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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
1章 魔法使いと人類軍
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1章-反撃の狼煙-


「〈サーティーン〉の〈アサルト〉への接触、確認できました」

「オッケー。後は放っておいて大丈夫でしょ」


コウヨウの報告に満足気に頷いたアンナ。

そんなアンナにミスティが勢いよく噛みつく。


「何がオッケーですか!? 作業用機動鎧を最前線に出すだなんて正気の沙汰ではありません!」

「え? アタシ、〈サーティーン〉出撃させるって言ったわよね?」

「最前線に! しかも新人技師をパイロットに出すなんて聞いていません! しかも出撃と同時にミサイルまで撃ちこむだなんて……!」


「あーごめんごめん」と謝るアンナだが、アキトにはわかる。

彼女は、作戦を全て説明するとアキトやミスティに反対されるとわかっていてわざと言わなかったに違いない。


「それはともかく、クロイワ班長! 例あのアレ、いけます?」

『問題ねえ! 早速始めるぞ!』


ゲンゾウの威勢のいい返答の直後。

ブリッジのディスプレイのひとつに無数の文字の羅列や何かのダウンロードを示すゲージなどが表示される。

数十秒ほどかけてそれらが完了したかと思えば、つい十数分前まで探知できなかったはずのステルス能力持ちのアンノウンの反応がはっきりと示された。


「通信状態は良好! 〈サーティーン〉からの索敵データ、来てます!」


もちろん、この短時間で〈ミストルテイン〉自体のセンサーが改良されたのではない。

現在〈ミストルテイン〉や他の機動鎧で確認できる索敵データは〈サーティーン〉が探知したものをもとに受信先の位置情報なども含めて再計算されたものだ。


「……まさか日々の整備の間に作業用の機動鎧のセンサーを改良してるとはな」


上層部からの指示で〈ミストルテイン〉や実験機四機のセンサーを勝手に改良することはできない。

だから十三技班の所有扱いになっている〈サーティーン〉を改良し、そこから情報を引っ張ってくるという方法を取ったのだ。


『ちょいと回りくどくて面倒だが、これなら上のお堅い奴らだって文句は言えねえだろよ!』


対面していないにもかかわらず鼻息の粗さが伝わってきそうなゲンゾウの皮肉にミスティが渋い顔をしているが、確かにこれなら文句を言われる心配はないだろう。


とにもかくにも、これで〈アサルト〉以外も問題なくアンノウンたちの反応を追うことができるようになった。


「それじゃあ早速だけど〈セイバー〉は基地内に突入、アンノウンたちを討伐! 〈ブラスト〉〈スナイプ〉はその場から動かず高度だけ上げて遠距離から〈セイバー〉の援護!」

『戦術長。〈アサルト〉からは救援するなと言われていますが……』


アンナの指示に対してハルマが難色を示す。

それに対して、シオンから"お願い"されたアンナはというと、


「いいのいいの! 気にしなくて大丈夫!」

『いいんですか!?』

「いいのよ。それに今アナタたちがしようとしてるのはアンノウンの討伐だもの。誰も〈アサルト〉の救援をしなさいなんて言ってないでしょ?」


アンナが命じているのは「アンノウンを討伐せよ」ということだけで「〈アサルト〉を救援しろ」とは確かにひと言も言っていない。


「つまりセーフ! あと確かにお願いはされたけどアタシがそれに応じるかは別問題だしね。……とにかく大丈夫だからすぐに作戦を始めて! どうもスライムたちは今も増え続けてるみたいだからね」


アンナに急かされて動き出した〈セイバー〉たち三機。

敵の数は多いが反応を捉えられる今なら、問題なく対処できる相手のはずだ。


「本艦も動く。誘導ミサイルでアンノウンたちに対して攻撃を開始しろ」

「おう! センサーが使えりゃこっちのもんだ」


他にも武装はあるが、あまり高威力のものを使って基地を破壊しすぎるわけにもいかない。

敵の防御力を思えばミサイルで十分だろう。


「ところで、〈アサルト〉と〈サーティーン〉はどうなってる?」


二機が接触してから三分ほど経過しているが、動きがない。

〈サーティーン〉のもととなっている〈ビックアームⅢ〉は背中に修理用の特殊なロボットアームを四本有しており、戦場の只中でも機動鎧のパーツ交換などが可能だ。

特に問題がなければ、もう〈アサルト〉の両腕を交換できていてもおかしくないのだが、それらしい報告もまだ届いていない。

むしろ〈サーティーン〉側の音声がこちらに届かない状態になっているようだ。


「〈アサルト〉はともかく、〈サーティーン〉との通信は可能ですね? 繋げてください」

「はい」


シオンは〈アサルト〉に対するあらゆる通信を遮断してしまっているので手の出しようがないが、〈サーティーン〉はそこまでのことをしていないので、〈ミストルテイン〉からの操作であちらの音声が届くようにできる。

そのための操作が行われている中、アキトの視界に入ったアンナは顎に手をやって複雑そうな表情を浮かべていた。


「アンナ、何か問題か?」

「問題っていうか……思ったより面倒な感じになってるかも……?」


要領を得ないアンナの答えに困惑している中、わずかなノイズとともに〈サーティーン〉側の音声が聞こえる状態になる。

それを確認したミスティが〈サーティーン〉に対する呼びかけを行おうとした、そのときだった。


『だぁぁぁかぁぁぁらぁぁぁ! 素直に修理されやがれこのバカシオン!!』

『ギルよりはバカじゃないし! っていうかそっちこそさっさと後方に下がれって言ってんじゃんこのアホギル!』


大音量でブリッジに響いたふたりの少年の声。

それはシオンとギルが言い争う、あまりにも低レベルな会話だった。


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