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一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
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魂生~苦ありゃ~苦しかない~♪

今回、ちょっと重い話かもしれません。

 カマキリ→老婆→プラナリア→蚊と転生を繰り返した私です。

 さて、5回目の転生は何じゃらほい。

 

 パチリと目を開けると、そこは雪山だった。

 背中に重たいリュックを背負い、冷たく分厚い雪が積もる丘に横たわっている。

 あー、これ歩み見なくても死因が分かる。

 きっと、凍死でしょ。

 天候は最悪で、猛吹雪が私の体に容赦なく降り注ぐ。

 ふむ、転生の仕組みがまた少し分かった。

 私が転生してきた時点で、HP0からHP半分くらいに戻るような気がする。

 カマキリの時や今の状態を見てみると、手足の感覚が無かったり、空腹や疲労具合が全快とは程遠い。

 だけど、すぐに死に至るまで消耗してはいない。

 故に、若干ではあるけど回復して転生できているようだ。

 あと、蚊の時を考えると、状態異常も回復できるみたい。

 毒死後なのに、毒の異常状態を感じなかったからね。

 つまり、このわずかに回復した体力で、死の危機的状況を打破していかなくてはならないと……。

 ふぅ~っと、思いっきり溜息を吐いた。

 吐いた真っ白い息が、猛吹雪によってあっという間に流されていく。

 早いとこなんとかできる知識を手に入れないと、転生を無駄に繰り返すだけになってしまいそうだな。

 蚊の時や今回なんて、現状で死を回避できる手段がない。

 つまり、漠然と死を待つだけの状態である。

 死んだばかりの状態に転生するということは、死んだ原因や現象がほぼ続いていると考えていいだろう。

 今回のように、雪山で遭難して凍死した体に転生すれば、雪山で凍死寸前の状態からのスタートとなる。

 こんなのもう一度凍死しろといっているようなものだ。

 なんとか危機を打破できるだけの力を手に入れることが、当面の目標に固まった。

 だって、プラナリアで平和な日常を知ってしまったから。

 あんな最高の日常を、これからも過ごしたいじゃない!

 美味しいものを食べて、のほほんと生きて、死んだように眠る。

 痛みや苦しみによる死での強制転生なんてごめんだ!

 とはいえ、現在の体から体温がどんどん失われていくのが分かる。

 逃れられぬ死の恐怖と雪の寒さに、歯がガチガチ震える。

 何度やっても死には慣れない。

 全てを失っていくあの感覚が怖い。

 「嫌だょぉ……怖いょぉ……」

 喉から掠れるように声が出た。

 残念ながらかわいい女性の声ではなく、ごつそうなおっさんの声だった。

 ……防寒具で見えなかったけど、今回の転生体は登山家のおっさんみたいだ。

 死ぬ前に、歩みを視ておくか……。

 私は、頭に意識を集中させた。

 

 ・幼少の頃から、父親について山登りにいったこと。

 ・そのことをきっかけに、山が大好きになったこと。

 ・山から眺める景色が好きで、それを収めるカメラにも興味を持ったこと。

 ・山岳カメラマンの道を志したこと。

 ・大学生の時に、一人の女性と出会い恋をしたこと。

 ・その女性と結婚して、子供を授かったこと。

 ・自国【ファミニ】の魔女からの依頼で、未知の国【サルト】を調査するチームに加わることになったこと。

 ・【サルト】に住む化け物に、調査チームを壊滅させられたこと。

 ・命からがら逃げてきたが、ここで力尽きたこと。

 ・週末に娘と遊園地へ行く約束をしていたが、果たせずに無念を感じて死んでしまったこと。


 自然と、涙が溢れてきた。

 ああ、この人は、娘との約束を果たせなかったことに、こんなに深い無念を感じている。

 馬鹿だね。

 家族を守るためなら、危険な仕事なんて辞めてしまえよ……なんて言えない。

 私は、この人の歩みを視てきたから。

 どんな思いでこの仕事に就いて、どんな気持ちで人生を全うしたのかを知っているから。

 だから、言えない。

 人の人生に口を挟めるほど、人生というものは、軽くない。

 ただ、娘への後悔はすごいな……。

 私が代わりに遊園地に連れて行ってあげたいくらいだ。

 ……ん?

 なんか、見えたぞ……。

 私の在り方が。

 そうだ、のほほんと暮らすのもいいけど、この肉体の持ち主が後悔していたことをやってあげるって生き方もいいんじゃないかな?

 余計なことかもしれないけど、それはそれで有りな気がする。

 そうと決めたら、知識の吸収をして一刻も早く、危機回避出来る力を手に入れないと!

 よし、前回の蚊の歩みも確認しておこう。

 

 ・水辺で生まれ、ボウフラになる。

 ・成長して、蚊になる。

 ・ふらふらと漂って、人間の部屋に迷い込む。


 ……ふむ、生物としての記憶はお粗末だけど、知識がヤバイ。

 吸血方法を覚えた。

 感染症を媒介する方法を覚えた。

 二酸化炭素による探知方法を覚えた。

 嗅覚の強化方法を覚えた。

 これに、登山家のおじさんの知識も加わる。

 山で役立つ知識を覚えた。

 【ファミニ】の言語、一般知識を覚えた。

 カメラの使い方を覚えた。

 性知識を覚えた。

 ……今度から、そーゆーシーンがありそうなところの歩みは早送りにしよう。

 でも、出来るのかな?

 なんか、順を追って視ていくって感じではなく、一気に脳に記憶されるって感じなのよね。

 ……ってか、子作りってすごい。

 あのシーンに熱くなっていた頭が、何故か急速に冷えていく。

 うとうとと、周りが暖かくなって眠気が一気に襲ってきた。

 目の前には、相変わらず吹雪が猛威を振るっているが、何の音も聞こえない。

 ああ、これが凍死か……。

 全身の感覚が、寒さにより徐々に無くなり、最終的に麻痺する。

 これは、嫌な死に方だなぁ……。

 瞼が重い。

 もう、耐えられない……。

  





 「ねぇねぇ!ママ!これ見て!かわいい?」

 「ん?可愛いわよ、明海ちゃん。どうして、そんなおしゃれな服持ってきたの?」

 「へへへ、今度のお休みの日に遊園地行くときに来ていくんだ!」

 「もう、この子ったら。遊園地までまだまだでしょ?」

 「でも、楽しみなんだもん!あーぁ、早くパパ帰ってこないかな?」



  <今回の転生先で得たもの>

 ・吸血方法(但し、かゆみを生じる)

 ・感染症の媒介

 ・感染症の耐性強化

 ・二酸化炭素の探知

 ・嗅覚の強化

 ・山で役立つ知識

 ・国【ファミニ】の言語と一般知識

 ・カメラの使い方

 ・性知識


転生先の募集を開始いたしました。

興味がある方は、下記への移動、又は活動報告の確認をお願いします。

http://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/1561956/

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