はじめてのうらぬす
「ハイ、カクニンイタシマシタ!ヨイタビヲ!」
私の魂糸で【魅了】された女性が、作り物の笑顔を浮かべて私を案内する。
宗教の国【イブール】の首都【イブリナ】。
その首都にある送港に、私は到着していた。
送港とは、転送魔法装置がたくさん置いてある場所で、旅行や仕事などで遠くに行く人が利用する交通機関である。
分かりやすく言うなら、船なら港、飛行機なら空港、転送魔法装置なら送港といった感じだ。
私は受付で案内を受けた場所へ移動を開始した。
「はぁ……、それにしても疲れた……」
深くため息を吐いて、肩を落とす。
ぶっちゃけ、幼女の体力の無さを舐めていた。
なんせ【自己強化】を施しても、成人男性よりやや強い程度なのである。
あの事故現場にいた全員があっけにとられていなかったら、とてもあの場から逃走できなかっただろう。
そう思えるほど、私の足は遅かった。
全力疾走より自動車で移動したほうが早いと判断して、ヒッチハイクしてここまで来たわけだ。
もちろん、【魅了】を駆使しまくりである。
「MP結構消費している気がする……」
次の転生体になったらゆっくり休もう。
……でも、今回ばかりは無理させてもらう。
私はそう決心して、チケットに書かれている数字のゲートへ向かった。
その場所は、驚くほど狭い空間だった。
畳2枚分程度の広さの暗い部屋。
足元には、円状に広がる緑色の光が輝いていた。
「ようこそいらっしゃいました、お客様!では、円の中心でチケットを二つにお破きください」
部屋の上部についているスピーカーから、女性の案内が聞こえた。
私は案内の通りにチケットを真ん中から破く。
ビリッ!
その瞬間、目の前が明るくなった。
一瞬の閃光の後、私は先ほどと打って変わった明るい部屋の真ん中にいた。
「すごい……」
自然とそんな声が漏れた。
蛇がのたくったような不思議な文字が書かれた壁。
その文字には、見覚えがあった。
ずっと昔に転生した男が記憶していた【ウラヌス】の魔法文字。
「ようこそ、お客様!魔法の国【ウラヌス】へ!!!」
ふわふわと浮かぶ水晶の玉から、案内の声が響く。
堪らず私は部屋の外へ駆け出した。
「わぁ~!!」
ガラス窓の外には、竜や箒に跨った人々が外を飛んでいた。
物理法則を無視した物が、あっちこっちで浮かんでいる。
やった!
ついに、ついに、ついにぃいいいいい!!!!!!
私は【ウラヌス】に、やってきたんだぁ!
嬉しさのあまり、にやけた顔が止まらない。
そんな歓喜状態の私の後ろから、コツコツと足音が聞こえてきた。
「お嬢さん、迷子かな?」
突如、後ろから声を掛けられる事案発生、バージョンツ-。
さすがに2回目ともなれば、手慣れたものである。
はいはい、【魅了】【魅了】!
振り向くと同時に、魂糸を突き刺……せなかった。
ばっ、かっ、体が、うっ、動かない……!?
「相変わらず、詰めが甘いわねぇ~。そんなんじゃ、ここで大分苦労するわよ?」
私の体に彼女から延びる長い糸が見えた。
まさ……か!?私が【魅了】されている!!??
「ご名答~♪さっすが、わたし!」
にこっと笑ったのは、老齢の女性だった。
だが、その口調には、非常に聞き覚えがある。
なんなんだよ、最近の私の大安売りは!!
バーゲンセールか!
「んっふっふ。まぁ~これから【ウラヌス】に来るようになれば、嫌でも会えるようになるわよ。嫌でもね」
意地悪気味に笑う老婆。
……いや、老婆なのは外側だけだ。
中身は、間違いなく私。
【ウラヌス】に来てすぐに、私を待ち構えていた未来の私に会ってしまったようだ。




