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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
5章 古き都にて
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5章-ふたつの戦場①-


ハルマが格納庫に駆けつけたときにはハルマ以外全員が機動鎧に乗り込む準備を済ませて待機していた。


ハルマも手早く準備を済ませると格納庫の一角にある待機スペースに合流する。


『全員揃ったな。あまり時間がないからよく聞いてくれ』


待機スペースのモニターに映るアキトの言葉を受け、ミスティによって現在の状況が簡潔に説明される。


現在〈ミストルテイン〉は欧州の手前あたりを航行しており、近隣の人類軍基地からの救難信号を受け取った。

それだけであればよくあることで片付くが、今回の救難信号は二箇所(・・・)からほぼ同時に発されているというのが問題だ。


『〈ミストルテイン〉の戦力は十分とは言い難いが、片一方を見捨てるわけにもいかない。今回は二手に分かれての戦闘になる』


ふたつの基地は遠く離れているとまでは言わないが、それでも双方をすぐに行き来できるほど近いわけではない。

一方の基地で戦況が悪化したからといってすぐに救援に行ける距離ではない以上、救援をあてにすることはできないと考える必要がある。


「具体的なチーム分けは? 個人的には〈アサルト〉とその他がおすすめなんですけど」

『却下だ』


普段通りのふざけた態度で、しかし明らかに本気でそう言ったシオンに対してアキトはピシャリとNOを突きつける。


『……各基地を襲っているアンノウンの数は同等。各基地の戦力もほぼ同等である以上、戦力は半分に分ける必要がある。それを踏まえ、〈ミストルテイン〉および〈セイバー〉、〈ブラスト〉をAチーム。〈アサルト〉と〈スナイプ〉をBチームとして作戦にあたる』


接近戦と得意とする〈セイバー〉と〈アサルト〉。遠距離の狙撃や砲撃を得意とする〈ブラスト〉と〈スナイプ〉を分散させるというのは妥当な判断だろう。


「(結局シオンの戦力に頼ってるのは癪だけど、今は仕方ない)」


〈ミストルテイン〉が〈光翼の宝珠〉の恩恵で一〇〇パーセントの力を発揮できるようになり、ハルマたちが魔力の制御を覚え始めたとはいえ、依然として最大戦力がシオンと彼の乗る〈アサルト〉であることに変わりはない。

そうなれば〈ミストルテイン〉は〈アサルト〉と別チームとするしかないだろう。


「一応聞いときますけど、俺ってホイホイ〈ミストルテイン〉と別行動していいんですかね?」

『今は基地への救援が第一だ。俺個人としてもお前と別行動で野放しにするのは心の底から避けたいがやむを得ない』

「さいですか」


モニターに映るアキトの顔のしかめっぷりからして冗談ではなく本気の発言だ。それはシオンにもわかったようで微妙な表情になっている。


『無駄話はそれくらいで! とにかく今説明したチーム分けで迅速に各機発進。

そのまま目標の基地へ向かって現地部隊に合流してアンノウンと殲滅ってことでよろしくね!』


横から割り込むようにモニター内に姿を現したアンナが指示を出し、それぞれが指示に従って自分の期待へ向かう。


「あ! 三人ともちょっと待って!」


急いでいる三人をシオンが慌てたように引き止める。

いったいなんだと振り返った三人に向かってシオンは右手をかざす。


「ひー、ふー、みー!」


シオンの声に反応して彼の影から飛び出してきた黒い球体がそのままハルマたちの肩に乗る。


「は? シオン、お前何を……」

「保険、みたいな感じ? ミツルギ兄はともかく委員長とレイスは魔力制御覚えちゃったし」


各機体に載せられたエナジークォーツとの魔術的な契約が完了している以上、実際の戦闘中であっても魔力の制御は可能になる。

しかも事故を防ぐために一旦制御をオフにする、なんて都合の良いことはできない。


「戦闘となると無意識に魔力注いじゃうこともあるだろうし、それで何かトラブルが起きないようにひーたちをサポートにつける」

「俺は制御できないんだが」

「戦闘中に覚醒なんてこともあるかもだから、念のためってことで」


それ以上文句を聞く気はないとでもいうようにシオンはその場から飛び去って〈アサルト〉へ乗り込んでしまう。

どうしたものかとハルマはリーナやレイスと視線を交わらせたが、肩に乗る黒い球体たちの気の抜ける姿を見ている難しく考えているのがバカらしくなってくる。


結局は細かいことは気にせずに各自自分の機体へと乗り込んだ。


「(少し前までなら、意地でも放り捨ててたんだろうな)」


自覚したての自らのシオンへの甘さに苦笑すれば、肩に乗っているひーが不思議そうにハルマの顔を見上げている。

それを宥めるように不思議な触り心地の体を軽く撫でてやってから、〈アサルト〉の発進準備を進めていく。


『あら、なんかヘンテコなの乗っけてるわね』

『お守りみたいなもんです。分散して戦うなんて初めてですしちょうどいいでしょ?』

『ハルマ君たち三人としてはいいの? 邪魔じゃない?』

「問題ないです」

『ならいいわ。でもいらないものだったらちゃんと断るのよ?』

『俺の善意がだいぶひどい扱い受けてる気がするんですけどー』

『さ、みんな頼んだわよ!』


シオンの文句を一切気にせずにアンナは出撃を指示し、四機の機動鎧が〈ミストルテイン〉から飛び出す。


『それじゃあBチームはここから別行動ってことで』

『先に言っておくけど、〈スナイプ〉置いて〈アサルト〉単機で先行なんてしたらあとで説教とスイーツ禁止令だから』

『……さすがにわかってますって』

「(絶対言われなかったらやってたなコイツ)」


返答までの微妙な間がそれを物語っていた。アンナもそれに気づいているようで、追撃を緩めない。


『レイス君。このバカが無茶しないようにしっかり見張っててちょうだい。きっとキミの優しさにつけ込んで好き勝手しようとするから注意してね』

『は、はい! 了解しました!』


「だから俺の扱いー!」と文句だかなんだかわからない叫びを残して〈アサルト〉と〈スナイプ〉が飛び去っていく。


それを見送りながらハルマたちもまた救援を待つ基地へと向かうのだった。


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