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一日一転 =日替わり転生生活=  作者: 青依 瑞雨
一日一転 =日替わり転生生活= 本編
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【ZERO】

 私は、【転送】を使用して、帝国の軍隊からバーベキューに使う調味料を拝借してきた。

 普通に魔法が使えるようになっていたので、ついでに全帝国へ【魂跡】を残してきてやった。

 これで、いつでも【転送】で、各帝国へ行くことが出来るようになった。


 香ばしい肉の焼ける良い匂いが、胃袋を刺激する。

「ふむ、こんなもんかな?」

 こう見えて、私は、料理がものすごい得意だ。

 というのも、食というものは、全ての生命体が必ず行わなくてはいけない行為だ。

 野生生物は、丸呑みやそのまま生で食べる場合がほとんどだが、人は違う。

 必ず、調理という工程を得て、食材をよりおいしくして食べるのだ。

 私が今までに、転生してきた【人】は、数知れず。

 そのほとんどが、何かしらの料理が出来ていたし、中にはシェフの職業の人もいた。

 その人達全ての【歩み】を持っているのだと言えば、どれだけ得意か分かるだろうか?

 古今東西、木草界に存在するありとあらゆる料理が出来ると言っても過言じゃない。

「ふっふっふ、私の料理は美味いわよー!」

 私は、完成した料理を早速、鈴ちゃんへ振る舞った。

「わっ、わっ、わー!!!なにこれ、なにこれ!!」

 何やら、目をキラキラさせて、思いっきり肉にかぶりつく。

 うん、良い食べっぷりだ。

「うわ、うわ!!すっごく、美味しい!こんなの、初めて食べたよ!!」

 まるで料理を飲み込むような勢いで、食べ続ける鈴ちゃん。

 ああ、そっか。

 兄貴の【歩み】を視た時に、思い出したんだけど、この時代の国民は、ほとんど肉が食えない。

 兵士に全部美味しいものが流れていくから、国民は質素な食べ物だけしか口に出来ないのだ。

 初めて食べる肉は、私の調理によって、最高の料理となっている。

 美味くないはずがない。

 そりゃ、がっつくか……。

「よしよし、どんどんお食べ!」

 私は、その気持ちのいい食べっぷりに嬉しくなって、どんどん鈴ちゃんの皿へおかわりをよそったのだった。


 食事も終わり、一服したところで、そろそろ私の転生時間が近づいてきた。

「さて、そろそろお別れの時間かな?」

 ぼんやりと僅かに眠気が出てきた。

 これは、いつもの24時間経過による転生の前触れのようなものだ。

 この眠るように転生する感覚は、何度体験しても心地よいものだと思う。

「えぇー!もう?いやだよぉ……」

 さっきまで無邪気に笑っていた鈴ちゃんが、途端に目を潤ませて私に抱き着いてくる。

「鈴ちゃん……」

 うぅ……、私はそういうのに弱いのだ。

 あ、やばい……、もらい泣きしそう……。

「大丈夫、必ずまた会えるから……。必ず会いに来るから……」

 そう言って、私は思いっきり鈴ちゃんを抱きしめた。

 鈴ちゃんの頭を抱きしめた部分から、じんわりと温かい水が染み込んでくるのが分かった。

「ううぅ。お兄ちゃんが死んじゃうの嫌だよー!卵ちゃんが行っちゃうのもやだよー!!」

 今まで、こんなに悲しい別れを経験したことは無い。

 だって、私はどんなに長くても居れて一日だけなのだ。

 たった一日だけなのに、ここまで私に心を許してくれて、別れを惜しんでくれた人物は今までいなかった。

 堪えきれなくなった涙がポロポロと瞳からこぼれる。

「ごめんね、ごめんね……」

「お兄ちゃん!卵ちゃん!!」

「鈴ちゃん……。私達は、これからお別れをするんじゃなくて、さっき出会ったんだよ。今回は、ただの始まりに過ぎないの。鈴ちゃんの名前ってね、れいとも読めるんだ……。れいって、数字の(ゼロ)の別の呼び方でね。全ての始まりの事を言うの。今回は、私達が出会う物語だったんだよ。だから、次からは、何度でも必ず会えるよ!」

「うん……、うん!!」

 私の胸の中で、何度も素直に頷く鈴ちゃん。

 私は、彼女が泣き止むまで、何度も何度も頭を撫でてあげた。


 夕焼けになって、ようやく鈴は落ち着いた。

 残っているのは、卵が残していった調味料と簡易な釜戸。

 そして、鈴の兄の遺体だった。

「……よし、出来た」

 鈴は、特殊能力【結晶保存】を開発すると、それを兄の遺体に掛けた。

 瞬間的に、兄の遺体は分厚い結晶に包まれて、何者からも侵害されなくなった。

 鈴は、卵から断片的に伝わってきた気持ちを知っていた。

 卵は、【魂糸】を鈴に刺して【魂情報】を確認していた。

 しかし、それは裏を返せば、鈴からも卵の情報を確認できるという事。

 鈴は、薄々、兄を生き返らせる行為が不可能なことを、卵の想いから感じ取っていた。

 だけど、それは、あくまで卵の意見だ。

 鈴は、卵の想いを感じ取って尚、兄を生き返らせることを諦めてはいなかった。

「魂が転生を繰り返すというのならば、いつかお兄ちゃんの転生した姿にも会えるはず……。その時に、魂を確保できれば、あるいは……」

 開発した能力を駆使して、この世の理を理解しながら、ぶつぶつと考察を続ける鈴。

 鈴は、卵が旅立ってから夕方になるまでに、以下の誓いを決心していたのだった。


 【魂糸】で遊ぶ、この土地で一年間生き抜く、それらは、当然やり遂げよう。

 それとは、別にお兄ちゃんを生き返らせる方法を模索しよう。

 卵ちゃんは、今回を始まりと言った。

 ああ、そうだとも!

 お兄ちゃんを生き返らせるための始まりだ。

 私は、この誓いを忘れない。

 この瞬間を忘れない。

 その為に、この誓いを名前に刻もう。

 今日から、私は【沢上 鈴】ではない。

 始まりを……【ZERO】を名乗る!!


 アダモゼウスが回収に来るまで、残り74年。


 <今回の転生で得たもの>

 ・【マールド】建国前の知識。

 ・可愛い弟子【鈴】ちゃん

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