BBAの魔法教室☆
「それじゃ、まず【転移】と【転送】のそれぞれのメリットとデメリットについて説明するよ」
大きなあくびを一回して、ばーさんの私は教鞭を持ち、空間に文字を書いて説明を始めた。
「【転移】のメリット。それは【魂糸】の伸ばせる範囲ならば、どこでも行けるという事だね」
カリカリと光る不思議なチョークを滑らせ、絵と文字を空間に書いていく。
「【転送】のメリットは、自分以外の物も移動可能な点。瞬間的に移動できる点がある」
「ん?【転移】瞬間的に移動できないの?」
「うん。【転移】は、一瞬で移動できるように見えるけど、実際は非常に時間がかかる移動方法なんだよ」
そう言うとばーさんは、指先から【魂糸】を出して部屋の端まで伸ばした。
「【転移】」
一瞬のうちにばーさんが糸の先へ移動する。
「と、まぁこんな感じで、移動自体は一瞬かもしれないけど、糸を伸ばす時間が必要なわけよ」
「あぁー、そういうことね。糸を伸ばす時間が+αかかると。」
「そういうこと。これが【転移】のデメリットの一つでもあるんだけど……まぁ、先にデメリット全部説明しちゃったほうが分かりがいいか。」
カリカリっとチョークで【転移】のデメリットを箇条書きにするばーさん。
・糸を出す時間+糸を伸ばす時間を要してからの発動となる。
・【千里眼】、【透化】の魔法の習得がほぼ必須。←私なら原理を理解出来れば、すぐに習得可能。
・【触魂】+【粘度】+【生糸】の魔法技術が必要。←すでに習得済み。
・移動手段は単純に加速であるため、移動直線上の物質にぶち当たる。
「まぁ、なんと分かりやすい……」
「さすがに自分のことは、覚えてるよ。初めて【ウラヌス】に来たとき、ばあさんに世話になったこと。その時にどんな魔法を覚えていたかくらいはね……」
なんか懐かしいものを見る目で、私を見つめる未来の私。
「回想モードは、それくらいで。時間もないし、早く【転送】のデメリットを教えてよ!」
「まったく、可愛げのないガキだねぇ~。少しは、感傷に浸らせてくれたってねぇ……」
ブツブツ文句を言いながら、今度は【転送】のデメリットを箇条書きにする。
・マーキングが必要。
・一度行った場所にしか行けない。
・マーキング後、魂の修復が完全状態で使用しないと、マーキングが解けてしまう。
「【転送】も、魂が元の形に戻ろうとする性質を利用した魔法だ。魂の残骸を、魂が自分の失った部分だと認識して取り込もうとするわけだね。そのために、残骸の場所まで移動するわけだ。でも、魂はすでに修復されているから、取り込みようがない」
ん~、なんか色々と知らないことがいっぱい出てきたぞ~。
「せんせ~い!魂の残骸って具体的には、何を差すんですか?」
「ふむ、良い質問じゃねぇ!みんな、よく聞くように!」
このBBAノリノリである。
未来の私は、その姿に見合った話し方をすると、再度チョークを滑らせた。
「魂ってのは、千切れたり、擦れたりして部分的に欠けることがあるんじゃよ。人間でいう、髪の毛や老廃物みたいなものと考えてくれていい。これが欠けることで、MP自体に変動はない。人間が爪や髪を切っただけでHPが減ったりしないのと同じじゃ」
分かりやすく空間にチョークで書きながら説明してくれるので、非常に分かりやすい。
ふむ、私はこんなに絵も文字も上手く書けるようになるんだなぁ。
……なんか妙なところで感心してしまった。
「その欠けた魂を【魂の残骸】と魔法学では呼ぶ。残骸程度の破損ならば、一日寝れば完全に治るんじゃが、魂自体はいつまでたっても残骸を自分の一部と認識し続けるのじゃよ。で、ここからが重要なんじゃが、『魂は千切れた場合、千切れた側の操作が一切出来なくなる。だが、有機物に取り込まれない限り、魂は決して朽ちることはない』んじゃ。」
「……」
「つまり、一度マーキングさえしてしまえば、ほぼ永遠に同じ場所に【転送】で戻ってこれるってわけ。しかも、やっかいなことに【転送】の魔法は、加速移動ではなく、霊界移動。かなり安全に移動できる魔法よ」
「霊界移動?」
初めて聞く言葉だった。
私の言葉にコホンっと小さく咳をして、ばーさんは口を開く。
「この世界では肉体が死ぬと、魂が木草樹に吸収されて転生させられるのは知ってるよね?」
「うん」
「この世界は、木草樹の根の上にあるんだよ。死ぬと魂は根に吸収される。但し、肉体を疑似的に魂と同じ状態にすることで、吸収されないけど木草樹の根の中に入ることができるんだよ。木草樹の中を、人は霊界と言う。つまり、木草樹の根の中を移動することを霊界移動と言うんだよ」
いつの間にか、BBA口調が元の私の口調に直っていた。
私が真面目に話を聞いてるから、恥ずかしくなったんだろうね。
「疑似的に魂と同じ状態になる魔法を【透化】って言うんだ。どっちを覚えるにしても、この魔法は覚えなくちゃいけないから、まずはこの魔法を習得しようかね」
ばーさんは、薄く目を閉じると両手を祈るように組み合わせた。
「【透化】」




