帝国【サーベルアダモ】
「過去の私へ
さて、この手紙が読まれているということは、きっと【木草家】のお座敷で食事をご馳走になる前だと思います。
今回、私が貴方宛に手紙を出したのには、理由があります。
まず、これからの転生についてです。
これから、貴方の転生は、ほぼ紀元前に固定されます。
理由は、残念ながら未来が変わる恐れがあるため、教えることが出来ません。
しかし、やることだけは、教えることができます。
貴方は、これから【ZERO】ちゃんを導く師として、帝国と戦うことになります。
今、これを書いているのは、帝国【サナルアダモ】に攻め込む数時間前です。
私の仲間といえるのは、【ZERO】ちゃん、【双葉】ちゃん、【一葉】ちゃんの3人だけですが、この3人と私で【サナルアダモ】を落とします!
手紙は、【双葉】ちゃんに託して、生まれたばかりの赤ん坊を抱いた女性に出会ったら、こそっと忍ばすようにお願いしておきます。
ふふふ、今度【双葉】ちゃんに会ったら、ショートケーキをご馳走してあげてね!
さて、これからが本題です。
私達が、帝国【サナルアダモ】を攻めるに当たっての懸念は、【サナルアダモ】に増援が来ることです。
一番の隣国である【サーベルアダモ】からなら、2日もすれば増援が来るでしょう。
ただの一般兵ならば、私たちの敵ではありませんが、参謀長だけは話が別です。
貴方も知っているでしょうけど、5つの帝国の参謀長と、5つの帝国を纏め上げる大総統閣下だけは、別格なのです。
はっきり言って、【ZERO】ちゃんや私でも持て余すほどの強者だと思います。
さて、ここまで言えばもう分かりますよね?
……頼んだわよ、私!!」
「任されたわ、私!!」
私は、手紙をぐしゃっと握り潰すと、にやっと笑った。
今回の私の役目は、【サーベルアダモ】の参謀長であるあの男の足止めをすること。
いや、足止めだけじゃ駄目だ。
足止めだけじゃ、この里は間違いなく滅ぶ……。
それは、この赤子を見捨てることと同じだ。
私の突然の行動に目を丸くしている旦那さんの腕の中で、赤ん坊は無邪気に笑っていた。
……さっき、覚悟を決めたばかりだろ私!
甘い考えは捨てろ!
これは、戦争だ!!
命の取り合いなんだ……。
私は、大きく息を吸い込むと、カッと目を見開いて気合を入れた。
話し合いで解決できる相手ではない。
それは、先ほどの老婆と参謀長のやり取りで分かったことだ。
私は、守るために、人殺しをします。
この里を!この人たちを!この赤ん坊を!この一族を!!
守るために!!!!!
「さて、準備をするか……」
私は、彼らの見ている前で【変身】を使って、いつもの幼女の姿になった。
「!?」
「充さん、この体に合うタイプの巫女装束を用意してもらえないかしら?」
「え?ええ!?鈴蘭さん!?」
「そう、鈴蘭は仮の姿。実は、私は【木草樹】様より遣われた正義の使者なのよ……なーんてね、驚いた?」
もう、色々と考えるのも面倒だ。
この赤ん坊が、無事に育つ土壌を作り上げた。
あとは、本気でやるための準備をするだけだ。
動きやすい服と、ご飯。
それさえあればいい。
「ああ、ああ、そういうことでしたか……。いやはや、只者ではないと思っていましたけど、まさか木草樹様の使者だったとは……。本当に色々とお世話になりました」
……旦那さん、信じちゃったよ。
「すぐに、サイズの合うものを用意させます。では、私は大婆様へ、このことをお伝えしてきますので、では!!」
旦那さんが、慌てて走っていく音が聞こえた。
なんか、色々と都合のいい感じに物事が動いてくれたみたいだ。
私は、その後、これでもかってくらいのご馳走を用意していただいた。
どれもこれも、美味しくもどこか懐かしさを感じる味だった。
そして、食事を終え、【木草家】の方々に別れとなった。
「鈴蘭、あんた、この後、行くのかい?」
敢えて、私の出発を一人で見送る老婆。
いや、先ほどの食事の時にお互いの自己紹介は済んでいた。
この老婆こそ、【木草家】の現当主【木草 紅葉】だったのだ。
「ええ、十分なお礼をいただきました。ありがとうございます」
「はぐらかすんじゃないよ……。行くんだろう【サーベルアダモ】へ?」
「…………ええ、潰します」
「……そうかい、じゃあ、この老いぼれも行くとするかな」
私は、嫌そうな顔で紅葉さんを見るが、それを気にもせずに老婆はこちらへ歩いてくる。
「ふん、なんだい、その顔は……。これでも少しは役に」
「立たない!迷惑!!」
私は、それだけ言うと、【サーベルアダモ】まで伸ばしておいた【魂糸】の先へ【転移】した。
「老人は休んでなさいよ……」
突然、街中に現れた幼女に慌てふためく兵隊達。
街中といっても、【木草の里】へ攻め込もうと準備をしていた兵隊達の真っ只中だ。
当然、巫女装束に気がついて、こちらへ銃口を向ける。
「いつだって時代を動かしていくのは、若者なんだから!!」
私は、【自己強化再生】を掛けると、銃口を向けた兵士へ向かっていった。




