綺麗な百合でも周りに棘がある
いつものように、ゆっくりと意識が覚醒していく。
目を開けると、綺麗な丘の上で倒れていた。
右手首には、深い切り傷。
瞬間的に【自己強化再生】で治す。
隣には、同じように右手から大量の血液を流して倒れている女性がいる。
女性には、まだ息があるようで小さく呼吸を繰り返していた。
「ふむ、無理心中といったところかな?」
状況的に、そんな感じがする。
ただ、私と、この女の人の関係性がわからなかった。
だって、私の転生先も女の子なのだ。
彼女と同じくらいで、ちょっと男性っぽい服装をしているが、両胸にぶら下がるマスクメロンが、男性であることを否定している。
「一応、視ておくか……」
タコで十分休めたおかげで、大分MPが回復できていた。
私は、意識を集中させると歩みを視始めた。
・小学生のころから、男の子と遊ぶのが好きだった
・可愛い女の子と遊ぶと胸のドキドキが止まらなかった。
・異常に気が付いたのは、高校生のころ。
・プールの更衣室で着替えた同級生の体に興奮して、お腹の奥が熱くなった。
・私は、同性愛者だった。
・体が女性として魅力的になっていくごとに、気が狂いそうになる。
・何故、私にはおっぱいがあるのだろう?
・何故、私には男性器が付いていないのだろう?
・どうして、女性を愛しちゃいけないんだろう?
・そんな私を受け入れてくれた女性がいた。
・涙が出るほど嬉しかった。
・でも……世界は、私たちを異端として扱った。
・両親に捨てられた。
・もう、ダメだった。
・彼女と一緒に死ぬことに決めた。
「ふむ、色んな世界があるんだなぁ」
同性愛者に転生するのは、初めてだったけど、これは切ないね。
心の病気は、目に見えないものだから理解されずらいってのがある。
例えば、息を切らしていたり、頬が腫れていたりすれば、すぐに他人でも気が付くことができるだろう。
でも、感情や思いや気持ちなんてのは、言葉にしない限り伝わらない。
見た目では、全然分からないのだから。
そして、残念ながら言葉にしても理解されづらいからこそ、心の病気は難しい。
女性が男性を愛し子供を生すことは、生物的に正常なことだ。
だから、女性が女性を愛すことは、生物的に異常ということになる。
これの辛いところは、同性愛が異常だということを自分自身が認識しなくてはいけないところだ。
世界や周りが認めたからといって、同性愛を正常と勘違いすることだけはしてはいけない。
彼女の強い感情が、ここに集中していた。
世界や国が同性愛者を認め始めていたが、彼女の周りは違っていたのだ。
そして、追い込まれた。
彼女は、愛おしい女性と共に死ぬ選択肢を選ばざるを得なかったんだろう。
「自分を異常と認識しながらも、それを受け入れて生きてきて、周りに拒絶されて死んでいくか……。やりきれないねぇ……」
ちらりと、隣の女性を見ると、もう虫の息だった。
残念だけど、私には彼女を治す理由も力もなかった。
一緒に死のうとした片方を助けるのは、傲慢でしかない。
「ひゅぅ……」
大きく息を吐きだして、呼吸が止まった。
「……お疲れさん」
私がそう言った途端に、彼女の体が青白く光り始める。
「さて、来なすったか」
前々回の時に見たのと同じ、爆音と稲光が起こる。
あの時に未来の私が言っていたことを思いだす。
『この後、2回目の転生の時に、また未来の自分と会う機会があるんだよ』
『その時の出来事を、絶対に忘れるな!』
一体何が起きるのかな?
色んな意味で、ドキドキする私の目の前で、先ほど死んだ女性は甦った。




