木縁樹草風華(きえんじゅそうふうか)
「ふぅ~……」
私は大きく息を吐き出すと、その場に膝をついた。
ちかれた……。
はっきり言って、かなりの強敵だった。
これ、私が逆に魔法使いタイプで助かったパターンだ。
戦士や武闘家などの単純パワータイプだったら、あのドラゴンの鱗の鎧に簡単に弾かれてしまっていただろう。
【サルト】の【暴力】の認識を改めさせられた。
単純パワー馬鹿ってたちが悪いわ。
絶対の力を受け止めることが出来るのは、それ以上の防御だけ。
絶対の防御を壊すことが出来るのは、それ以上の力だけ。
小学生でも分かる簡単な理屈だ。
「あれ以上の力か……、やっかいだわね……」
ちらりと【コアトル】の残骸を見る。
魔法使いの利点。
それは、超強力な高火力にある。
力も速度も防御力も無い魔法使いが、勇者のパーティーメンバーになれる理由がそこだ。
敵全体や単体に、弱点を利用した高火力の攻撃を打ち込める。
目視できるところに放てるので、射程距離などあってないようなものだ。
遠距離からの魔法攻撃が、魔法使いの真骨頂と言えるだろう。
今回は、相手の弱点を突いた超火力の魔法攻撃が決まった形だ。
「良かった、私が魔法使いで……」
即死さえ避ければ、【自己強化再生】で永続的に無傷を保てるし、あの防御力を貫ける魔法を打つこともできる。
あれ?意外と私ってば、ここで戦えるんじゃないかしら?
「……あんさん、何者や?ただ者じゃーないと思っては、おったけども」
「ん?」
蛙がひょっこりと、私の服から顔を出してバラバラになった【コアトル】を見ていた。
「あー、ギフトって言って通じる?」
「知らん!なんや、ギフトって?」
むぅ、やっぱり【サルト】には、ギフトが伝わっていないのね。
あれって、詳しい説明省けるから、かなり楽なのよね。
まぁ、しゃーないか。一から説明して……!?
「あ……あぁ!!」
ボォオオ!!!
いきなり蛙の体が、赤い炎のようなものに包まれる。
私は、慌てて蛙を服の中から引っ張り出すと、地面に置いて距離を取った。
「くっそー、油断した!」
そうだった、すっかり私は忘れていたのだ。
【サルト】全ての生物が、外からの侵入者に襲い掛かる木草樹の信者であり、守り手だった。
【コアトル】が生命活動を終えたのを確認して、今度は蛙に【木縁樹草風華】を使ったのだ。
この蛙とはいえ、身体能力が10倍となったら油断なんて出来ない。
しかも、私はそこそこ疲れてしまっている。
「まったく、やっかいねぇ……」
私は、【重罪心疲】の構えを取って、蛙からの攻撃に備えた。
しかし……。
「ぐぐっ……!!」
なにやら、蛙は苦し気な表情を浮かべたまま、何かに耐えていた。
「はっ、はよぉ!逃げぇええ!!!」
ぜえぜえと呼吸を荒げて、踏みとどまるように必死に口をつぐんでいる。
「ワシの意識が乗っ取られる前に、はよ行けや!さもないと、ワシはお前を攻撃してまう!!」
「ん?ケロちゃん。あなた、木縁樹草風華に抗っているの?」
「とっ、とっ、当然やろ!命助けてもろた、おっ、恩人を殺せるかい!!!」
涙を流し、ブルブルと体を痙攣させて、蛙は、必死に『木草樹様に害を為しそうな、異端者を始末する』命令に抗っていた。
その姿を見て、私は警戒を解いて笑みをこぼしてしまった。
「いいよ、ケロちゃん!あなたを助けたかいがあった!」
素直に嬉しいと思える行為だった。
こんな姿を見せられたら、私も手を貸さないわけにはいかない!
私は、【魂糸】を7本、蛙に突き刺し命令をする。
『耐えろ、耐えろ、耐えろ!』と……。
私の【魅了】による、サポートだ!
「私にいい考えがあるから、もう少し耐えて頂戴ね!」
「なっ、なんか知らんが了解したるわ!何故か、気持ちがかなり楽になったしな!!」
さぁ、木草樹!こっちは、二人よ!
あんたの意思が勝つか、私達が勝つか、勝負しようじゃない!!!
時刻は、16時過ぎ。
太陽が傾き始めていた。




