ドッキリ
「ハハハ、えぇサプライズやったろ?卵のアホ面拝ませてもらったで~」
私にガクガクと揺さぶられながら、呑気に笑い続ける両生類。
このまま絞め殺したいという殺意が沸くような、素敵な笑顔だった。
「ん?お嬢さんの姿がまた変わっておるな。ふむ、今回は、能力拳法の使い手のようだ……」
あわわ、恐れ多い……。
正直な話、私は木草樹に対して、あまり良い感情を持ってはいない。
この星で最初の生命であり、この世界の理を創造した、木草界の象徴でもある木草樹。
木草樹は、この世界で最も【アダモゼウス】に近い位置にいる存在だ。
なんせ、草食生物と雑食生物を遠ざけて、肉食生物のみを自らの周りに存在させる生態系を作り、更に、その肉食生物の意識を支配して、自らを守らせるまでの事をしている。
全ての生命が築き上げてきた魂の歴史を吸収して、自らの糧とし、新しい生命に0になった魂を吹き込む行為も、自らを高めるための手段である。
そう、【アダモゼウス】が今私にやっている状況に近いのだ。
そんなわけで、私は木草樹にあまり良い感情を持っていないわけだが……。
「フッフッフ、今度も楽しませてくれそうではないか……。貴様は、本当に面白い存在だな、卵よ」
くっくぅ~……。
目の前の圧倒的な存在感と、神秘性に、自然と頭を垂れてしまうそうな感じになる。
この木をこの世界の国民が、崇拝している理由が分かる。
存在感。
いるだけで、神々しいのだ。
自らが発しているオーラを抑えていても、これだけの器だと認識させられている。
化け物度で言うなら、【アダモゼウス】とほぼ同等クラス。
参ったね、こりゃ……。
葉や花を回収するなんて、夢のまた夢だわ。
「ほら、はよ、支度せい、卵!向こうさんは、やる気やで……」
もうすでに疲れている私に、ヌメっちが声を掛けてきた。
ヌメっちの視線の先には、巨大な熊のような生物が立っていて、私たちを歯をむき出して威嚇していた。
「もう、何が何だか……」
お願いだから、説明をしてください!
私、何も知らないんです!
「とりあえず、あの東の守護獣をやっつければ、いいんや!何も考えることはあらへん!」
「あの~、いきなりそんなこと言われても納得出来ないっていうか……。せめて、説明を!」
ガアアアアアアアアア!!!!!
巨大な雄たけびを上げて、巨体を揺らしながら熊が私たちの前まで歩いてくる。
「……説明は、後や。とりあえず、あの熊と鳥を二人で倒せばええんや。簡単やろ?」
「……無茶を言ってくれるわねぇ~」
熊の頭の上には、鷲が乗っかっていた。
対比で小さく見えるけど、羽を広げれば、恐らく3m近くはある大きさであろう。
熊の身長?
……控えめに見ても、40mはあるんじゃないかしら?
当然、どちらも強者臭がプンプンする。
さっき、東の守護獣って言ってたわねぇ……。
最低でも、あの【エンシェントドラゴン】並みの強さはあると考えたほうがよさそうだ。
「ワシが、熊をやる!悪いけど、あの鳥は任せたで!」
擬態を解いたヌメっちが、人型に戻る。
おお、いっちょまえにもカッコよく育っちゃって!
「はぁ~……、しょうがないわねぇ~。任されましょうか!」
私は、なんだかんだ言っても、この状況に燃えていた。
木草樹の前で東の守護獣を、親友と二人でぶっ倒せるという、この状況に!
ガアアアアアアアア!!!!!
キェエエエエエエエ!!!!!
熊と鳥が声をあげながら、一気に迫ってきていた。
「【自己強化再生】!」
現時点での、最強戦闘スタイル!
【自己強化再生】を掛けた状態で、【重罪心疲】の構えを取った。
HP:77/77
MP:2317/2591
力:126(×10)
防:101(×10)
速:152(×10)
現時点での、私のステータスは非常に貧弱である。
【自己強化再生】では、【木縁樹草風華】と違って、【HP】と【MP】の値が10倍されない……。
でも、やってやるわ!
私の背中には、ヌメっちが同じように背中を預けて立っている。
これ以上に、頼もしいことは無かった。




