習得
「【重罪心疲】は、生物の筋肉を強制的に酷使させる拳法だ。体中に疲労を溜めさせ、筋肉痛や眠気、機能障害などを起こさせる。ただ欠点ともいえるのが、時間がかかるということだ。技の熟練度が上がれば上がるほど、一撃の疲労度を上げることが出来るが、それでも一撃で相手を疲労困憊にすることは難しいだろう」
親父さんは、立ち上がり左手を前に突き出して構えた。
「だが、この奥義は、その概念をひっくり返す大技だ。時間などかからない。一瞬で終えることが出来る」
そういうと、親父さんは私のみぞおち辺りに拳を突き入れた。
「【重罪心疲】奥義、【覚醒停体】」
「ぐっ!」
痛みはそれほどない。
ただ、一瞬にして体全体を衝撃が駆け抜けていった感じだ。
「これが、【重罪心疲】の奥義【覚醒停体】だ」
「あ……れ?」
意識はある。
頭はとてもはっきりしていた。
……しかし、体がピクリとも動かなかった。
「なっ……なんでぇ……」
「【覚醒停体】は、相手の体を強制的に眠らす技だ。所謂、金縛り状態にする。完全に相手を無抵抗に出来る奥義である」
私の首の後ろを親父さんが人差し指で押すと同時に拘束が解ける。
「これが、奥義……」
「お前に、この奥義を教える。……そうすることで、お前は【重罪心疲】を極めることが出来るだろう」
それから、私は親父さんに奥義を教わった。
親父さん自身が私の奥義の受け手となって、日が暮れる頃に奥義を完全に習得したのだった。
片腕を失った親父さんは、奥義習得を見た後に気を失った。
傷や出血がひどかったが、無事に医療班の人の処置で助かった。
そして、この夜が明ける頃には、この木草界で一番大きな戦争は終わったようだった。
私は、未だ気を失ったまま眠り続ける親父さんのベッドの横に座って、外を見ていた。
これで、親父さんは満足できたんだろうか?
亡くなった娘の体に転生した私に、奥義を教えられて満足したのだろうか?
……自己満足でも、満足できたのなら、私は奥義を習得した意味があるというものだ。
「ふわぁ~……」
……私も眠くなってきた。
私は、【ウラヌス】に行くのを止めにした。
この娘の遺体を親父さんに返してやりたいと思ったのだ。
さてと、もうそんなに時間はないな……。
私は、親父さんが寝ているベッドに、上半身をうつぶせに乗せて目を閉じた。
「ごめんね……おやすみなさい、父さん」
その言葉は、私の意思で出たものではなかった。
その言葉を聞いた【聖心】のリーダーは、ゆっくりと体を起こし、ずっとずっと娘の頭を撫で続けた。
娘の体が冷たくなったその後も、ずっと……。
<今回の転生先で覚えたこと>
・能力拳法【重罪心疲】




