その願い聞き入れようぞ……
神様、お願いします!
僕はどうなってもいいです……。
今、ここで死ぬことになっても後悔はしません……。
だから、だから!
どうか、妹を助けてください!!
どうか、どうか……お願いします……。
私は、転生してきてすぐに、転生体からメッセージを受けっとった。
これは、何回か経験している肉体の記憶。
所謂、未練というやつだ。
どうしても、生きているうちにしたかったことへの強い想いが、肉体に【魂跡】として現れるのだ。
前には、自分の意識を乗っ取られて、ストーカーを殺したこともあったけど、今は、そんなことを犯さないくらいに【魂】を鍛えてある。
だけど……。
「なっ、なんだ、てめえ!!殺したはずだぞ!!!」
私の前にいる、どこかの軍の兵隊のような恰好をした男達を観察する。
半裸の少女に馬乗りになりながら、ベルトを外そうとしていた格好のまま、私に向かって怒鳴る太った中年男性。
私は、心を落ち着けようと深呼吸をするが、悪臭に眉をしかめた。
これは、悪人の臭いだ。
「お兄ちゃん!良かった、生きてたんだね!!」
少女のこの言葉で、冷静になろうと努めていた私の感情は、限界を迎えた。
こいつら、少女を強姦するために、少女の兄を殺しやがった!
駄目だ、許せない!!
私は、命を無駄に奪う行為が嫌いだ。
それは、私自身がする場合も、他人がする場合も含まれる。
少女の兄の命を無駄に奪ったこいつらを、私が殺す行為は、無駄に命を奪う行為になるだろうか?
そういった迷いが、先ほどの少女の声で消えた。
この兄の未練を、神様の魂である私が、聞き入れよう!!
この世界には、神様が存在するのだから……。
私は、【自己強化再生】を掛けると、少女に乗っかっていた男の首から上を吹っ飛ばした。
せめて、苦しまずに送ってやろうというのが、私の慈悲だ。
「ひぃ!?」
1人、2人、3人、4人……。
短い悲鳴のみを残して、男達を始末していく。
5人全員を始末し終えた頃には、路地裏は血で染まっていた。
赤い血だまりの中で、茫然と私を見つめる半裸の少女。
ふむ、さすがにこのまま放置はできないかな……。
「お嬢ちゃん、ちょっとついてきてもらっていいかな?」
私は、少女をお姫様抱っこすると、【転送】で【ガラッパ】へ向かった。
……着いた先は、ジャングルだった。
どうやら、まだ【ガラッパ】が出来ていないようだった
「【歩み】を見れば、分かるけど……多分、【マールド】以前の時代よねぇ……」
でも、【転送】は、成功していたので、鳥に転生して【魂糸】マーキングした時代よりかは、後だろう。
危ない危ない……。
もしかしたら、木草樹から出られなくなる可能性もあったわ~…………って、んん?
視線を感じて頭を下げると、そこには少女がキラキラした笑顔で、私の顔を覗き込んでいた。
「お兄ちゃん、すっごーい!!何、何、これ!!」
「……あー」
そういえば、なんの説明もせずに連れてきちゃったなぁ……。
とりあえず、現状を確認するために、この青年の【歩み】を視たい。
「説明は、後!とりあえず、そこの小川で血を洗い流してきなさい……」
「あ、うん!分かったよ、お兄ちゃん!!」
少女は、素直に頷いて、小川で血を洗い流す。
さて、ここまで昔だと、色々と説明するのが面倒である。
なんせ、魔法もまだ無いし、ギフトも知れ渡っていない。
「はぁ、とりあえず、この青年の【歩み】を視ておこうか!」
私は、目を閉じて、意識を集中した。
その数秒後、私は思わずブゥッと息を吹き出してしまった。
まだ、【歩み】は、視ている途中である。
じゃあ、なんで【歩み】の途中で、私は吹き出してしまったのかというと、この青年の妹の名前に聞き覚えがあったからだ。
この世界で知らない者のほうが少ないんじゃないだろうか?
しかも、私は過去に、この娘へ転生したこともある……。
私は、水浴びで身を清めている少女へ視線を移す。
ああ、よく見れば、確かに彼女だった。
幼く無邪気な表情の為、私は、それに全然気が付けなかった。
この青年の妹の名前、それは【沢上 鈴】。
全ての国の魔女達の師であり、始まりの国【マールド】を造り上げた魔女。
魔法の開発者であり、能力拳法【爆砕壊破】の開祖でもある。
彼女は、人々からいずれ、こう呼ばれることになる存在だ。
【始まりの秩序】、【ZERO】と……。




