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一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
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不可侵条約

「うわぁ~……。実物で見たほうが大きく感じるわねぇ……」

 森の中を歩き、里へ出て、転生体の家に着いた頃には、辺りはすっかり明るくなっていた。

 私は、すやすやと気持ちよさそうに眠る赤ん坊を抱いたまま、大きなお屋敷の前に立っていた。

 ここが彼女の生家でもあり、この里を治める一族【木草家】の屋敷だ。

 【歩み】で視ていたので、でかい家だとは知っていたが、実物をみるとあまりの大きさに圧倒される。

 これ、でかい遊園地のランドくらいあるんじゃないかな?

「さてと、私がまた転生するまでに、この子をなんとかしなくちゃ……」

 私は、赤ん坊の顔を見つめた。

 なんせ、この時代には、いつでも手を差し伸べて助けてくれた庭鳥さんも、大親友のヌメっちもいない。

 頼れると言ったら、鈴ちゃんくらいしかいないけど、先ほどの戦火を見ると、それどころじゃないだろう……。

 私は、鈴ちゃんに修行を課した後に4~5回ほど、紀元前に転生したことがあったけど、残念ながら寿命で死んだ昆虫だったり、鈴ちゃんが生まれる前だったりと、タイミングが悪くて会えていない。

 だから、正直、なんであんなことになっていたのかチンプンカンプンだ……。

 なんとか、この屋敷でこの赤ん坊を育ててもらわないと……。

「……千鳥?」

 突然、掛けられた声に後ろを振り向く。

 そこには、ひょろっとした背の高い男性が疲れ切った顔で立っていた。

 ちなみに【千鳥ちどり】というのは、この転生体の女性の名前だ。

 そして、私はこの男性に見覚えがあった。

「良かった……。探したんだよぉ!!」

 そう言って泣きながら、私を抱きしめる男性。

 千鳥の【歩み】を再度確認する。

 ……間違いない。

 この男性が、千鳥の幼馴染で旦那になった【木草きそう みつる】だった。

「ごめんなぁ……、ごめんなぁ……、僕に力が無いから、君にばかり苦労をさせて……」

「あー……旦那さん。悪いんだけど、人違いだよ。私は、【千鳥】じゃない……」

 旦那さんが私の顔をまじまじと見る。

「あ、……あれ?さっきは……あれ?ああ!すっ、すみません!!ちどっ、私の妻に良く似ていて!勘違いしてしまって!!」

 慌てて私を離して距離を取る旦那さん。

 先ほど、私を抱きしめた時に【変身】で顔を変えさせてもらった。

 下手に【千鳥】自身が生きていたり、中身が別人だと説明するよりも、始めっから別人設定の方が色々と都合がいいと判断したからだ。

 神様が一日だけ生き返らせてくれたと説明するのもめんどくさいし、木草樹様に確認を取ってみようなんてなったらもっと困るしね……。

「貴方は、千鳥さんの旦那さんですか?」

「……そうですが、貴方は?」

「私は、鈴蘭すずらんと申します。昨夜、里の山にて千鳥さんから赤ん坊を取り上げた産婆でございます」

 そう言って、ぺこりと頭を下げる。

 よしよし、上手い具合に話を持っていくことが出来たぞぃ!

 今回の私は、旅をする女性って設定でいこう!

「千鳥から!?」

「ええ、彼女は、産気づいておりましたので、私が取り上げました。残念ながら、彼女は、赤ん坊を産んで亡くなられましたが……」

 旦那さんが、私の言葉にガクリと膝を折る。

 ……うん、少し反省。

 ちょっと、配慮が足りなかったかな。

「おやおやおやおや!!!!これは、これは、良い事を聞いてしまいましたな!!」

 その時、突然、道の先から来た青年が大きな声を上げた。

 立派な帽子に軍服に階級章……。

 明らかに里の者ではない服装だった。

「これは、大総統閣下もお喜びになられますな!【木草の巫女】が死んだとなれば、この里は加護を失う!!となれば、つまり……我が帝国の支配下に加わるしかないと!!」

 青年の後ろには、同じような軍服を着た兵隊が何十人も控えていた。

 こいつ、間違いなく帝国【アダモグランディス】の兵隊のようだ。

「聖域で何をのたまうかねぇ……、このジャリガキが……」

 青年の声を高らかにして始めた演説のような語りを遮り、巨体な老婆が屋敷の門を開けて姿を現した。

 老婆は、辺りを見回して、兵隊と私達を確認すると、その間に割入って、兵隊の青年に紫煙を吹きかけた。

「ここは、聖域だ。木草樹様の御膝元だよ……。絶対不可侵領域だ!!ばちが当たるよ……」

「ふん!あんな大木、神でも何でもないわ!我らが神はただ一人!!」

「「「「「 「 アダモゼウス様!! 万歳!!! 」 」」」」」

 青年の言葉に続いて、兵士たちの合唱が辺りに響く。

 木草樹を祀る【木草家】と、アダモゼウスを崇める【アダモグランディス】の兵隊。

 主神が違うから、争いが生まれるのも仕方がないだろう……。

 一歩も引かない老婆と青年だったが、しばらくの後、フッと小馬鹿にしたように笑って青年が一歩引いた。

「タバコ臭くて敵わないな……。明日、我らの軍は、貴方の屋敷を訪れます。いい返事を期待しておりますよ?」

「フン!【木草の巫女】は、まだおるわい!!【木草の巫女】がいる限り、聖域に手を出さぬ約束、そちらもわすれるんじゃないよ!!!」

 青年は、兵隊を引き連れて【木草家】の前から姿を消した。

 老婆は、完全に兵隊の姿が消えてから、私を見降ろしてこう言った。

「さて、説明してもらおうじゃないか……。あんた、千鳥のなんなんだい?」

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