7章-魔術と科学②-
「「「「〈ワルキューレ〉にもっといろいろ載せたい?」」」」
「は、はい。そうなんです!」
〈ワルキューレ〉に通信機以外にも十三技班製の機械を搭載したい。
それがガブリエラの“ちょっと相談してみたいこと”らしい。
「それはなんていうか……【異界】の騎士的にいいの?」
「ダメ……でしょうか?」
「いや知らないけど」
騎士、というものはやはり伝統や騎士道といったものを重要視するイメージが強い。
そんな騎士の扱う魔装に、連携のための通信機はともかく他の機械までホイホイ搭載してしまってよいものなのか。
「いいじゃん。騎士とか正直ピンとこねえけど」
「そうそう。ガブリエラ本人がそうしたがってるんだから」
「えぇ……それ以前に人類軍側としても微妙なところなんじゃないかなぁ……?」
エリックの現実的な指摘などお気楽なギルとリンリーは聞いてもいないようで、すでにガブリエラを交えてどんなものを〈ワルキューレ〉に載せるかどうかで盛り上がり始めている。
「やっぱり、載せるなら武装よね。魔法があるからいろいろできるとはいえ武器は剣一本なんでしょ?」
「じゃあ射撃系だよな。魔力あるんだし光学兵装が妥当……?」
「いえ、その辺りは正直攻撃魔術で間に合ってるというか……個人的にはミサイルというものに興味があって」
「いい趣味してるわね!! そんなガブリエラちゃんに私特製の高性能ミサイルがあるんだけど……」
「「待って待って!」」
リンリーがここぞのばかりに物騒な代物をオススメし始めたのでシオンとエリックで慌てて止めに入った。
「……リンちゃん、もしかしてこの間お蔵入り判定くらった爆薬使うつもりじゃないよね」
「な、なんのことかなー?」
「あ、図星だこの人! 〈ワルキューレ〉なら微妙に人類軍の管理下じゃないからって言い訳するつもりでしたね!?」
人類軍内部では威力がありすぎるということでアウト判定確実なリンリー特製爆薬だが、人類軍の外ではそういった制限を受けない。
とはいえ現代では人類軍以外の軍事組織はイコール非合法組織なテロ組織だ。
さすがのリンリーも犯罪者になりたいわけではないのでそこに手は出せない。
そこに彗星のごとく現れた〈ワルキューレ〉は人類軍の機体でもなければ人類軍の協力者だが人類軍ではないという絶妙なポジションにある。
一応人類軍指揮下なので非合法な存在ではなく、かといって人類軍ではないので兵装の制限も当てはまらない――という風に言い訳することができなくもないわけだ。
「……その手があったか」
「はい、今その手があったかって言った人。前に出てきてください」
周囲に集まっていたメンバーの誰かがボソリと呟いたのをシオンは聞き逃さなかった。
呟いたのはあくまでひとりだったはずだが、シオンの言葉に目をそらした人間が数人いる時点で口に出さないまでも同じようなことを考えた不届き者は他にもいるらしい。
「ちょっと! 優等生ぶってるけどシオンだって〈サーティーン〉にヤバい兵装こっそり載せてた前科持ちでしょ!」
「……そこはほら、バレたあとはちゃんと取り外しましたし」
「取り外しただけでこっそり隠し持ってるの知ってるんだからね」
「…………」
「そんな感じのシオンにやいやい言われるのは納得いかない!」
「「「そうだそうだー」」」
リンリーの指摘にここぞとばかりに同調してくる数人のメンバーたち。
こうもギャーギャーと騒げば他の場所で仕事をしていたメンバーも気づく。
「オイオイ、お前ら何やってんだ? 親方が戻ってきたらどやされるぞ」
「むむむ、シオンくんとガブリエラちゃんがいるあたりなんだか面白そうな予感が」
騒ぎを聞きつけてやってきたロビンとカナエ。
そんなふたりにリンリーがざっくりと状況を説明する。
「なるほど、理解した」
「アタシも理解しました。……その上でひとついいっすか?」
妙に神妙な様子のカナエの言葉に全員が黙って続きを待つ。
「〈ワルキューレ〉に追加武装っつったら弓一択でしょうが!!」
「「「いやなんで?」」」
拳を強く握って高らかに宣言したカナエに即座に数名からツッコミが入った。しかし当の本人は全くそれを気にしていない。
「だって、あのファンタジー系のロボットものみたいな外見の真っ白な機体に、パイロットが天使みたいな美少女っすよ!? こりゃもう弓から光の矢を撃つしかないじゃないっすか!」
「これについては俺もカナエに賛成だ。やっぱりこういうのは見た目も大事だしな」
普段どうでもいいことで喧嘩していることの多いふたりのまさかの意見の一致。
さらにカナエの意見に同調するメンバーが他にも数人現れて同調し始める。
「いやいや、ここはガブリエラの希望を通してミサイルでしょ?」
「それはせっかく綺麗でカッコいい〈ワルキューレ〉の外観を損なうっすよ!」
「いや、だからそもそも人類軍からすると〈ワルキューレ〉のパワーアップをしちゃうのはNGだと思うんだけど……」
ロビンたちの参戦により、状況はさらに悪化した。
そんな状況を見て、シオンはそっと一歩下がる。正直この論争に巻き込まれるのは面倒だと思ったのだ。
「な、なんだか私のせいで大変なことに……?」
「大丈夫大丈夫。十三技班では月に一回くらいは見かける光景だからさ! ……そんなことより俺のオススメは背中と足に追加でスラスターつけて浮遊魔術と合わせて機動性アップってプランなんだけどさ」
「ちなみに俺は剣を半機械仕掛けにして切れ味アップをオススメするよ」
騒ぎの端でしれっと自分のプランを推すギルとシオン。
それが論争しているメンバーに気づかれるまで残り約十分。
さらに、格納庫に戻ってきたゲンゾウの雷が落ちるまで残り約三十分である。




