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【完結済】機鋼の御伽噺-月下奇譚-  作者: 彼方
3章 "悪"とは何ぞと問われれば
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3章-大西洋の旅路③-


「とまあこういう感じなんですけど、どうですかね?」

「何がどうなんですかね、なんだ……」

「作ってオッケーかどうかって話です」


アキトの私室に場所を移した人外社会講座の途中、シオンは格納庫でのコンペについてアキトに話をした。

すぐにでも作れそうなもの、ぜひ作ってみたいもの、果ては「これ作っちゃったら流石に不味いのでは」というものまで様々な案が出たわけだが、実際にそれを作るにはアキトにお伺いを立てる必要がある。


以前までの十三技班は人類軍技術部門の指揮下にあるのみだったので課せられた業務を滞らせない限りは研究開発は原則自由、むしろ奨励されていたくらいなのだが、現在は事情が違う。

〈ミストルテイン〉という部隊に属している以上、そこのトップであるアキトの承認はもらわなければならない。


「……わかっているとは思うが〈ミストルテイン〉は実際に活動している部隊だ。機動鎧各機の整備は常に完璧にしておいてもらう必要がある。加えて〈ミストルテイン〉自体の整備も発生してくるだろう。それら作業との両立ができるのか?」

「当然任された仕事はしっかりとこなします。あくまで開発は時間ができたときだけです」

「その開発に資金を出すことはできないが?」

「お金は十三技班のほうで工面します。部隊の予算を使わせてもらうつもりはない……って親方が言ってました」


アキトが次々に口にするネガティブな要素を即答で潰して、微笑みながら小首をかしげて見せる。

「他に何か問題でも?」というシオンの無言の問いかけはしっかりとアキトに届いたようで、最終的に彼はうんざりしたように大きく息を吐き出した。


「……俺が何を言おうとやめるつもりはないんだろう?」

「おや、わかります?」

「俺も十三技班の噂の数々は耳にしているからな」


アキトがどのような噂を耳にしたのかは知らないが、良いものではないのだけは確かだ。

そしておそらくその噂は大なり小なり事実に基づいているものだろう。


「いくつか条件がある」

「なんでしょう?」

「実際に開発するものを決めてたら俺にも詳細を説明すること。開発途中で変更点があれば些細なものでも報告すること。作業の進捗を定期的に報告すること。最後に、俺がダメだと判断したら開発前だろうが開発中だろうが大人しく開発をやめること」

「結構厳しい!」

「ものによっては許可を出すつもりはある。先に行っておくが秘密裏に開発なんてことだけは絶対にしてくれるなよ?」


最後の言葉に「フリかな?」などと一瞬考えたが、アキトの真面目過ぎる目にその考えは即座に否定した。本気で「やめてくれ」と思っているのが十分過ぎるほどに伝わる、切実な目だった。


とりあえずは、今アキトが提示した条件を十三技班に持ち帰ってゲンゾウたちと相談。という流れになりそうだ。


「それにしても、実際どの程度魔法と科学は共存できるものなんだ?」

「なんだ、艦長も結構興味あるんじゃないですか」

「でなければお前に魔法を習ってないさ」


アキトの返答にそれもそうかと思いつつ、ポケットから≪魔女の雑貨屋さん(ウィッチ・マート)≫特製通信端末のマジフォンを取り出す。


「これが、現状一番わかりやすく魔法と科学を共存させてる代物です」


人間社会で広く使用されているタッチパネル式の通信端末の中に、魔法の技術がいくつか組み込まれている。


この端末に組み込まれている魔法は大きく三種類。

動力としてエナジークォーツを使用していること。

マジフォンを介して魔法を遠方に届けることができること。

そして、電波などではなく魔術的な通信技術で通話やメッセージのやり取りなどを実現していることだ。


それ以外の部分は一般的な携帯端末とほぼ同じ……要するに科学技術が使用されている。

ミランダも言っていたように魔法一割、科学九割程度の割合で成り立っているわけだ。


「そう聞くとほぼ科学技術のようにも思えるが……人間が使うことを思えばそのくらいでなければ厳しいか?」

「そうかもしれません。実際、後から送られてきた武器類って九割九分くらい普通の道具だったでしょう?」


弾丸にしろミサイルにしろ、一般的なものに少し細工をして魔法を施してあっただけ。

何も知らない人間が見れば妙な記号や紋様が刻み込まれているだけの普通の武装にしか見えないレベルだった。


「使い手が俺みたいな人間なら魔法の割合をもっと増やしてもいいんでしょうけど、そうじゃないなら魔法二割と科学八割くらいが限界じゃないかなってのが俺の見立てです」

「十三技班で開発するものはそのくらいの想定ということか」

「俺だけ使えてもあんまり意味ないので、そういうラインを目指すことにはなるんじゃないかと」


下手にシオンしか使えないものなんて作り出してしまうと、ミスティのような人種や人類軍から睨まれかねない。

現状は人類軍の役にも立つような誰でも使えるものを作るくらいにしておこうというのがシオンの考えだ。

より尖った代物はそうやって人類軍の機嫌を取ってからのほうが作りやすいだろう。


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