サプライズ
439年……。
私は、改めてヌメっちを見る。
「……蛙ねぇ~」
「いやいや!そりゃ、ワシ蛙やしね!」
「そういうこと言ってるんじゃないわよ……。なんなの、その見た目は!」
ヌメっちは、俗に言う【会話蛙】の時と同じ見た目だった。
あれ?私、進化させたよね?
失敗した?
「ああ、これは擬態や……。よわっちい姿見せとかんと、餌にありつけんしのぉ~。安心せい!あの時の進化は、しっかり成功しとるよ!」
「本当にぃ~?」
正直、信じられなかった。
だって、普通は擬態してても、強ければオーラのようなものが、溢れ出てしまうものだ。
私は、これでも強い方だという自信がある。
強い者同士が感じる強者特有のオーラというか、雰囲気のようなものがヌメっちから少しも感じない。
私は、疑いのまなざしのまま、ヌメっちに【魂糸】を刺して、【魂情報】を視てみる。
名前:ヌメール
種族:龍蝦蟇人
性別:♂
HP:1055/1299
MP:311/421
力:755
防:683
速:1159
……なんだよ、こいつ。
驚きを通り越して、呆れたわ!
まったく、恐ろしいほどの成長をしているわね。
速度1000超えなんて、初めてお目にかかるわ……。
というか、ヌメっち、このままいけば普通に【エンシェントドラゴン】越え出来るんじゃね?
あのトカゲ、1000歳超えても、ステータスで1000超えてるものなかったもんね。
(※ちなみにMPの値は、卵自身のMP数字です)
「さぁて、今回も挑戦しにいくで、卵!今日こそ、あのおっさんをぎゃふんと言わせたろうやないか!」
「……?何の話?」
何やら、やる気満々なヌメっちだけど、一体何の話かわからない。
話の流れから、私と何かに挑戦しに行くらしいのだけど……。
「あ~、そうか。この卵が始めての挑戦の時の卵なんやね……。まぁ、百聞は一見にしかずって言うし、いいから来いやぁ!」
言うが早いか、ヌメっちは、私をパクンと口の中に閉じ込めると、足腰に力を込めた。
「ちいぃ~っと揺れるけど、すぐ着くから我慢せぇや!」
びよ~ぉおおおおおん!!!!!!
「あわわわわわわ!!!!!」
【千里眼】で視ているから、外の様子は分かるけど、そのスピードに目が回りそうになった。
これが、速度1159!?
一瞬にして、木草樹の近くまでジャンプで飛んできたのだった。
「ほれ、着いたでー!」
ゲロンッ!
……勘弁してくれ。
体中、蛙の唾液まみれである。
何?何なの?何かのプレイなの?
私は泣きそうな顔で、周りを見回して……凍りつく。
「ふむ、また来たか……。懲りないやつらだな……」
そう言って、彼は私たちを見下ろしていた。
いや、正確な性別なんて知らない。
だって、ずっと見えていたけど、会話をしたのは初めてだったからだ……。
口が無いのに、どうやって話しているんだろう?
そんな馬鹿な感想すら出てくる。
私の目の前には、巨大で森厳で幻想的な樹木と、それに従う強大な蟲達。
「まぁ、そう言う事やから!気ぃ引き締めて気張れよぉ!」
私に向かって、暢気な笑顔を向ける両生類。
殴りたい……。
「……ちょっとぉ!!まさか、こんなレベルにまで話が発展しているだなんて聞いてないんですけどぉ!!」
私は、このあまりに異常な光景を前に、ヌメっちにそう掴み掛かった。
本当、殴るのを我慢した私を褒めてあげたい。
そう、思えるほど私は動揺していたのだ。
だって、そうでしょう?
この世界そのものと言える存在が、私たちに話しかけていたのだから……。
【 木 草 樹 】
この世界のご神木であり、この星そのものである存在と、私はいつの間にか顔見知りになっていたようだ。




