優秀な生徒
ばーさんの体が一気に輝きだし、まばゆい光に包まれる。
そして、炎を纏った人のような姿になり、存在感が一気に薄れた。
「これが【透化】の魔法だよ。魂で肉体全体を包み、肉体を一時的に魂と同化させる。この状態は、物質に触れる事が一切出来なくなるけど、物質に触れられることも無くなる効果がある」
そう言ってばーさんは、物で散らかった部屋を歩き回った。
障害物を次々にすり抜けて、我が物顔で歩き回ることが出来ていた。
物に当たらずにすり抜ける幽霊のような存在になる魔法。
それが私の感じた印象だった。
「但し、俗にいう霊能力や魔法、同じ【透化】した相手同士だと効果が無くなるから注意が必要さね」
ポンっと軽い音がして、元のばーさんの姿に戻った。
「さぁ、次はあんたの番だよ。イメージして集中しなさい!」
ばーさんに言われるがまま、立ち上がって目を閉じる。
「【魂糸】で体全体を覆って繭を作るイメージ!」
イメージする。
体全体を覆う糸。
それで体の周りに、膜のようなものを作る。
「次は、自分自身をその繭全体まで広げるイメージ!」
肉体の中心にあった私の本体部分が、膨張していく感じをイメージする。
ぐんぐん大きくなる風船のような魂を、膜の隅々まで満たしていく。
「最後は、肉体を魂で侵食していくイメージ!スライムやアメーバの捕食のように、取り込んで消化するような感じだ」
膜いっぱいに満たされた魂の中にある肉体。
その肉体を取り込んでいくイメージをする。
徐々に徐々に、肉体が魂に取り込まれていく感じがした。
「よし!ゆっくり目を開けてみな」
「……」
ばーさんに言われた通りに目を開ける。
なんだか、妙な感じがした。
心ここにあらずというか、存在が薄くなるというか、ぼーっとした感じ。
「鏡を見てみな~、成功だよ!」
ば~さんが大きめの鏡を私の前に【念力】で持ってくる。
そこに映っていたのは、私の肉体と同じ大きさの火の玉だった。
「……これが、【透化】?」
「まぁ、初心者にすれば上出来だよ。初めの範囲指定を大きめに設定したからそんな感じだけど、慣れたら最低限の大きさで【透化】出来るよ」
むぅ、どうやらさっきの膜のイメージが大きすぎたみたいだ。
繭ってより宇宙服みたいなのを想像したほうが良かったかな?
「さて、次は【千里眼】だね。これは、簡単。【魂糸】の先に視覚を追加すればいい。いつも、私が無意識に使用してる『転生体が変わっても、視覚が常に一定で見えている』のは、魂で外の風景を見ている【魂眼】って魔法なんだよ。これを【魂糸】の先で使用して、糸を伸ばせば【千里眼】の完成」
「……え?……私って、無意識に魔法使ってたの?」
「まぁ~、よく分かるよ。私も初めて聞かされたときは、驚いたからね!生物の記憶を強制的に視る能力、通称【歩み】のおまけ効果かと思ってたら、まさか魔法だったなんてね~」
私は【魂糸】を出して、この家の2階部分まで伸ばす。
そして、恐る恐る【魂糸】の先で見るような意識で目を瞑る。
「うわぁ……本当だ」
【千里眼】が発動して、【魂糸】での視界が展開される。
瞼の裏に2階の風景が浮かび上がった。
「あ、この本面白そう」
2階の一室に《究極超魔法図鑑》と書かれた本が置かれていたのを見て、私はそう呟いた。
見てみたい。
ほんの少しそう思った瞬間!
私の体は、《究極超魔法図鑑》の前に移動していた。
「あ……れ……?これって、もしかして?」
「もしかしなくても【転移】だよ。本当に、私ってば優秀なんだから~!」
すぐ後ろでばーさんが、とびっきりの笑顔で笑っている。
えーっと………………。
やったぜ!【転移】を習得したぜ!
……達成感少なっ!




