「そこはどこですか?」 「底です」
そこは、底だった。
別に渾身のギャグだったつもりはない。
水底の岩の隙間から、私は顔を出していたのだった。
ああ、さっきまでは、岩の下にいたから真っ暗だったわけね。
それにしても、今回は水生生物かぁ~…………。
あの魔女!!!!!!!
何が「次の転生先は、特別に私が指定させていただきましゅた。……そこでの知識は、この先の転生生活で非常に重要になりましゅ。絶対に、歩みを視ておくんでしゅよ?」よ!!
特別指定の水生生物ってなにさ!!!
……まさか、天然記念物ってオチじゃないわよね?
あぁ……、駄目だわ、私。
あの魔女に殺されたことで、かなり疑心暗鬼になっているみたいだわ。
ふぅ……、そういえば、まだこの生物の歩みを視ていなかったわね。
何にも得られる知識はなさそうだけど、魔女様のありがた~いご忠告を聞いておくことにしますかね!
私は、対して期待もせずに、意識を頭の中に集中させた。
・川の流れにより動いた石に潰されて、体が半分に引きちぎられる。
・下半身部位から、別個体が再生する。
あら、素敵……。
今回の転生先は、プラナリアだった。
う~む、図らずとも再生の原理を理解してしまったぞぃ。
というか、この歩みを視る能力スゴイ!
今回が初めてのケースだけど、どうやら【生物自体が頭で理解していない事でも、細胞が機能を理解していれば私の知識に刻み込まれる】みたいだ。
カマキリの時に『非常に残念な能力』なんて言ってごめんなさい。
おかげさまで、再生能力を身に付けた……とまではいかないけど、仕組みを理解することができた。
後は、方法さえ確立できてしまえば、どんな肉体になっても再生することが可能になるでしょう。
どちらにせよ、今後の転生に役立つ大きな知識であること間違いなし。
魔女様、ありがとうございます!
手の平をくるっくる返していくスタイル。
そんな自分が嫌いじゃない。
……ふむ。
明るい場所で、改めて自分の姿を確認する。
歩みを視た限りでは、元個体から切り離された下半身部分より、再生したばかりの個体のようだ。
今回は、死を経験した肉体ってわけじゃないんだね。
いや、まぁ、ある意味一回死んでるんだろうけど……。
まぁー、衰弱していない上に、痛くもない肉体は初めてなので、自然とテンションが上がる。
ちらりと視線を下ろすと、岩の隙間でウネウネ動く赤い細長い生物を見つけた。
すかさず捕食!
うん、美味しい!!
水が流れる心地よい音を聞きながら、食事をする。
何気ない日常だけど、これって本当に幸せなことなんだと思う。
平和が一番ってことよねぇ~。
……ん?
あれ?私って水の音が聞こえてもいいんだっけ?
まぁ、いいか……。
3回目にて、ようやく平和な1日を獲得したわけだし。
今は、難しいことを考えずに、この平和な一日を堪能しよう。
その後、水辺の捕食者に襲われることもなく、平和な24時間を過ごした。
そして、24時間を超えた途端、私は急激な睡魔に襲われた。
心地よい睡眠欲に負けて、私の意識が徐々に落ちていく。
3回目の転生にて、初めてタイムリミットによる転生を体験した瞬間だった。
<今回の転生先で得たもの>
・再生の知識
・皮膚呼吸の知識
・平和な時間<プライスレス>
転生先の募集を開始いたしました。
興味がある方は、下記への移動、又は活動報告の確認をお願いします。
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