未開の地
木草界が木草樹の根の上に成り立っているのは、もうご存知かと思う。
では、その木草樹自体はどの国に生えているのかを知っているだろうか?
木草樹は、その膨大な大きさから、どこの国にいても見上げることが出来る。
但し、出来るのは見る事だけだ。
それは、木草樹が生えている場所に問題があるからだ。
未開の国【サルト】。
その国こそが、木草樹が地面から空へ体を伸ばしている場所である。
【サルト】は、木草樹をぐるりと囲むような丸い形をした国で、その地は未だ開拓されていない。
魔女すらいるのか分からず、非常に謎に包まれた国なのだ。
【サルト】と他の国の境界は、非常に分かりやすく、境界の先は、何があるのかわからないジャングルとなっている。
蔦や、木や、草が生い茂る緑の王国。
溶岩地帯や氷山地帯、砂漠地帯や湿地帯などもあると噂されている。
この不可思議な場所が開拓されないのは、そういった自然障害だけが問題ではない。
【サルト】に生息している、生物の全てが化け物なのだ。
まるで木草樹を守るかのように、【サルト】に入ってきた者を容赦なく捕食する。
歩く巨大なハエトリグサ、カマキリとムカデの混血虫、三本の角を持った牛、3つ首に分かれた体を持つ巨大な蛇、双頭の虎などなど……。
所謂、普通とは遙かにかけ離れた存在が、まるで空気のように存在する。
それ故、この【サルト】は、いつまでたっても未開の地であり、余程の強者でなければ、入って5分程度で死ぬと言われるほど危険な国なのである。
で、今回の卵はと言うと……。
「ん~、参ったわねぇ……」
寝て起きたら転生していた件について……。
「はぁ~……、最後にしっかりお別れくらいしたかったなぁ~」
恭太くんを思い出して、少し悲しくなった。
うるっ
いかん!いかん!頭を切り替えていこう!
私は、頭をブルブル降ると、気合を入れた。
今回の転生先は、どうも老衰で死んだようで、体中が何やらかったるい。
ふむ、視線の高さや見える風景から察するに、相当でかい体なのも分かるぞぃ。
さぁーて、恒例の【歩み】を視るか!
・【サルト】北部にて生を受ける。
・木草樹様をお守りする為に、外敵を排除し続ける。
・1563歳で、その生涯を閉じる。
……さっきさ~、人語を話せていたよね。
いや、人語だけじゃない。
この転生体に恐らく話せない言語などないと思う。
1563年という化け物じみた寿命が、知識を豊富にしていた。
おいおい、こいつマジかよ……。
魔法が使える。
人以上の知識。
嗅覚や視覚、聴覚まで優れている。
翼で空も飛べる。
様々な息もはける。
「グギャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」
私が雄たけびを上げると、近くにいた生物が必死に逃げていく気配が分かった。
角は17本生えていた。
爬虫類特有の薄い膜のような翼。
頭の両側についている黄色い目は【石化】の能力を、額の真ん中にある赤い目は【千里眼】の能力を持っていた。
ギザギザな牙だらけの口は、耳の近くまで大きく開き、喉の奥から吐く息は、様々な温度に変化する。
緑色の鱗に覆われた体は、太陽光で鈍く輝き、ところどころ苔が生えていた。
【ドラゴン】
世間一般ではそう言われる、爬虫類族の最大個体に私は転生していた。
しかも、この世界での【ドラゴン】の平均寿命800歳を大きく上回る個体である。
そして、1000歳を超えた【ドラゴン】は、人々からこう呼ばれる。
【エンシェントドラゴン】と……。




