表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
76/253

守るべきもの

 私は考え方をシフトして、なんとかヌメっちを逃がす方法を考えていた。

 はっきり言って、万が一にも勝ち目がない相手に進化してしまっている。

 レールが途中で切れているジェットコースターに乗り込む人がいないように、絶対に死ぬと分かっていて戦いを挑むほど、私は馬鹿ではない。

「ヌメっち、逃げるよ」

「させんよ?」

 私がヌメっちに話しかけると同時に、地面が黒くくすんでいく。

「くっ!?霊界移動を封じられた!!!」

 木草樹の中を通る【転送】が、使用不可になった。

 この樹木、とことん熊側の味方をするようだ。

「ひどくない?……ヌメっちも【サルト】の戦士だよ?そっちばかりに肩入れするのは、あまりに不平等じゃないかな?」

「くっくっく、卵よ。そのためのお前ではないのか?お前がその蛙に付いているからこそ、私は熊に力を貸しているだけだよ」

 くっそ、なんつー理論だよ。

 少年サッカーの助っ人が、ただの大人と現役プロくらいの違いがあるってーの!

「……仕方ないかぁ」

 もう、二人で逃げるのは無理。

 ならば、答えは決まっていた。

「ここは私に任せて、ヌメっちは逃げて!」

 恐らく、これ以上に良い選択は無いだろう。

 私は、ここで命を落としても転生出来るけど、ヌメっちは、そうもいかない。

「アホか!なんで、逃げなきゃあかんねん!あの熊をまたやっつければ、万事解決やん!!」

 ああ、この馬鹿は相手の強さがまだ量れる域に達していないらしい。

 まぁ、見た目は汚いゴミの山みたいだし、気持ちは分からなくはないけど、見た目で判断するようじゃ、この先とても生きてなんかいけないぞぉ!

「……本当に馬鹿ね。いいから、私の言うことを聞きなさい」

「うっさいわ!親友置いて行けるか……いっ!?」

 ごちゃごちゃうるさいヌメっちに、【重罪心疲じゅうざいしんぷ】の奥義【覚醒停体かくせいていたい】を軽く食らわす。

 この威力ならば、10秒程度で動けるようになるようなものだ。

「 い い か ら 行 く の よ ! 」

 私は、一言ごと区切るように、ヌメっちの目を見てそう言った。

 真剣に目を見て言ったのだ。

 これで、分からないようならもう知らない。

 私は、ヌメっちに背中を向けて、熊の化け物と向き合う。

 後ろの方から、歯をギリリと噛みしめる音が聞こえた。

「……先に逃げさせてもらうで。卵も、はよ逃げるんやで?」

「当然、そのつもりよ!」

 10秒経過したのを確認するのと同時に、熊に向かって走り出す。

 後ろでは、ヌメっちが大ジャンプで現場を離脱する音が聞こえた。

 当然、熊は逃げていくヌメっちではなく、向かってくる私の方に狙いを定める。

 よし、これなら時間は十分に稼げるはず!

 今回の転生体は、【重罪心疲】の能力拳法の使い手だった。

 なので、【重罪心疲】の扱いについては、【赤羽観梨亜あかばねみりあ】の次に使いやすい肉体なのだ。

 私が極めた【重罪心疲】!

 この肉体ならば、どこまで通用するか試してみよう……。

 私は、【自己強化再生】を使用しつつ、【重罪心疲】の構えを取る。


 防戦だけに徹して12分持った……。

 いや、気合と努力で12分持たせたといったほうが正しいだろう。

 熊は、恐ろしく硬く、そして強かった。

 唯一の欠点とも言えるのが、速さだけだったのだけど、それでもヌメっち以上あるのだ。

 【転移】と【攻撃予想処理】を駆使して避け続けて、どうしても避けられない時は、【重罪心疲】で受け流した。

 それで、なんとか頑張れたのが12分だった。

 もう満身創痍なうえに、体中が融けていて、更に状態も猛毒のオマケ付き。

 はぁ……、とっとと転生して休もうっと。

 今回は、木草樹と知り合えるなんて言う重要な情報も分かったし、有能な転生時間だったわね。

 そう私が思って、肉体が死ぬ直前に嫌な感じがした。

 これは、猪に転生したときに、トラバサミにかかってしまった時と感覚が似ていた。

 そう、重要な何かを見逃してしまっているような感覚。

「フフフ、何処へ逃げようというのかな?卵よ……」

 木草樹の声が聞こえた。

 【アダモゼウス】とほぼ同格の強さを持つ者の声が……。

「はぁ?……わたし……い…ま…………死ぬとこ……なんですけど?」

 ギクリと心臓を鷲掴みにされたような気分だった。

 逃げる?

 一体、なんのことを言っているのか……?

 私は、必死で頭に浮かんできた考えを振り払う。

 そんなこと、あっていいはずがない!

 ……出来てほしくない。

「始めの方は、仕組みが分からずに何度も逃げられてしまっていたが、なるほど……【転生】とは盲点だった。まさか、私以外にそんなことを出来る人物がいるとは思わなかったからな」

 背筋に氷を突っ込まれたかのような感覚と絶望が私を襲う。

 自然と体が震えてきて、久しぶりに恐怖を体験していた。

「だが、仕組みが分かれば、捕まえるのは容易い。……逃がさんよ」

 一瞬のうちに木草樹の枝の一本が伸びてきて、それに生っている木の実が大きく口を開けて、私を飲み込んだ。

 私の肉体は消化され、魂だけが取り残される。

「さぁ、捕まえたぞ……」

 真っ暗な木の実の中で、私は誰にも転生できず、恐怖と孤独に震えていた。

「だっ、誰かぁ~!!助けてぇ~!!!」

 目から涙が溢れて、初めて魂も泣けるんだと知った。

 私は、完全に木草樹に捕まってしまったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ