ボン キュ ボン !!
「ふふ~ん、どうよ!ヌメっち!!!」
私は今回も【サルト】へ遊びに来ていた。
今回転生した生物は、車に轢かれた子犬だった。
いつもの通り、【自己強化再生】で体を復元したのだけど、せっかく若い生物に転生できたので、【変身】の魔法を試させてもらったのだ。
一応、四檻の時にも試してはいたのだけど、あれは魔女という特別な体だったからね。
普通の生き物でも大丈夫なのかを確認する意味で、ワンちゃんには悪いけど、実験させてもらったのだ。
結果は、ご覧の通り。
身長160cm、黒髪ストレート、超絶美形、ダイナマイトボディの美女へ【変身】することが出来た。
基礎体力や筋力も、そこらの格闘家では敵わないくらいの設定にしておいた。
いやまぁ、本当にこの魔法……反則だわ。
人が苦労に苦労を重ねて鍛えて得る筋肉を、一瞬で造ることが出来るし、整形や美容やマッサージなどで得る美も、一瞬で造れるもの。
これを木草樹が一瞬でやっていたんだなぁと考えると、やっぱりあの植物は、規格外の生命体なんだなと改めて認識させられた。
そして、この姿を見せびらかしに【ヌメっち】の元までやってきたのだった。
……それにしても、胸が重い。
両胸の重さは、5kgくらいあるだろうか?
男性が性的に興奮するらしい体付きを再現してみたのだけど、これは思ったよりも女性側は苦労してそうだ。
胸も尻も大きくて、左右に振られる。
ぶっちゃけ、戦闘向きの体付きではない。
それにしても、随分とヌメっちが静かだ。
「どうしたの?ヌメっち?」
私は、座ったまま私をじっと凝視し続けているヌメっちを覗き込んだ。
「……いや、その……なんや……。えっと……そのやなぁ……」
私がのぞき込むと、慌てて視線を逸らして、しどろもどろになる。
なんなの、この両生類?
「ん?どうしたの?私の顔に何かついてる?」
「いや、顔にはついとらんのやけど……。いや、つきすぎとるっちゅーか」
その言葉に私は、ピーンと来た。
よくよく見てみれば、顔を赤くしてキョロキョロと、落ち着きなく周りを見渡している。
ただ、その視線は時折、私の胸をチラチラと通過していた。
私は、嫌な笑みを浮かべると、ヌメっちをからかう為に口を開いた。
「おんやぁ~?な・に・や・ら・おっぱいに視線を感じますなぁ~?」
「なっ!?」
「ぬっふっふ、ヌメっちも男の子じゃのう!ほれほれ、好きなだけ凝視してもええのじゃよ?」
「あああああ、あほかっ!!だ、だ、誰が、そんんな、脂肪の塊み見るかい!!たっ、ただ、寒そうやなっって!!!」
「ああ、そっか……」
頷いて、私は自分の姿を確認した。
私は、今、紐のような水着を着ている状態だ。
なんせ、子犬からの【変身】だったので、服を用意できなかったのだ。
だから、【サルト】の植物で、簡単な水着を作って着ているのだけど……。
「まぁ、寒くは無いわね。元々、ヌメっちの管理している【サルト】のこの地域は、気温が安定してるしね。むしろ、熱帯的で少し暑いくらいよ?」
「そそそそうか、そんなら良かったわ……」
「?」
ふむ、やはり胸への視線が隠しきれていない。
寒そうってのも、本心だと思うんだけど、やはりそれ以外の理由でも私の胸を見てるなぁ……。
まぁ、いいか。
ヌメっちも男性だし、たまには眼福をさせてやろうじゃないか。
そして、黙ってあげる私。
うん、私ってばすっごく優しい!
「あっ、そうそう。ヌメっち!私の新技の技名を一緒に考えてほしいんだけど……」
「おっ!新技やと?面白そうやないか。どんな技や?」
「ん~、まぁ、魔法の剣みたいな感じかなぁ?とりあえず、見てみて!」
私は、右手に例の魂刀を出す。
……なんか、木草樹の方角から息を飲むような気配を感じたけど、無視させてもらおう。
「ほぅ……。これは、すごいやんか……。まるで、翼みたいやなぁ~」
「まぁ、ちょっとシャレにならない強さなんで、試し振りはしないけどね」
私は、魂刀を消すと、ヌメっちと技名を考えるために、ヌメっちの方へ向き直った。
……木草樹の方から、胸を撫で下ろす気配を感じたけど、以下略。
「う~ん、普通に青い翼でええんちゃう?それ以外に合いそうな名前無いわ~」
「青い翼、青翼?それだと、性欲とかぶって嫌だなぁ……」
「う~ん、【ウラヌス】の方の言い方に変えたらええんちゃう?【ブルーウイングス】とか」
おっ!ヌメっちにしては、良いセンスだと思った。
「【ブルーウイングス】……、うん、いいじゃない!でも、片翼だからスは、いらないわよね。よし!【ブルーウイング】にしよう!!」
魂刀【名称:ブルーウイング】に決定!
「いや~、助かったよ、ヌメっち!お礼におっぱい触る?」
「え?ホンマに……?」
「……いや、嘘だけど。ごめん、そんなに食いつくとは思わなかった……」
「はっ、はぁ~!!しっしっ知ってたわい!!!ワシも、冗談で返したんや!!」
なんか、ヌメっちの様子が今日はおかしいなぁ……。
私を見る目がなんか、いつもと違うっていうか?
私がそんなことを考えた時、妙な音が聞こえた。
ゲコッ!
「え?」
私がヌメっちを見ると、ヌメっちは慌てて頬を抑えていた。
でも、止まらないようで、頬を膨らませてゲコゲコと音を鳴らし続けていた。
「あははー!ヌメっち、なにそれ、おもしろ~い!!」
「あっ、あほー!こっち、見んなや!!!」
ゲコゲコと音を鳴らし続けているヌメっちを、笑いながら見る私。
こんな時間がずっと続けばいいのになぁ~って思った。
……ちなみに、私は蛙へ転生して【歩み】を視たことがある。
だから、その鳴き声の意味が『求愛行動』だと気が付いた時、真っ赤になって思い切りヌメっちを殴り飛ばしていたのだった。
アダモゼウスが回収に来るまで、残り95年。
<今回の転生で考えたこと>
・魂刀【名称:ブルーウイング】に決定!
ちなみに、昔ヌメっちが「ワシ、ケロケロと鳴かんよ」と言ったのは、『会話蛙は、全ての生物と会話できるので、普通の蛙みたく常時鳴いていないよ』という意味で言いました。
但し、唯一【求愛行動】でのみ、雌へプロポーズする時だけ、どんな蛙でもゲコゲコと鳴きます。
この行動は、知識のある蛙にとって、非常に恥ずかしい行為でもありますが、生理現象なので止められません。
人間に例えると、興奮状態の男性器を服の上から指摘されるようなものです。




