導く者
別荘計画を依頼してから、数年が過ぎた。
その数年のうちに、何回か工事現場を訪れる機会があったので向かったのだが、人語を理解する獣に連中は本気でビビっていた。
おかげ少しの滞りもなく、無事に【ウラヌス】に別荘を手に入れることが出来た。
……まぁ、なんで既に手に入れた体ではなしているのかというと、もうすでに別荘が完成済みの時代へ何度も転生しているからだ。
そうしたら、まぁ~会う事会う事!
……誰にって?
もちろん私にだよ!!!
何やら、ピンチに陥って瀕死の私から、MP残り二桁のボロボロ状態の私まで。
入れ食い状態の魚か!と思うほどに、あの別荘に集まってくるのだ。
まぁ、確かに安心して休める場所だし、あそこでMP回復アイテムを作成するんだし、集まる理由は沢山ある。
ただ、なんというか……こう私自身に会い過ぎると、なんか違和感というか、落ち着かないというか、非常に微妙な気持ちになるのだ。
あれだ、たまに会うにはいい距離感の親戚だけど、毎日のように顔を合わせるにはうざったいみたいな。
まぁ、何はともあれ、無事に別荘が完成したので、良しという事にしよう。
そして、今回は久しぶりに【ウラヌス】出身の人に転生できたのであった。
起きて鏡を見てみると、しわくちゃのおばあちゃんだった。
「ふむ……、老衰かしらね?とりあえず、【歩み】を確認してみましょうか?」
・【ウラヌス】にて、生を受ける。
・大魔法使い【ダルスティン・ローズ】に憧れて、自らも魔法使いの勉強をする。
・世間でそこそこ認められる魔法使いにこそなったけど、そこが己の限界だと思い知る。
・限界を超えるために、寿命を延ばす方法や、MP最大値を増やすアイテムなどの研究に没頭するようになる。
・余生を魔法の研究やアイテムの作成で過ごす。
・結局、色々間に合わず、様々な研究の途中で寿命を迎える。
「……顔から火が出るほど恥ずかしい」
聞きました、奥さん!!
大魔法使い【ダルスティン・ローズ】に憧れてですって!!!
そうなのだ、私が口から出まかせで言った大魔法使い【ダルスティン・ローズ】は、今や【ウラヌス】で知らない者はいないほどの超有名人となっているのだ。
というか、もう伝説のレベル。(※こっちの世界でいう、信長クラス)
実際に、彼女が建てた家がある上に、そこへ出入りする彼女の使い魔が高レベルの魔法使い。
しかも、マジックアイテムや新魔法なんかを開発し続けているときたものだ。
つまり、伝説は今も築き続けられている状態である。
一部では、神格化されて、信者すらできていると言われている。
「恥ずかしい~!!!」
このばーさんが、どれほど憧れを抱いていたか分かるからこそ、余計に恥ずかしい。
私は、そこまで崇拝されるような魂ではないのだ。
……それにしても、この体は、案外悪くない。
腰は痛いし、ゆっくりとしか動けないけど、魔法の扱いやすさが他の転生体の時と桁違いである。
木草樹に様をつい付けてしまうこともあったけど、肉体に染み付いたクセというものは、案外無視できないものだ。
このばーさんも、死ぬまで魔法使いをやってきたのだ。
だからこそ、魔法を使うことに肉体自体が慣れているのだろう。
「ふむ、今回の転生体からは、学ぶことが多いかもしれないねぇ~……」
私は、MPをなるべく少ない消費で使う方法を研究中である。
これは、どんどん効率を考えれば、減らし続けられる問題だと思っている。
あれだね、もし肉体をこのばーさんのように改造できれば、今後の転生先でも魔法を使いやすい状態になるのかもしれないな……。
肉体改造なんて、どうやるのか見当もつかないけど……。
いや、もしかしたら出来るんじゃないのかな?
だって、確か初めて未来の私に会った時には、未来の私は出来ていたし…………あれ?
何かが心に引っかかる。
未来の私?
……あれれ?
そういえば、私って未だに過去の私に会ってないな……?
私が、一番若い未来の私に会った時って、その私って何歳だったっけ?
「…………あっ!?」
やっ、やばい!!すっかり、忘れていた!!!
私は、急いで外に出る支度をすると、ばーさんの家を飛び出した。
そうだ、そうだった!
迎えに行かなくちゃいけないじゃない!
私は、大慌てで【ウラヌス】の送港を目指したのだった。
私のこの転生体の顔は、初めて【ウラヌス】に来た私に色々教えてくれたばーさんの顔だった。
「とうとう、私も教わる側から教える側へデビューかぁ……」
ふむ、優しい先生になってやろうかのぅ!
この転生体の生前の口調を真似しながら、私は、ウキウキ気分で過去の私を迎えに行ったのであった。
<今回の転生先で得たもの>
・大魔法使い【ダルスティン・ローズ】の知識
・MP節約のヒント




