魂の育成
今回から少しの間、時空と場面が変わります。
「ふぅ~む……」
水晶玉の置いてある部屋の中で、目の前のガラス瓶に入っている小さく青い炎を見つめていた。
「とりあえずは、成功みたいね……」
安定して燃え続ける炎を確認して、私は安堵のため息を吐いた。
これで、この部屋にいながら修行をするための、一番初めの準備が完成した。
私は、机の上にガラス瓶を置いて、椅子に腰かけた。
私は、母親が嫌いだった。
いつも偉そうに指図して、自分は奥の部屋でひたすら出産している母。
無限に増えていく姉妹達にもうんざりする。
唯一、私が心を許せるのは、一つ上の姉と、双子の妹だけだった。
優秀すぎる私は良いのだ。
今のところ、木草界は上手くいっているし、非常に安定している。
だけど、姉と妹の世界は、少々危うかった。
姉の世界では、天界と魔界の戦争が始まったらしい。
妹の世界では、聖属性と魔属性の戦争が始まったらしい。
私達の母は、戦争を最も嫌う。
戦争が始まった二人の世界を、私の前で思いっきり貶したのだ。
そして、私を思いっきり褒めた。
……本当に胸糞の悪いことを平気でする人だと思った。
私を褒めるの良い。
だって、私は優秀すぎるのから、仕方がないものねぇ~。
……でも、姉や妹を引き合いに出すのは違う!
私が優秀すぎるだけであって、姉や妹が劣っているわけでは無いのだ。
私から見れば、他の姉妹達よりもよっぽど上手くやっている。
でも、感情を与えられた私達3人は、比較対象が私達しかいないため、いつも色々なことで引き合いに出されて比べられてしまうのだ。
「ふぅ……」
心が憂鬱になっていく。
この私が住んでいる世界は、母である【マルチアナ】の為の【マルチアナ】だけの世界なのだ。
それ故に、【マルチアナ】から生み出された私達【女神】は、一切逆らうことが出来ない。
もし、反逆しようとすれば、世界から存在自体を無かったことにされてしまうだろう……。
本当にムカつく。
逆らうことが出来ないのが、本当に悔しい。
私は、あの母親に自分という優秀な存在を認識させて、姉と妹を凡骨だと理解させてやりたかった。
そうすれば、あの子達も嫌な思いすることもないだろうからね……。
だから、決めたのだ。
あの母親を殺して、ここを私の世界にしてしまおうと……。
だけど、ここは、逆らっただけで自分の存在が消滅してしまうような世界だ。
【マルチアナ】から生み出された生物では、彼女に反逆する事は出来ない。
だけど、実はこの世界にも穴があるのだ。
「……」
思わず、青い炎を見つめながら笑みを浮かべてしまった。
この世界では、【マルチアナ】から生み出された生物は、彼女に意見することも出来ない。
だけど、【マルチアナ】から生み出された生物でなければ、彼女に反逆することが出来るのだ!
……そう。
つまり、私達【女神】が生み出した生物ならば、【マルチアナ】を殺すことも可能なのだ!!
恐らく遙か先の未来になるだろうけど、水晶玉の中に住む生物が、こちらの世界へやってくる日がくるだろう……。
たかだか外の世界へ来れる程度の力ならば、きっと母には手も足も出ないはずだ。
だから、その時には、私がそいつの力になればいい。
その時の為に、私は静かに牙を研ぐ。
私は、今まさに、その牙を研ぐ手段の第二段階を成功させたところだった。
①私の魂を削り取ったカスから、知識や技術を全て吸い取る。
②その魂の状態を安定させる。←今、ここ。
③魂を成長させて、人格と一般知識を植え付ける。
④自己を持った魂を木草界で修行させる。
この瓶の中で燃える青い炎が、その安定した魂だ。
私の魂をほんのちょっぴり削り取ったカスのような存在だったが、何とか無事に成功したようだ。
後は、この魂を成長させて、人格と一般知識を植え付ければいい。
「ふむ……」
私は、重い腰を上げると、木草樹に会うために、木草界の中へ入ったのだった。




