変身後の姿を考えよう!
私は、今日も【サルト】に来ていた。
例のタイムリミットを宣告されてからは、特に【サルト】へ通う頻度が増えている。
その理由は、当然だけど……親友がいるからだ。
「しっかし、よう来るなぁ~……。ここに面白いもんなんて、あまり無いやろ?」
「ヌメっち見ているだけで、面白いわよ。話し相手がいるだけで、気も紛れるし……」
私は、【魂糸】を可能な限り発生させて、小石を持ち上げ続けていた。
その数は、先日ようやく千を超えた。
ただ発生させるだけなら、万までいけると思うけど、【魂手】で自在に動かせるとなると、まだまだ千を超えるくらいが限界のようだ。
ちなみに、今回は溺死した亀に転生した。
水中の岩の下にもぐりこんだ時に、甲羅が引っかかって、そのまま溺れてしまったようだ。
河童の川流れという言葉があるように、水生生物でも肺呼吸で生きている個体には、こんな稀有な死に方もあるのだろう……。
私だって、転生生活長いけど、1日フルで生きられないことが未だにあるからね!
それで、とりあえず人型へ【変身】して、【サルト】へ来て、ヌメっちの前で修行をしているわけだ。
「……にしても、卵。もうちっと、可愛らしい姿にはなれへんの?」
「ん?可愛らしい姿って?」
「いや……、せめてもうちょっと女の子らしくやなぁ……」
私は、自分の姿を確認する。
緑色の皮膚、大きめの甲羅、二足歩行が出来る様に変化した足。
うん、足から火を放ちながら回転して飛びそうなフォルムだね!
「ん~……。【変身】でどんな姿にでもなれるようになったんだけど、どんな姿にもなれるからこそ、コレ!って感じの姿がないのよねぇ……」
「そんなら、あのボン・キュ・ボン!のねーちゃんの姿はどないや!あっ……、別にワシが好きなわけちゃうで!」
私の白い目に気が付いたのか、慌てて訂正を入れるヌメっち。
長い付き合いでようやく気が付いたのだが、ヌメっちは意外とスケベなのだ……。
ふと、私が油断した姿を見せると、胸や太ももなどに視線を感じることがある。
まぁ、私も男性に転生したことがあるし、男性の無意識な生理現象なのだろうけど、素直に自分がスケベだと認めないところが気に入らない……。
こう、いかにもムッツリ気質なところは、何とかならないのかねぇ……。
「ん?ワシの顔になんかついとるんか?」
「んにゃ~、スケベな友人を持つと苦労するな~って……」
「ああああ、アホ!スケベちゃうわ!!!」
汗をかきながら、慌てて私に突っ込みを入れるヌメっち。
これ以上は、水掛け論になりそうなので、敢えて黙る。
それにしても、コレ!って感じの姿かぁ……。
「ふむ、【変身】で統一する仮の姿を考えておいたほうが楽かもしれないわねぇ……。幸いにも、今回の転生先の亀さん、長寿の種族みたいだし……」
「おっ!それは、いいアイデアやなぁ!いちいち、卵って確認したり、毎回へんてこな生物を卵と認識するの、意外としんどいし……」
あ、それもそうか。
……というか、今更気が付いたのだけど、ヌメっちは毎回違う姿の私を、いつも変わらず同じように接してくれていた。
だけど、たま~に余所余所しかった時があったのは、統一感のない見た目が原因だったかもしれないわね。
まぁ、私は慣れちゃっているけど、人だったり、鳥だったり、亀だったりと、毎回違う姿なのは、所見時戸惑うのが当然かぁ~。
そういえば、別荘建てるときの工事の責任者さんも、私が見に来るたびに驚いてたもんなぁ……。
「ふむ、これは真面目に考えたほうがよさそうね。……とりあえず、人型なのは当然として、他の部分はどうしましょう?」
「髪の色や長さとか、スタイルとか年齢とかやな?卵が動きやすいほうがええんちゃう?年齢に関しては、年くったほうが力が出るとか、そういう制限とかないんか?」
「あ~、この【変身】万能だから、そういう年齢でどうのこうのってのはないわ。老婆でも幼女でも、同じ筋力にすることも可能よ」
「だったら、相手を油断させるためにも幼女のほうがええかもな。庭鳥も言ってたけど、あの姿やと結構有利な面あるらしいで!」
「ふむ……」
確かに、幼女の姿は色々と特典がある。
公共料金も安いし、どんな相手でも確実に油断する。
ただ、大人に舐められるって欠点もあるけど、それは相手が私に油断している証拠でしか無い。
うん、私としてもおばあちゃんよりかは、幼女のほうが見た目的にもいいしね!
そうしよう!
「んじゃ、幼女ベースで考えていこうか。髪の毛は、あまり長くないほうが良いかな?戦闘の時に邪魔になりそうだし。同じ理由で、胸もぺったんこにしよう!」
「……えぇぇ」
隣から心底残念そうな声が聞こえたが、無視させてもらった。
両胸に5kgのハンデ付けて、あの化け物と戦えるかっての!
「髪の色は、なんでもいいけど……。青色にしようかな?好きな色だし……」
「ふむふむ、髪は短めで、青色の幼女っと……。なんか、これ庭鳥そっくりやな……」
「あー、言われてみれば、そうかも……」
私は、なんだかんだあの人にとっても感謝している。
色々と助けてもらったり、本当にお世話になっているからだ。
なんで、私を助けてくれるかは未だに分からないけれど……私は彼女に憧れている。
前にも思ったけど、あの人のようになりたいと心の底から魂生の目標にしているのだ。
だから、無意識にあの人の姿に似た感じになってしまったのだろう。
「まぁ、とりあえず、なってみようかしらね。あまり庭鳥さんに似ない様に……【変身】!」
グニュグニュっと姿が変わって、庭鳥さんに少し似た幼女の姿になった。
目つきやスタイルなど、細かいところを微妙に変えて、少々アレンジしたような感じだ。
「おっ!ええやないか!ってか、思ったより庭鳥っぽくないな~」
「意図的にちょっと変えてみたからね!……うん、これなら、庭鳥さんにパクリだった言われないかな!よし!!」
私は、【自己強化再生】を掛けて、足に力を込めた。
「よ~い……ドン!っと!!」
新しい肉体の使いやすさを見るために、取りあえず軽くマラソンしてみることにした!
私は、思いっきり大地を蹴ると、全力疾走で駆け出したのだった。
「……気ぃつけてな~」
あっという間に見えなくなった卵を、いつものように見送るヌメール。
彼と彼女は、長い付き合いだ。
彼は、彼女の突然の行動や、突発な発想にすっかり慣れてしまっていた。
3時間後……。
「うん、悪くないわね!」
そう言って、【サルト】を一周して戻ってきた私の背中には、一匹の蛙がいた。
「おそかっ……って、誰や!?」
「ああ、さっき食べられそうになってたから、ついヌメっちを思い出して助けちゃったのよ」
「はっ、初めまして!わた、私は!ぬぬヌメール様の大ファンでありまして!!!」
私の背中から飛び降りた蛙が、私とヌメっちに自己紹介を始めた。
何やら興奮しているようだけど、どうやらこの蛙、ヌメっちのファンらしい。
「会話蛙の大出世頭!私達にとって、ヌメール様は、憧れの存在であります!!」
「……なんか、面倒なやつ、連れ帰ったの~、卵」
「てへ!……えっと、君の名は?」
「あ、私、名前はまだ無いであります!!ただの会話蛙でありまして、はい!!」
うん、あの当時のヌメっちを思い出して、ほっこりした。
そういえば、ヌメっちの名前も私が考えたんだっけね~。
「じゃ~、私が命名してあげよう!よし、【ファン】ちゃんなんてどうだろう?」
私が考えた名前に、ファンちゃんはキラキラした目で喜んで、ヌメっちは呆れたようにため息を吐いた。
「あああ、ありがとうございます!、私、とっても嬉しいであります!!!」
「……お前、名付けのセンス無いわ」
ヌメっちの言葉を無視して、私と【ファン】は、手を取って命名を喜んだのだった。




