進化の果て
生物は進化の果てには何になるのだろうか?
……答えは、何にもならないだ。
木草樹は、自身でこの世界を創り、様々な生物の進化を見てきた。
ある者は、空を飛ぶ翼を手に入れた。
ある者は、速く泳ぐヒレを手に入れた。
ある者は、地中を掘る爪を手に入れた。
生物は、様々な環境に適応しようと最適な体へと進化をする。
そして、不必要な部分は、退化するのだ……。
なんだ!退化とは!!!
木草樹には、信じられない出来事だった。
今まで順調に使用できていた部分を、使用しなくなっていったら、衰えて使い物にならなくなった。
一部が伸びて、一部が縮む。
なんという無様で愚かな事であろうか?
生物は、ひたすら進化し続けることが出来ない。
頭脳が発達すれば、道具に頼りだし、脳以外を衰えさせる始末。
空を飛べるようになれば、地を器用に歩くこともままならなくなった。
数値化した特性やステータスを、平らにならすと全生物がほぼ同じとなる。
つまりは、そういう事だった。
生物の力を10とするのならば、それを割り振った力以上は、出せないのだ。
極端な話、空を飛ぶのに6も使えば、歩くのに4しか使えない。
進化と同時に、生物は退化するのだ。
その結論に達した木草樹は考えた。
なんとか、私の力で進化し続ける事は出来ないだろうか?
そうだ!進化しなくても、退化さえしなければいい……。
退化をさせずに現状維持のまま、伸ばせる部分のみを伸ばせれば……。
木草樹は、そうやって何万もの木の実を作り出し、中で実験を繰り返した。
木の実の中で様々な生物の肉体を作り出し、コツコツと進化を繰り返して、退化しそうな部分は、現状維持するように努めた。
いくつかは、失敗してしまったが、それなりの数を成功させることが出来た。
そんな時に、発見したのが卵と呼ばれていた不思議な存在だった。
会うたびに肉体を変化させていて、興味が尽きなかった。
そして、その理由が魂のみで転生を繰り返しているということに至った時、私は決めたのだ。
もし、この魂を捕らえることが出来たら、私が実験を繰り返して創り出した最高の肉体へと吹き入れようと!
転生を繰り返して鍛えられたこの魂を、進化を繰り返して創り上げた最高の肉体と合わせれば、完全で完璧な生物が完成する。
「フフフ、私の最高傑作だ」
木草樹の自慢げな声にイラつく。
青卵は、ハーピィに似た姿をしていた。
残念ながら、青卵の時の記憶は、木草樹に操られていたため私には無い。
死ぬ間際の【木縁樹草風華】が解けた時の記憶が僅かにあるだけだ。
だから、この戦いがどうやって解決したのかをまったく知らない。
「やれやれ、厄介だわね……」
私は、そう呟いて上空を見上げる。
バッサバッサバッサ!!!
上空では、青卵が翼を翻して、私の上を飛び回っていた。
青卵は、スピード特化の戦闘スタイルと言っていいだろう。
先ほどの攻防を思い出す。
私の攻撃を全て受け流して、受け流し切れないと感じたら、空へ逃げる。
「なかなか良い戦闘スタイルだわね……」
そして、本当に厄介だった。
【木縁樹草風華】を使用した状態でも、【自己強化再生】を使用した私のほうがステータスでは、まだまだ上だろう。
しかし、こうも飛び回られると攻撃が出来ない。
【転移】、【空中浮遊】、【飛翔】などの魔法で空を飛んだり、空へ移動する方法も考えたが、青卵と違って空中で自由がそんなに利かないため、捕らえるのは至難の業だろう。
「まぁ、無茶すればいいか……」
私は、【魂糸】を出せる数だけ出し、空へ向かって伸ばしていく。
至難の業というのは、非常に難しいという意味であって、不可能という意味ではない。
そもそも、MPを節約して殺せる相手でも無さそうだ。
私は、空中に展開させた【魂糸】のところへ【転移】した。
「!?」
突然、目の前に現れた私に、青卵は驚いた表情を見せたが、急いで空中で方向転換を開始する。
「甘いねぇ……」
【転移】【転移】【転移】【転移】【転移】の連続使用。
それによって、確実に青卵を追い詰めていく。
何度目かの【転移】の時に、青卵の動きが一瞬止まった。
そこを、私は見逃さない。
「終わりよ!」
【放腐土帰】を、青卵に打ち込んで、土に還してハッピーエンド!
……しかし、現実はそう上手くいかなかった。
「【自己強化再生】!!!」
「なっ!?」
ニヤリと笑った青卵の姿が一瞬にして消えて、私のお腹に2発、拳が入った。
「がはっ!」
お腹の空気が押し出され、口から一気に抜けていく。
殴られた衝撃のまま、地面に叩き付けられた。
「ぐぐっ……」
自分の肉体の傷は、すぐに【自己強化再生】で治る。
「くそ、罠だったか……。誘われていた……」
完全に頭から抜け落ちていた。
青卵も私なんだ……。
当然、【重罪心疲】が使えるように、【自己強化再生】も使えるに決まっていた。
だとすると、アレか?
ただでさえ、化け物みたいなステータスが、【木縁樹草風華】で10倍、【自己強化再生】で更に10倍で、合計は100倍ってことかよ……。
ズン!
よろよろと立ち上がった私の前に、青卵が私を見下すような笑顔で下りてきた。
すぐに、【放腐土帰】の構えを取るが、あまりのスピードに反応できずに攻撃を食らってしまった。
「ぐぅっ!!」
「あははははは!!!!」
青卵が笑いながら、私に拳を振り下ろしてくるが、速すぎて3割ほどしかガード出来ない。
不味い……、体が徐々に重くなっていく。
これは、疲労によるもの。
つまりは、【重罪心疲】の効果だ……。
「くっそー!敵に回すとこうも厄介な能力拳法だったとは!!」
一撃死が無いだけマシとも言えるが、青卵の攻撃は着実に私の動きを鈍くしていく。
これ以上、食らって動きに差をつけられたら勝ち目が無くなる。
私は、【放腐土帰】の構えを止めた。
間合いを取らんことには、始まらない!
「はぁ!!!」
私が気合と共に、両手を前に押し出す。
それを、青卵は後ろに下がって余裕でかわした。
しかし……。
「ぎゃああ!!」
青卵が叫び声を上げながら、後方に吹っ飛ばされた。
慌てて飛翔する青卵のお腹には、赤黒く内出血した手の平の後が出来上がっていた。
それも、すぐに【自己強化再生】で治ってしまったけど……。
「くぅ……、拳は私に届いていなかったはず……」
青卵がこちらを警戒しながら、睨み続けていた。
「さぁ、反撃の開始よ!」
私は、最強の能力拳法と言われている【勝底密御】の構えを取った。




