木草界最凶の犯罪者
パチリ
私が目を覚ますと、そこは真っ黒くボロボロになった道場跡だった。
「ふむ……」
体を見下ろすと、初老くらいの男性の体のようで、服もボロボロになっている。
「……能力拳法【人世終界】かな?」
周りを見れば、私の目の前に男の骸が転がっていた。
私と同じようにボロボロの状態になっている。
一体、何があったのだろうか?
私は、目を瞑って【歩み】を確認する。
・【マールド】にて生を受ける。
・自分の中のドス黒い感情を抑えながら生活する。
・自分が異常な性癖と、強大な性欲を持っていることに気が付く。
・代々先祖から伝わる能力拳法【放腐土帰】を極め尽くす。
・気が付けば、誰よりも強くなっている自分に気が付く。
・付き合っていた彼女【ヒバリ・メルサック】が妊娠。結婚することになる。
・男の子が生まれる。
・妻の粘着質な嫉妬にうんざりして無理やり離婚する。(この当時、妻のお腹の中には子供がいたらしい)
・ある町で、【里野鳩】という女性と出会う。
・【里野鳩】と結婚する。
・双子の女の子を授かる。
・【巣作鳩】と、子供達【巣作燕】、【巣作雀】と幸せに暮らす。
・【ヒバリ・メルサック】の呪いを受けて、自分の中のドス黒い感情が抑えられなくなる。
・最愛の妻と娘を傷つけないように、彼女たちの元を去る。(この時、鳩のお腹の中には赤ん坊がいた)
・自分の中のドス黒い感情の正体が、【超越蟲:蜘蛛】であることが分かる。
・自分の感情のままに結婚詐欺、殺人、婦女暴行、強盗、破壊行為を繰り返す。
・死合制度のある町【巣作町】を拠点として、各所で暴れまわる。
・死合で勝利して、倉坂、御堂、華吹の女性を強姦し、孕ませる。
・拠点としていた華吹家の道場に、芭蕉家当主【芭蕉扇太郎】が死合を挑みにやってくる。
・道場ごと物事を終わらせる奥義【永遠終末】を食らう。
・死ぬ前に、【芭蕉扇太郎】を殺して、相打ちとなる。
この木草界には、もはや伝説となっている犯罪者がいた。
それは、圧倒的な強さを持っていたために、誰にも止められなかった超越者の一人だった。
当時、最強の魔女と言われていた【ZERO】の懐刀だった【芭蕉扇太郎】が、命を賭して、ようやく相打ちに持ち込めたほどの実力者。
私が一番先の未来に転生した時でさえ、敵うのは【リュンクス】だけと言われるほどの強者。
そいつの名前は、【巣作蜘蛛】。
この木草界において、死が明確に分かっている最強の人物である。
「……ようやくか。さぁ~て、行こうか」
私は、【歩み】を確認し終えると、【転送】で【サルト】へ向かった。
あの町で私に向かって、殺気を飛ばし続けていた数は、10や20ではない。
私をギフトだと、理解してもなお、恨みで殺しに来そうな勢いだった。
この姿の私には、重要な使命があるのだ。
例え、決して負けないにしても、それで少しもHPなどを削るわけにはいかない。
私が、【転送】で【サルト】の入口に出ると、見知った顔が出迎えてくれた。
「……遅かったな、卵。待ちくたびれたで」
一人は、私の親友であるヌメっちだ。
いつものおちゃらけた雰囲気など無く、いつにも増して真剣な表情をしていた。
「まぁ、妥当な選択でしゅね……。その男の顔には、胸糞悪いものしか感じましぇんけど、逆にそいつしか選択肢が無いとも言えましゅ……」
もう一人は、意外な人物だった。
「……庭鳥さん?わぁ~!!お久しぶりです!!!」
そう、そこにいたのは、私が困ったときに必ず手を差し伸べてくれている庭鳥さんだったのだ。
久々の再会にテンションが上がる私の頭を軽く小突かれた。
「そんな場合じゃないはずでしゅ……。さぁ、二人ともこれを食べて、まずは回復でしゅ!」
そう言って、私たちの前に差し出されたのは、黒い丸薬だった。
「私のとっておきでしゅ。食べれば、HPとMPを全回復できるチートアイテムでしゅよ。まぁ、貴重すぎてこの2つしか用意できなかったでしゅけど……」
ああ、もう!
本当に、庭鳥さん大好き!!
何も言わなくても、私が今一番欲しい物や言葉をくれる!!!
私にも、将来があるならば、こうなりたいと心に誓いながら、私とヌメっちは丸薬を飲み込んだのだった。
死合制度ってなんぞや?って方への説明。
http://ncode.syosetu.com/n9532ds/1/




