シオンは黙って首を縦に振る。

同じようにシルバとも道中合流し、シオンたちは手紙に記された待ち合わせの場所――展望室へと足を踏み入れた。


「――待っていましたよ」


そこには一人の少女がいた。


着物姿というだけでずいぶんと浮いているが、それ以上に目を引くのは黄金色の耳と、同じ色の九本の尾だ。

小柄なその身よりも大きな九つの尾をゆらりと揺らしながら少女は微笑む。


「シオン以外は初めまして、ですね。わたくしの名は玉藻前。今は我が眷属であるコウヨウの身を借りてお話をさせてもらっています」


ガブリエラとシルバが名乗られた名前に呆然とする中、どうぞよろしくと妖狐は可憐に微笑んだ。




【異界】までもその名を轟かせる悪名高い大妖怪の突然の登場に驚くガブリエラたちをなんとか落ち着かせ、シオンたち四人は展望室の片隅にある適当なテーブルを囲んだ。


「そこまで驚かせてしまうとは思いませんでした」

「何がですか。手紙にはコウヨウさんの名前使っておいてこの感じなら、最初っから驚かせる気満々だったやつでしょう」

「ですからそこまで(・・・・)驚かせてしまうとは思わなかったと言ったのですよ」


さらりと驚かせるつもりだったことは認めつつ、いつの間にやら用意したらしい日本茶を啜る玉藻前。全く反省はしていないのは明らかである。


「まあ、驚かすのは玉藻様の趣味みたいなもんですからもういいです。それよりも急に人外だけ呼び集めてどうしたんですか?」


人類軍の基地に停泊中の人類軍の戦艦の中で人外だけ集まっての話し合いとなると、アキトはなんだかんだ許してくれるかもしれないが当然好まれるものではない。

当然玉藻前もそこは理解しているのかこの展望室には幾重にも人払いや覗き見防止の術が張り巡らされているようだが、ナツミのようなイレギュラーもいるのだからあまり長話をするべきではないことに変わりはない。


そういった背景も踏まえてさっさと本題に入ろうというわけなのだが、玉藻前もそこに異論はないらしい。


「シオンは知っているでしょうけれど、わたくしには人類軍関係者のお友達がいます。そのお友達が言うには、今後の人類軍は少々今までよりも人外に優しくはなくなるだろうとのことなんです」

「でしょうね。そこは俺たちも想定済みです」

「その上で、あなたたちはどうするつもりなのかと気になりまして。……例えば、このまま人類軍に身を置いておいていいのか、なんて思っているのですけれど」


要するに、朱月と似たようなことを玉藻前もまた考えているのだろうとシオンは理解した。

種族は違えど鬼と妖狐。妖怪というくくりが同じだけあって発想も近いところがあるらしい


「……それはわかったんすけど、シオン先輩はともかくどうして初対面のオレたちをそこまで気にかけてくれるんすか?」

「それは、わたくしの眷属たるコウヨウが随分と心配していたからですよ」


今は玉藻前に体を開け渡しているので話すことができないが、元々は彼が玉藻前にこのことを相談したのが発端だったのだそうだ。


「人類軍が人外を排除する方向に動くのであれば、最も危険なのはあなたたち三人です。彼はそれを心配していたのですよ」

「まあ、コウヨウさんって穏やかで優しい人ですしね……」


日頃は臆病な性格が目立つが、必要とあればアキトに意見を言いに行くこともできる度胸はあるし、玉藻前の眷属とは思えないくらいに善良な青年――もとい妖狐なのだ。

自分より強い力を持つ人外であっても年下の少年少女のことを心配したとしてもなんらおかしくはない。


「公には人外であることがバレていない自分はともかく、人外として人類軍に関わっているあなたたちがこのまま人類軍にいては、ある日いきなり手のひらを返されて大変なことになってしまうのではとビクビク怯えているのですよ」


コウヨウが怯えている様は何度か目にしているので、その姿は容易く想像することができた。


さらに言えば、確かにコウヨウの危惧しているようなことが起きる可能性はゼロではない。

シオンとアキトの見立てでは魔物堕ちの問題からすぐにそのような手段には出られないという結論には至っているが、それも絶対ではないのだ。


「(自分のことは自分でどうとでもできるけど、ふたりのことも考えておかないとダメだったな)」


今の状態を継続するにか人類軍を切り捨てるか。

その選択はガブリエラとシルバにも大きく影響する。


自分ひとりの都合だけではなく、ふたりの考えを把握することはシオンにとっても必要なことなのだ。


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