【属性】 そして 【 人 】
お母様から掲示された異世界へ転生させる魂の条件とは、聖人の魂、悪人の魂、一般人の魂、超人の魂、女神の判断に任せる魂を各1個ずつだった。
まぁ、私が当然そんな条件を守るはずがない。
私は、木草樹が適当に見繕った魂に偽りの記憶を植え付けて、それぞれの【属性】の魂に仕立て上げた。
力がもったいないので、私の判断に任せられた魂に関しては、何一つ【属性】はいじっちゃいない。
そう、【属性】は……。
「フッフッフ」
こんな課題、楽しみが無かったらとてもやっていられない。
私は、10個の魂にありえないほどの女神の加護を込めた。
私からの姉や妹へのプレゼントだ。
こいつらが転生したら、とてつもない力を持つ生物となるだろう。
その生物達は、確実に姉や妹の世界の生物を減らしてくれるはず!
そうなったら、姉や妹の世界で、たびたび起こる戦争や争いも自然と少なくなるだろう。
だって、争う相手が少なくなるんだもんねぇ~♪
本当に私ってば、姉妹想いだと思うわ。
さて、では早速、異世界の魂を交換してきましょうかねぇ~♪
「……やってくれるわねぇ」
私は、交換してきた魂をすぐに転生させないで、観察していた。
あのババアからは、すぐに転生させろって言われていたから、ババアに従順な姉や、素直な妹は、もう既に碌な確認をしないまま転生させてしまっているだろう。
だからこそ、例の小細工を施したのだけど、小細工をしたのは私だけでは無かったようだ。
妹が選別した魂は、素直なものだ。
母親の言われた通りのきっちりしたものを、時間を掛けて丁寧に選別したようで、素晴らしく質の良い魂のみで構成されていた。
問題は、姉の方だ。
流石は、善と悪の感情があるだけのことはある。
「本当、そういう泥臭いところが嫌いじゃないわ、姉さん」
姉が選別した魂は、聖人、悪人までは、普通だった。
だが、一般人は、やや悪人よりの【属性】で、超人は、完全な悪人、姉のチョイスした魂なんかは、超極悪人だった。
確かに、その3つの魂の【属性】について、特にババアから制約を受けていない。
だからと言って、ここまで悪人で固めてくるとは、恐れ入った。
妹たちのお手本になければならない焦りから、自分よりも優れている妹の私に、姉さんが少し嫉妬しているのは常々感じていた。
だけど、まさかここまでの悪意を向けてこられるとは……。
「本当に、嬉しいわぁ~♪」
思わず、顔がにやけてしまう。
嫉妬とは、劣等感を抱いている者が、優れた者を妬む行為だ。
私は、人に嫉妬されるのが堪らなく好きだ。
だって、それは私が優れている証となるのだから!
でも……、急速に姉を守ってやろうって気持ちが無くなっていった。
……あいつは、もうどうでもいいか。
「さてと……」
私は、異世界の魂それぞれに、【不老】の能力を時間経過で開花させるように細工した。
更に、生まれてすぐに様々なことが分かるようなオプションも付けてしまおう。
おまけで、悪人には【啓示】を付けちゃおう!
異世界転生とは言っても、あくまで浄化された魂なので、前世の記憶とかは無い。
よく、馬鹿は死ななきゃ治らないと言うが、それは間違いなのだ。
馬鹿は死んでも治らないが正解で、魂は浄化しようが、循環させようが、基本的な属性と呼ばれるものは変わらない。
姉の【剣聖界】の属性は、【天】、【地】、【村】、【町】、【市】、【朝】、【昼】、【夜】、【春】、【夏】、【秋】、【冬】の12種類。
妹の【龍神界】の属性は、【聖】、【魔】、【火】、【水】、【木】、【金】、【土】、【風】、【雷】、【無】の10種類。
そして、私の【木草界】の属性は、【晴】、【雨】、【雲】、【風】、【雷】、【雪】、【蟲】、【木】、【死】、【悪】の10種類だ。
つまり、【悪】属性の魂は、生まれ変わっても【悪】属性なのだ。
属性とは、性格を形作る根本的なもの。
どんな立派な親に育てられても、【悪】属性は、【悪】人になる。
それは、どうやっても変わらない世界の真理なのだ。
ちなみに、この属性で姉も妹も魂を選んでいた。
そして、私は属性関係なく選んで、強制的に改良して手渡したわけだ。
「ふぅ……」
最近、女神としての力を使ってばかりでしんどい。
後は、適当なやつにこの10個の魂を入れてしまおう。
そして、気が向いたら、この悪人の魂の転生者を利用して、生物を虐殺して、魂不足でヒーヒー言っていた木草樹の手助けでもしてやろうかね。
まぁ、姉と妹の魂の選別を待っていたせいで、あれからかなりの時が過ぎちゃっているんだけどねぇ~。
……それにしても、お母様の頭は大丈夫なんだろうか?
十、百、千と、私の姉達が創ってきた沢山の世界を見てきているが、全ての進化の先は、いつも一緒だ。
全ての生物は、進化して必ず【人】へ集約する。
ウサギという動物が進化して、【エルフ】と呼ばれる人になった。
モグラという動物が進化して、【ドワーフ】と呼ばれる人になった。
魚が進化して、【魚人】【人魚】と呼ばれる人となった。
【人】とは、手を器用に動かして道具を使い、言葉で意思の疎通が可能な、高度な知識を持った生物の総称だ。
つまるところ、種族の違いはあれど、【エルフ】も【ドワーフ】も【人魚】も全て【人】であるのだ。
もしも、地球に【マルチアナ】がちょっかいを掛けなければ、恐竜が【人】になっていたとされている。
もう既に、結論は出ているのではないだろうか。
いくら世界を創ろうとも、全ての生物はいずれ【 人 】となる。
なのに、未だに女神を生み出して、世界を創ることを強制させている……。
もしかして、お母様は、その先を見たいのだろうか?
全ての生物が【人】となった世界のその先を……。
私達とは見た目がえらくかけ離れたお母様。
体毛は無く、耳はとがり、白目と黒目部分が逆転していて、指は3本、鼻は無く、緑色の肌。
【人】の先が、お母様のような新生物だと望んでいるのだろうか?
私達女神が、お母様のような存在をいつか生み出すと期待しているのだろうか?
「ああ、なんて滑稽なのでしょう……」
独りぼっちの生命体のお母様。
仲間が欲しくて、私たちに期待しているお母様。
可哀そうな可哀そうなお母様。
唯一無二のお母様。
「唯一無二なんて、いらないわねぇ~♪むしろ、それは私にこそふさわしい言葉だわぁ~♪」
私は、お母様を消滅させる姿を想像して、笑みを浮かべた。
それは、堪らなく素敵な妄想だった。




