朝が来る!
「はへぇ~……、ワシの理解の及ばない話やで、ホンマ」
「ねぇ~!ひどいでしょ!!この世界の神様なんてろくでもないのよ!」
私は、生まれてから今までの出来事を、初めて他人に話した。
まぁ、他人じゃなくて、他蛙だけど……。
愚痴を聞いてもらえるだけで、心がこんなに軽くなるなんて知らなかった。
ここに来た目的は、最終目標が『木草樹の葉と花』という部分を隠して、MPを回復させる素材を確保するためだけに留めさせてもらった。
というのも、この世界では【アダモゼウス】よりも【木草樹】の方が信仰されている。
目に見えない神様よりも、目に見えるご神木のほうが、崇拝しやすいのだろう。
そして、【サルト】の生物は、全て木草樹の信者だ。
蛙君も、私が木草樹を狙っていると分かったら、さすがに襲ってくると思う。
この世界の木草樹信者の信仰心は、はっきり言って異常ともいえるレベルなのだ。
私が転生して、無意識に木草樹に様を付けている場合がある。
それは、肉体に染み付いた癖だ。
生前、熱心な木草樹信者だった証ともいえる。
正直に恐ろしいと感じる狂気の信仰心だ。
死して意識を失ってもなお、肉体に癖として染み付いているのだから……。
まぁ、私としても、あくまで現時点での最終目標であるわけで、その途中で木草樹以上のMP回復素材があれば、そっちへ目標をシフトしようと思っている。
【コアトル】との戦闘で、正直懲りた。
木草樹を目指すという事は、あれ以上のクラスを山ほど相手にしなければならないという事だ。
そんなの、MPがいくらあっても足りない。
回復させに来て、減らして帰るんじゃお話にもならない。
「それにしても、神様だったやなんてなぁ~……。で、中身も女性だったんかぁ。どお~りで、男のくせに気持ち悪いしゃべり方しとると思うたで!」
「あぁ、そう言えば、この転生体は、男性だったわね。すっかり忘れてたわ……」
「ふむ、確かにあの【コアトル】を倒してしまったんやし、ワシから【木縁樹草風華】を消し去ってくれた。何より、ワシの命の恩人や!!よっしゃ!ワシは、全面的にその話を信じるで!!」
「あぁ、ありがとう……」
ふむ、どうやらこの蛙君は、私の話を信じてくれたようだ。
まぁ、『私は神様の魂の半分で、転生生活送っています!』なんてやつがいたら、普通はネタ乙である。
そこを信じてくれるとは、こやつ中々見どころあるじゃないか!
「あー、そや!さっきから、ワシの事、ケロちゃんやら蛙君やら呼んどるけど、もうちぃっとなんとかならへん?そりゃ、ワシには名前なんて無いけど、もっと適当な呼び方ないんか?ワシ、ケロケロとも鳴かんよ?」
ふむ、どうやら気にしていたらしい。
「あー、じゃあ、名前付けようか?私で良かったらだけど……」
「ええで!カッコいい名前付けてくれてかまへんでー!」
よし、可愛い名前にしよう。
なんか、こいつマスコット的な可愛らしさあるしね!
「じゃあ、【ヌメール】なんてどう?ヌメちゃん!」
「おい、待てや!それ、明らかに触感で決めたやん!!チェンジや!チェンジ!!」
「じゃあ、よろしくね、ヌメちゃん!私は卵って呼んでくれていいよ!」
「うぉ!話聞いてへん!こいつ、ゴリ押すつもりや!」
ギャーギャーと騒がしくも楽しい時間が過ぎていく。
完全に打ち解けた私とヌメっち。
いつの間にか、私は、彼をあだ名で呼んでいた。
そして、気が付くと、東の空が白み始めていた。
「んで、ヌメっちは、これからどうすんの?」
「あー、ワシは、生きている限り、卵の手助けしたるわ!この【サルト】に来るんなら、一人でも味方がいたほうがええやろ?」
「……それはいいけど、ヌメっち大変じゃない?一応、木草樹様に手を出さないとはいえ、【サルト】にとっちゃ、私侵入者だよ?」
「かまへんかまへん!どうせ、助けられた命や!それに、困ったときに助け合うのが友達ってもんやろ!」
じわぁ……。
自然と瞳に涙が溜まっていく。
ああ、やばい泣いちゃう、泣いちゃう……。
私は、その友達ってワードに弱いのだ。
「ううっ、泣かせるなよぉ~!私にとって、二人目の貴重な友達になっちゃったじゃん!」
「ハハ!卵と友達になれて、嬉しいんは、ワシのほうや!なんせ、【サルト】は弱肉強食の世界やからなぁ……。自分以外は、みんな敵や……」
「あはは!よし、じゃあ宜しく!ヌメっち!」
「よっしゃ!こっちこそ、よろしゅうな!」
がっちりと握手を交わす。
その時に、ヌメっちから僅かに赤いオーラが立ち昇るのが見えた。
「……時間かぁ。しゃーないなぁ、はよ行けや!また、今度な!」
ヌメっちは、私を遠ざけようと、手でしっしっという仕草をした。
ふむ、しかし私には一つ、いい考えがあった。
「ヌメっち耳貸してくれる?」
ごにょごにょごにょごにょ
ある作戦を話し終えた私に向かって、ヌメっちは驚愕の表情を浮かべた。
「いやいや!待てや!!そう、上手くいくはずないやろ!」
「大丈夫よ~♪私を信用しなさい!」
「いやいや!こればっかりは……がっ!」
うだうだうるさいヌメっちに、【重罪心疲】の奥義【覚醒停体】を食らわせ、金縛り状態になってもらった。
「どうせ、この転生体での時間も、あと3時間くらいしかないんだから、だったらこっちに時間使ったほうが有意義でしょう!」
私はそう言うと、ヌメっちに向かってにっこりと微笑んだのだった。
…………こら、その絶望したような顔止めなさい。




