あみだくじ
・名家【沢上】の家に生まれる。
・優しい両親の元ですくすく素直に育つ。
・5つ年下の妹が生まれる。
・両親が見ていない時に、妹が急に話し始めるのを目撃する。
・自分以外にそれを見せないように妹と約束をする。
・変わり者の妹が周囲に浮き始める。
・妹を不憫に思い、常に一緒にいる様に心がける。
・戦闘に優れた名家【沢上】の当主である父と母が戦場へ行く。
・自分と妹は、教会へ預けられる。
・教会で二人して育てられる。
・両親の力によって、閣下の嫁になることを避けられていた妹が、とうとう選ばれてしまう。
・妹を連れて、教会を出ることを決意する。
・妹を誕生日プレゼントを買ってやると騙して、教会を出る。
・運悪く憲兵に見つかる。
・妹を守ろうとしたが、抵抗むなしく、殺されてしまう。
私は、【ZERO】のお兄さんの【歩み】を視終えた。
なんというか、ものすごく妹想いのお兄さんだった。
行動の一つ一つが、全て妹の為であり、それでいて歪んだ愛情を持ち合わせてはいない。
正に兄貴の鏡のような人物だった。
「それにしても、妙よね……」
私は、転生生活を繰り返してきて、名家の名字持ちへ何回か転生したことがあった。
あまりこういう事は言いたくないのだけど、全ての生物には、生まれ持ったスペックというものが存在する。
学校のクラスなんかで、いなかっただろうか?
頭も性格も良くて、運動も出来る、完璧なやつが……。
そういうやつと、一般人との差は、吸収力の差であると、私は思っている。
同じように効率よく勉強して、10吸収出来る者と、3しか吸収出来ない者がいたとする。
10吸収出来る者は、3日勉強すれば、30となる。
3しか吸収出来ない者は、10日勉強して、やっと30となる。
この差は、7日間という時間になって表れる。
片方は、3日勉強して、7日間遊んだとしても、10日間みっちり勉強したやつと同じ点数を取れる。
これが、出来る者と出来ない者のスペックの差だ。
いずれは、時間が解決してくれるが、同じ時間だけ同じ作業をしていた場合、明確に差は広がっていく。
名家の連中は、このスペックが、他の者より桁違いに上なのだ。
仮に、武術を習っていなかったとしても、身体能力が圧倒的に一般人より上のはずだから、あの程度の兵士に後れを取るはずないんだけどなぁ……。
私は、この肉体のステータスを確認する。
名前:卵
性別:女性 (魂状態)
HP:11/11
MP:4804/5168
力:11
防:8
速:21
ダメだこりゃ!
思わずツッコミを入れてしまいそうなほど、貧弱なステータスだった。
だとすると、本格的におかしい……。
基本的に、この名家の連中で当主と成るべき者は、生まれついて化け物ステータスだったはずだ。
ということは、このお兄ちゃんは【当主】の素質が無いという事になる。
いや、でも確か【ZERO】も素質自体は無かったはずだけど……。
私は、【ZERO】の歩みを確認する。
「!?」
あ……れ……?
この前の転生まで確認出来ていた【ZERO】の歩みが、一切確認できなかった。
「どういうことだ……?」
私は、他の人物の歩みを確認するが、魔女【月詠】と【四檻】の歩みも、【ZERO】が関係するところが靄がかかったように、ぼんやりとしか思い出せない。
「これは、まさか……」
私は、慌てて、現代の【ZERO】である鈴ちゃんを見た。
「ん?なぁに?どうしたの、お兄ちゃん?」
鈴ちゃんは、少し恥ずかしそうに胸元を隠して、こちらに向かって笑いかけてくれた。
……歴史が変わりつつあるのか?
ぶっちゃけますと、ついさっきまで【ZERO】の歩みを視ながら、対処すれば楽勝だろ?って思っておりましたよ、ええ……。
でも、そう簡単にはいかないらしい。
私は、指先から【魂糸】を出そうと試みるけど、どうにも上手く形作れなかった。
サァーっと、一気に背筋が寒くなった。
未来とは、無限に伸びるあみだくじの先のようなものだと、誰かが言っていたのを思い出した。
横棒を何本か付け足して、元の未来へ戻さないと、魔法も魔女も消えてしまうかもしれない!
そして、能力拳法も……。
私自身も……。
事態は、思わぬ方向へ向かっているのを感じた。
沢上 鈴を助けたことによって、【ZERO】が生まれないかもしれなくなっていたのだ!




