女神のうたた寝
「……んっ」
パチリと目を覚ます。
……どうやら、椅子に腰かけたまま、うたた寝をしてしまったようだ。
「ふわぁ~あ……」
ガチガチに固まった体をほぐすために、大きく伸びをする。
「ふぅ~……」
どうやら、昔の出来事を夢で見ていたようだった。
私と木草樹が力を与えたあの二人は、無事に結婚して夫婦になり、十人もの子供を儲けた。
また、木草界で語り継がれるほどの伝説の一族となったのだから、私の目論見通りと言ったところだろう。
伝説の格闘家【巣作 蝉】と、その妻【旧姓:芽吹 双葉】。
そして、その十人の子供達。
本家【巣作家】と分家【木草家】、【浜崎家】、【華吹家】、【沢渡家】、【倉坂家】、【神楽家】、【沢上家】、【芭蕉家】、【御堂家】だったわね……。
くっくっく、重要な転生候補先の名字くらい覚えとかないとね。
私は、机の上に置いてある2つガラス瓶の中に入っている魂を見た。
一つは、私のカス魂が成長したものだ。
そして、もう一つは、【芽吹 双葉】の魂である。
そう、これがカス魂に人格と一般知識を植え付けるために用意した魂である。
私のカス魂の成長は、非常に遅い。
とてもじゃないが、【芽吹 双葉】が誕生して老衰で死ぬまでの間に、成熟なんて出来なかった。
「まぁ、時間はたっぷりあるんだから、待ちましょう……」
コンコン
突然、部屋のドアをノックされた。
「アーゼル、お母様がお呼びですよ」
「分かったわ、姉さん」
……あのババア、また何か用なのかしら?
私は、椅子から立ち上がり、伸びをすると、廊下へ出た。
すると、そこには姉の【シャルネロッテ】と、双子の妹【サウラウス】がいた。
「あら?また、私達姉妹だけのお呼び出しかしら?」
「そう……みたいです……、アーゼル姉様」
「お母様が待っておられます、早く行きましょうか、アーゼル、サラス」
私達姉妹は、お互いを愛称で呼ぶ。
私が、アーゼル。
姉さんが、シャロ。
妹が、サラスだ。
生まれた頃に、姉さんの提案で決めたことだが、何気に私は気に入っている。
つーか、ババアが考えた私の名前がそんなに好きじゃないってこともあるんだけどね……。
母親の部屋に向かう途中で、私は心を閉ざして、物事を考えられないようにした。
あのババアは、私達女神の心を読む。
もしも、BBAなんて思っているのを読まれたら、消滅は免れないだろう……。
だから、お母様の前に立つ前に心を閉ざす必要があるのだ。
「着いたわよ、準備は良い?」
「はい」
「大丈夫です……」
コンコン
「……お母様、【シャルネロッテ】、【アダモゼウス】、【ラウサウス】、参りました」
「入りなさい」
【シャルネロッテ】が、ドアを開け、3人が中に入った。
「お母様、言いつけ通り、妹達を連れて参りました」
「ご苦労様。さて、まずは、あんたたちの世界の現状について聞かせなさい」
「はっ、はい!まずは、私の【剣聖界】から……」
説明中…………。
「【木草界】は、順調です」
説明中…………。
「【龍神界】は、戦争が終わりましたが……」
説明中…………。
「ふむ、どうやら【木草界】以外は、碌でもないようだねぇ……」
「はい、申し訳ありません!」
「ごめんなさい、お母様……」
「まったく!……おや?なんだい、【アダモゼウス】その目は。何か言いたいことでもあるのかい?」
「いえ、何のことでしょうか?私のこの目は、生まれつきですよ。そう、お母様が創ったんじゃないですか?」
「……フン、そうだったねぇ~。やれやれ、もう少し可愛らしく作っとくんだったよ」
「それぞれの水晶界の様子を知りたかったのですか?では、もう帰っていいですか?」
「そんなわけないだろう?様子を聞いたのは、ついでだよ。実はちょっと、思いついたことがあってねぇ~」
「なんでしょう……お母様……」
「あんたたちの世界から魂を5つずつ、それぞれの世界へ留学させな!そして、どうなるかを、レポートに書いて、私に提出すること!いいね!」
「はい、承りましたわ、お母様!」
私は、部屋に帰ってきて一息ついた。
やれやれ、心を閉ざすのは毎度のことながら疲れるわね……。
私は、早速ババアから言い渡された課題をやろうと、木草界の中へ入り、木草樹の元へ向かった。




