庭鳥さん、ごめんなさい!
深い眠りから覚める様に起き上がると、色々な人と目があった。
皆泣いていたようだが、今は驚いてこちらを向いて、固まっていた。
「あぁ~……」
すごく気まずくなって頬をかく。
私は、何回かこういった目覚め方をしているので、経験で分かった。
……これ、看取られた直後の転生だ。
この転生は、非常に居心地が悪い。
なんせ、死んだと思った人間が奇跡的に生き返ったわけだ。
しかも、ものすごく元気な状態でである。
なので、大体の家族は大喜びする。
しかし、生き返ったわけではなく、実際は、私が転生でやってきただけなのだ。
ギフトでも、生き返ってくれて嬉しいと喜んでくれるのはいいのだけど、故人を想うと非常に居た堪れない気持ちになる。
他人が故人の遺体に潜り込んで、それを生き返ったと勘違いした家族にも、申し訳ない気持ちになるしね……。
だから、大抵の場合、私はすぐにその場から逃げ出して、24時間過ぎる直前くらいに遺体を返しに来るのだが……今回は少し勝手が違った。
というのも、私を見て驚いている人たちの中に、あの庭鳥さんが居たのだ。
庭鳥さんは、無言のまま、私の前まで来ると、ひきつった笑顔を浮かべてこう言った。
「……とっとと、【歩み】を視て、その肉体から去れでしゅ!」
庭鳥さんにしては珍しく、こめかみに血管を浮き上がらせるくらい怒っていた。
「あっ、……はい。分かりました」
有無を言わさない勢いの庭鳥さんにビビリ、大慌てで【歩み】を確認する。
ふむ、こりゃ、怒るのも無理ないわ……。
この人、庭鳥さんの腹違いのお兄さんだった。
「あの、姉さん。お兄ちゃんは、どうなったの?」
「まりもちゃん、兄さんは天寿を全うして死んだんでしゅよ。ここにいるのは、ただのギフト。兄さんじゃないでしゅ……」
庭鳥さんに声を掛けたのは、アダモゼウスそっくりの女の人だった。
とは言え、本人ではなく、非常によく似ている他人だという事が分かる。
アダモゼウスとは、容姿こそ似てはいるが、雰囲気も性格も口調も全然違っているからだ。
この転生先の【歩み】を視たから、色々と庭鳥さんの周辺のことが分かってしまったけど、この人やっぱりとんでもない人だったな……。
「さて、ギフトしゃん。準備はいいでしゅか?」
「……いつでもどうぞ、そしてすみませんでした」
「……………………その【歩み】、大切にするでしゅよ」
庭鳥さんは、そう言って、私の額をゆっくり突いたのだった。
その途端に急に眠くなり、意識が急激に沈んでいく。
そして、私は2度目の庭鳥さんによる強制転生を食らってしまったのだった。
アダモゼウスが回収に来るまで、残り92年。




