最終決戦
カリスマ性、王としての素質。
それを実は、持っていた。
帝国【アダモグラン】の全ての人へと演説する。
敵が迫っている事、他の国の参謀長達が殺された事、自分がいる事、国民一丸で敵に立ち向かう事!!
【アダモディアン】から一番離れた北の城にて、大総統は声高らかに宣言した。
これから、戦争がはじまると……。
国民は、ラジオに釘付けになる。
大総統の言葉に心を奪われる。
皆が奮い立つ。
全ては、我が大総統を守るため!
無能な者を排除するため!!
この帝国【アダモグラン】には、有能な者しかいない。
この国の人々は、この国以外の人を見下していた。
……いや、実際の話。
この国の人より優れた人材は、他の国には少ないだろう。
それくらい選別された人で、この国は成り立っていた。
故に、大総統の言葉を疑う者はいない。
大総統の言葉を疑うものなど、無能の極みであるからだ。
そんなやつは、直ちに処刑されていた。
国民全員が、大総統の有能な兵士であり、この国の戦力である。
大総統は、国民全てに命令を下したのだ。
「魔女を始末せよ!!」
その言葉に、国民全てが雄叫びを上げた。
国民が一瞬にして一体となり、敵を排除しようと準備を始める。
国中の全てがZERO達の敵となった。
この全てを排除しつつ、大総統の元へ辿り着くのは容易ではない。
大総統は、昨日の夜に力を使い果たしていた。
それ故に取った作戦が、国民による消耗戦なのだ。
長い時間を掛けて鍛えてきた国民をここで使い潰すのは、正直惜しかった。
しかし、大総統には国民よりも大事なものがあったのだ。
……それは、隣にいる妻と赤ん坊。
大総統は、愛する2人の為に国民を捨てた。
本来ならば、頂点に立つ者としては許されない行為だ。
しかし、この国の国民は、身も心も大総統に捧げていた。
だから、捨て駒にされていることにすら気が付かない。
大総統の大総統による大総統の為に完璧に造られた帝国で、最後の戦争が始まろうとしていた。
ZERO達を待ち構えるのは、帝国【アダモグラン】そのものだった。
「う~ん、かなり厄介な事になってますねぇ……」
隠れ家の屋根の上で、詩は人差し指と親指で丸を作り、そこから目を覗かせていた。
特にその行為に意味は無いが、詩が【千里眼】を使用する時にやる癖のようなものだった。
「私も見てるから分かるけど、まさかあんなに厄介な国だったなんて……」
「え?どうなっているんですか?」
「師匠、俺達にも詳しく話してくれよー!」
まだまだ未熟で【千里眼】の魔法で遠すぎる景色が見えない神楽坂姉妹は、詩とZEROの会話に入っていけなかった。
詩は、二人に今見た事を話した。
その間、ZEROは手を顎に当てて、何かを考えるように前を見つめていた。
「つまり、国民が一丸となってこちらを迎え撃とうとしてるって事?」
「ええ、正直言って、あそこまで統率の取れた国なんて見たことないですよ……。まったく、土地の呪いが外れたので覗いてみたら、更なる絶望が待っていたって所ですね~」
「なんだ?何がそんなに厄介なんだ?兵士なんて大したことないだろ?」
「ああ、他の国の兵士を思い浮かべてると痛い目を見ますよ。パッと見ですけど、他の国の兵士の4~7倍は強いと思ってください。それが、国民全員なんですから厄介なんですよ!」
ふぅ~と詩は、大きなため息を吐いた。
こちらの戦力は、詩、ZERO、神楽坂姉妹の4人だけだった。
卵は後から遅れてくると、ZEROが皆に伝えてあったが、正直な話、それでも足りない。
「ねぇ、詩ちゃんと一葉に双葉。貴方達は、どれくらい回復してるの?」
「……私は、60%程度って所でしょうか?」
「僕は、ほぼほぼ全快って感じの認識で大丈夫ですよ」
「俺も双葉と同じかな?まぁ、いつもよりちょっとかったるいけどな……」
「そう……」
3人の体調を聞いて、またZEROは考え事に入った。
実際、3人は2日間暴れまわったのだ。
一葉は参謀長を一人、詩に関しては参謀長を2人殺している。
消耗していないはずが無かった。
詩は全力で休んだが、全快には程遠い60%程度しか回復していなく、一葉は80%、双葉は90%程度だった。
唯一、全快とも言えるのがZERO唯一人。
だからこそ、ZEROは考え込んでいた。
もしかして、卵ちゃんはこれを見越しての作戦を立てていたのだろうか?と……。
ZEROは、【全能開発】を使用する。
体力が万全だからこそ、すぐに組み立て開発できた。
【全能開発】は、木草界における特殊能力を生み出す力だ。
しかし、その強力すぎる力故に、当然のごとくペナルティが発生する。
……それが、【狂気】である。
ZEROは、本来ならば生まれてからずーっとまともでは無いのだ。
それをまともにしたのが、彼女の兄である。
彼女は、兄がいるからこそまともでいられるのだった。
だから、表面上は、いくら【全能開発】を使用しようとも【狂気】は顔を出してこない。
しかし、溜まりに溜まった【狂気】は、確かにZEROの中に存在し続けている。
それに気が付いている者は、誰もいなかった。
ZERO自身でさえも、【全能開発】のマイナス要素に気が付いていない。
だからこそ、気軽に使ってきたのだ。
卵も、ZEROが全快の状態でいるのならば、きっと最後の砦の攻略も何とかなると考えたのだった。
そして、今回もZEROは特殊能力を開発した。
その特殊能力の名は、【真空領域】と言った。
「私が先行して向かうから、詩ちゃんはそのまま私の行方を【千里眼】で追いなさい。そして、敵の親玉が出て来たら、【斬追】か【転送】で一葉と双葉を連れて手伝いに来なさい!」
ZEROはそれだけ言うと、新しい特殊能力をひっさげて、【アダモグラン】との国境付近へ【転移】した。
ZEROは、両手を前に突き出して範囲を固定すると、そのままポンと両手を叩いた。
瞬間、その範囲の空気が消え去った。
時間にしておよそ10分。
その能力をZEROが解いた。
それを隠れ家から見ていた詩が息を飲んだ。
「……なんですか。流石は伝説の魔女……無敵じゃないですか!」
ZEROが固定した範囲は、帝国【アダモグラン】の4分の1を占めていた。
詩は、【千里眼】で見ていた。
その範囲全ての生物が窒息により息絶えるのを……。




