お空の旅
何処までも広がる水平線。
程よく気持ちのいい風。
快晴の空。
私は、青色の中を飛んでいた。
今回、私は運良く『ドス子ちゃんを庭鳥さんへ引き渡して3年後の時代』に転生した。
寿命で亡くなった鳥へ転生したため、【変身】を使用することが出来なく、特にやる事も無かったので、せっかくだから様子を見に行こうと、庭鳥さんの住む島【メフィスト】を目指していた。
【自己強化再生】を掛けた体は、グングン景色を置き去りにして、前へ進んでいく。
体が羽になったようだとは、良く言ったものだと感心する。
鳥の体は、本当に軽くて、このまま何処までも飛んで行けそうだった。
後、数分もすれば、苦王の島【メフィスト】を視界に捕らえることが出来るだろう。
苦王の島【メフィスト】。
言わずと知れた、庭鳥さんが魔女を務める国だ。
この島は、【木草界】の最北東に位置する小さな島で、人口は数えられるほどらしい。
その島で頂点に君臨するのが、苦王【リュンクス】。
噂では、いつもキツネのような仮面をかぶった男性らしい。
……うん、私、この人に会ったことあるよね。
あれは、忘れもしない2度目の転生の時……。
空間を切り裂いて、しかも時間を止めてという、私には不可能な2つの魔法を使用して、庭鳥さんと一緒に現れた男性。
あの時に、確か庭鳥さん自身も『リュンクスちゃん』って呼んでたもんね。
ははぁ、この世界で【巣作 蜘蛛】に並ぶ、伝説的な強者となる人でしたか……。
【巣作 蜘蛛】が語り継がれる伝説ならば、【リュンクス】は生きた伝説である。
なんせ、私が転生した一番先の未来でも生きていると言われていたもの。
苦王と呼ばれるようになったのも、あそこを侵略しようとした【超越者】達がことごとく破られ、苦しめられたからだと言われている。
……あんな【超越者】を、ことごとく破ったとか嘘だと思いたい。
……まぁ、本当なんだろうけどね!
だって、私、見てるもの!!
不可能魔法を使用して訪れた二人の化け物を見ちゃってるもの!!
グラッ
おっと!
あぶない、あぶない……。
考え事に集中して為、バランスを崩してしまったようだ。
慌てて思いっきり羽ばたいて、風を切るようにして、姿勢を調節する。
……さて、苦王【リュンクス】、どんな人物なのだろう?
こちらから、庭鳥さん側に会いに行くのは、初めてなので、少しドキドキする。
そんな時、ようやく視界に小さな島の姿が見えてきた。
おお!あれが、【メフィスト】かぁ!!
と、思った瞬間、目の前にメイドさんが現れた。
「しっ!!」
メイドさんは、短い気合の入った声と共に、両手に握った短刀を振るう。
それを、私は慌てて避ける。
「おっ、やりますねぇ……」
軽い感じのメイドさんとは違い、私は慌てていた。
まぁ、何故か、いきなり斬りかかられたら誰だって慌てると思うけどね!!
上空へ思い切り羽ばたいて、メイドさんから距離を取り、メイドさんの姿を確認した。
メイドさんは、そのまま海へ落下していったが、途中で姿を消した。
「!?」
背中に嫌なものを感じて、慌てて身を翻す。
ザシュ!
くうう、いったぁああ!!
羽の一部を斬られてしまったようだ。
すぐに、【自己強化再生】で羽が生えて /
メイドは、仕留めた鳥を空中で掴むと、島へ向かって【斬追】の能力を使用した。
島では、庭鳥とキツネの面をかぶった男が庭で紅茶を飲んでいた。
「ししょー!今日は、焼き鳥ですよー!楽しみにしといてくださいねー!」
メイドが、面の男へ、そう声を掛けた。
「おーう。……あいつも、最近になってようやく明るくなってきたなぁ。ここに来たばかりの時は、ずっと後悔ばかりしてたもんなー。いやー、元気になってよかったよ」
「そうでしゅねぇ……。それにしても、【見敵必殺】の30%を引くなんて、本当に運がいいでしゅねぇ……。悲しくなってきましゅよ……」
ちらりと、メイドが持っている鳥を見て、大きなため息を吐く庭鳥。
このメイドが所持している特殊能力【見敵必殺】は、30%の確率で対象を【即死】させる恐ろしい効果を持っている。
卵は、 運 悪 く その効果により即死してしまったようだった。
卵は、気が付かなかったようだが、このメイドこそ、3年後のドス子、その人である。
リュンクスと庭鳥が住む家の使用人として、リュンクスの弟子として、とても幸せに暮らしている。
「今晩は、腕によりをかけて料理を作りますね~!」
その日の晩御飯は、少し豪華なディナーとなった。
何故か、庭鳥は、鳥料理に一つも口を付けなかったようだったが……。
アダモゼウスが回収に来るまで、残り73年。
<今回の転生で得たもの>
・今後、二度と【メフィスト】に近づくものか!という誓い。




