歓迎されない来訪者
「なんで逃げるのかしらぁ~?悪いようにはしないわよぉ?」
気持ち悪いくらいの笑顔で少しずつ近づいてくるアダモゼウス。
自然と呼吸が荒くなる。
な ん だ 、 こ の 化 け 物 は … … 。
今まで視てきたどんな生物よりも、恐ろしく怖い存在が、目の前にいた。
猫の前の鼠、獅子の前の鹿、鷹の前の兎、捕食者と被食者の関係よりも広い。
象と蟻、鯨とプランクトンのような圧倒的な開き。
私が初めて会った時よりも、数十倍は強くなっている。
そう確信できるほどの存在感と殺気があった。
「嫌だねぇ……。私は、もうちょっと転生生活を送っていたいんだよ」
「貴方の意見は、聞いてないわねぇ~。さすがに、鬼ごっこにも飽きてきたわ」
未来の私の前に、アダモゼウスが立つ。
すごい、未来の私。
アダモゼウスの存在に、一歩も引いていない。
だけど、私の目から見てもアダモゼウスのほうが数段格上の存在だって分かった。
「特別に鬼ごっこから逃げられただけ転生生活させてあげてるのよぉ?捕まったら、終わりぃ。げぇ~むおぉ~ばぁ~よ!」
そう言って、アダモゼウスは、未来の私を捕まえようと手を伸ばした。
「自己強化!爆砕壊破!!」
ボンッ!!
アダモゼウスの触れようとした手が、大きな音を立てて破壊される。
壊された右手を見たアダモゼウスの表情が、ものすごく嬉しそうに歪んだ。
「ああ、卵ちゃん~♪すごく、良いわぁ……。もっと、私を楽しませなさい」
にいぃぃっと、口の端を歪ませた恐ろしい笑顔で、未来の私に掴みかかろうと手を伸ばす。
既に破壊された右手は、復元を始めていた。
その後は、散々なものだった。
未来の私の攻撃を全て受け止めた上で、アダモゼウスは私をボロボロに痛めつけた。
魂が抜けださないように、致命傷を避ける形で……。
圧倒的な実力差がないと、とてもできない芸当だった。
「さぁて、げ~むお~ば~よぉ!魂、抜き取らせてもらうわねぇ……」
アダモゼウスは、未来の私を左手で掴み上げていた。
そして、未来の私に向かって右腕を振り下ろそうとした時、私は自然と叫んでいた。
「やっ!やめてぇ!!!」
その声に、アダモゼウスが一瞬こちらを向いた。
その隙を、未来の私は見逃さなかった。
「……分切一付」
パキリと軽い音がして、アダモゼウスの左手首から先が腕から離れた。
「器転自武奥義【手爪転光】」
左腕の拘束から逃れた未来の私は、なんと自らの手で自分の頭を吹っ飛ばしたのだった。
頭を失った体が、大地に横たわる。
首からは、ものすごい勢いで血が溢れていた。
「……逃げられちゃったなぁ。引き続き、鬼ごっこかぁ」
アダモゼウスは、首のない遺体を見て、遠い目をした後、こちらを向いた。
「……ぁー、随分と幼い卵ちゃんだねぇ。初めは、気が付かなかったよぉ」
落ちてた左手首を腕にはめ込み、ゆっくりと私と目を合わせる。
ごくりと喉が鳴った。
目が合っただけで、恐怖で全身が硬直して動けなくなる。
「もう~、卵ちゃんを回収してやりたいことがあるのに逃げるんだよぉ~。ひどくなぁい?もう、かれこれ2年くらいは追いかけっこしてるかなぁ?」
そんなに、私は逃げ続けられているのか?
正直、こんな化け物相手の鬼ごっことか想像するだけでも恐ろしいってのにな……。
「でも、卵ちゃんもへとへとだろうしぃ~。次で、終わりかな?」
「次?」
「そう、次の転生先ぃ~♪まっ、今回もあなたがいなかったらぁ~決着がついてたんだけどね」
ゾゾッ!
背中に寒気を感じた瞬間に、私の頭は後ろ向きに吹っ飛んだ。
「ちょおっと、ムカついたから殺しとくねぇ♪卵ちゃん、早くあそこまで成長してね♬」
指弾のようなものを飛ばして、私の頭を打ちぬいたのか?
あっという間に意識がなくなっていく。
「その時は、是非おとなしく捕まってほしいなぁ~♪」
本当に楽しそうなアダモゼウスの声を最後に私の意識は闇へ沈んだ。
久しぶりの強制的な死による転生だった。
<今回の転生で得た知識>
・同性愛の知識
・神の強さ
・未来の私の強さ




