表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
16/253

あ、これ駄目なやつだ……

 前回の転生で、私は、どうにもならないことがあることを知った。

 でも、心のどこかで『これからの転生生活がそんなに厳しいことにはならない』と思っていた部分はある。

 その理由は、万能魔法【自己強化再生】があるからだ。

 これがあれば、どんな傷でも完治するし、捕食者や敵から身を守ることが可能だ。

 動けない植物に転生しても、自己強化再生を使用して、のんびり一日を待てばいい。

 よっぽどの強者に会うか、よっぽどの弱者に転生しない限り、一日生き延びるくらい簡単になったと思っていた。

 しかし、世界は、非情でとても残酷だ。

 私は、痛感した。

 一日生きることが、こんなにも辛く厳しいことを……。

 一日生きられることが、どんなに幸せで尊きことなのかを……。


 私は、両親に抱かれながら、狭い家の隅っこで体を震わせていた。

 体は、震えが止まらず、呼吸も洗い。

 ただ、体の両側から感じる両親の温かみが有難かった。

 人前で転生をしたのに、両親の反応が無いのを不思議に思ったが、すぐに状況を理解できた。

 両親も、私と同じように全身を震わせ、呼吸が荒かった。

 意識が朦朧としており、ただ、私を抱きしめるという行為だけをしている状態。

 私は、すぐに頭に意識を集中させて歩みを視た。


 ・部族の国【ガラッパ】の小さな村に生まれた女の子。

 ・皆が普通に暮らしていたが、ある時、原因不明の奇病に村の青年がかかった。

 ・その奇病は、伝染性があり、あっという間に村中に広がった。

 ・祈祷師の祈りもむなしく、かかった人は、全員死んでいった。

 ・彼女も両親も、その奇病にかかってしまい、神に祈りをささげていた。

 ・しかし、一向に良くならず、病により体が蝕まれて、死に至った。


 ああ、くそ!

 まだ、医療技術が発達していない国に来てしまったらしい。

 寒気が止まらず、喉の奥がかゆくて、呼吸がしづらい。

「はぁはぁはぁ……」

 とりあえず、自己強化再生を使って回復しないと……

「はぁはぁはぁ……」

 あれ?

「はぁはぁはぁ……」

 一向に良くならないんですけど……?

「ぅ……あっ!?」

 もしかして、自己強化再生って外傷にしか効果ないんじゃないの?

 こういう病気とか、ウイルスが原因の症状には、効かないんじゃないの?

 だとしたら、まずい!

 このままだと、間違いなく近い未来に死が見える。

 私は、急いで月詠の知識を掘り起こして確認する。

 月詠も魔女とはいえ、元は普通の女の子だ。

 病気にならないはずがない。

 ならば、月詠は、どうやって病を治していたのか?

 それを確認したかったのだ。

「……ああ、これ駄目だ」

 月詠の知識を確認して、途方に暮れる。

 月詠は、ゼロから教わった万能薬【魔女の秘薬】を飲んで病を治していたのだった。

 当然だが、その秘薬の作り方が分からないわけではない。

 ただ、時間が無いのだ。

 【魔女の秘薬】は、材料を集めるだけで、3か月、更にそこから、製作に1か月かかる。

 合計4か月の作業だ。

 月詠も、もしもの時のために、暇を見つけては作っていたようだ。

 作り置きしておかないと、いざというときに意味がないからだ。

 知識しか持ち越せない魂の状態では、薬の作り置きなんてできるはずがない。

 ここにきてまさかの【自己強化再生】の欠点だった。

 病死した肉体に転生した場合の抵抗策を、私は何一つ持ち合わせていない。

 そして……。

「ヒュー、ヒュー……」

 私の両側で私を抱き合抱えてくれている両親の呼吸が短くなっていく。

「あぁ……、駄目だぁ。逝っちゃだめだよぉ……。この子、まだあんたたちに伝えてない言葉があるんだよぉ……」

 私は、他人を助けるすべを持っていない。

 昆虫人の時は、戦争なんだからと特に気にもしなかった。

 実際、私が転生した本人も仲間が死んだことに対して、悲しいと感じてる余裕すらなかったみたいだった。

 だけど、この子は違う。

 両親に生きてほしい。

 大好きな両親に、自分の分まで生きてほしいと、神様に願って死んでいった。

 ごめんよぉ……、神様はむりょくだったよ。

 涙が溢れる。

 ああ、転生して2度目の涙だ。

 私は、神様の魂だ。

 なのに、願いを叶えてやることもできないのか……。

 いや!せめて最後に!!両親にこの子の言葉を伝えることだけはできるはずだ!!!

 息も絶え絶えで言えなかった、この子の最後の言葉を!!

「お母さん……お父さん…………、生んでくれてありがとう。はぁはぁ……お父さんとお母さんの子で、私は幸せでしたぁ。本当にありがとおぉ……」

 この子の最後の感情は、辛いでも苦しいでもなかった。

 あったのは、感謝。

 両親への圧倒的な感謝だけだった。

「…………」

 私が気が付くと、両親の呼吸は止まっていた。

 暖かかった両側が、だんだん冷たくなっていくのがとても恐ろしかった。

 頭では、その意味を理解しているが、この子の知識が認めたくないのだろう。

 ちらりと両親を盗み見ると、真っ白い顔をして目をつぶっていた。

 その表情はとても穏やかで、笑みを浮かべていた。

 私の最後の言葉を朦朧とした意識の中でも聞いてくれていたんだろうか?

 だったら、少しは私も役に立てたのかな?

 私の意識も朦朧とし始める。

 ……次の目標が決まった。

 病死を回避する方法と、他人も治すことが出来る方法を覚えること。

 やれやれ、やっぱり生きるって大変なことなんだね。


 その日、流行り病で【ガラッパ】に存在した小さな村は滅んだ。

 流行り病の原因は、『ウイルス』……。

 彼らも、また生きるために、村人へ感染している。

 本当に、生きるということは簡単ではない。


 <今回の転生先で得たもの>

 ・【ガラッパ】の知識。

 ・無償の愛。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ