時間跳躍を習得したわん☆
原理を理解してしまえば、あっという間だった。
「ふぅ~む……」
ボールを未来へ送りながら、放り投げる。
すると、ボールは、空中でフッと姿を消した。
「さぁて、5分後が楽しみねぇ~♪」
私は、お気に入りの椅子に腰かけ、愛おしい水晶玉を見つめる。
何度も修行をして、覚えようとしていた【時間跳躍】の原理に、ついさっき辿り着いた。
ほぼ無限に生きられる私にとって、時間というものは、あまり意味も興味もないものだった。
過去にも興味が無いし、未来にすら興味が無かった。
だって、私は、最強で何でも出来たから……。
姉妹の中でも、私より力を持ったやつなんてそうそういないだろう。
私は、母である【マルチアナ】に興味本位で作られた存在だった。
一つ上の姉である【シャルネロッテ】は、母によって善と悪の感情を与えられた女神だった。
そして、私達双子の女神は、善と悪の感情を分けて与えられた。
当然、私が悪だ!
「くーくっくっく!」
思わず、笑みがこみあげてくる。
866番目の姉が創り出した【地球】の次に、私の【木草界】が上手くいっていた。
水晶玉に剣を入れて作った、一つ上の姉の【剣聖界】。
水晶玉に龍を入れて作った、双子の妹の【龍神界】。
そして、水晶玉に木を入れて作った、私の【木草界】。
私以外の感情を与えられた女神が作った世界は、どちらもひどいものだった。
人口が爆発的に増えたせいで、世界が滅ぼうとしていたのだ。
「本当に馬鹿ねぇ~♪増えたのならば、減らせばいいのにぃ~♪」
その辺、本当に木草樹は良くやっているほうだと思う。
【超越蟲】のシステムは、私も感心したほどの出来だ。
まぁ、ただ【魔女】は、気に入らなかった。
【魔女】は、ここの縮図みたいなものだから、否が応にも自分の立場を思い出させられる。
私は、ちらりと部屋のドアを見る。
あのドアの向こうは、長い廊下に繋がっている。
そして、廊下の先にいるのが、私の母である【マルチアナ】だ……。
彼女は、何故かひたすら女神を生み出している。
そして、その女神は全員『世界を創造する力』を持つのだ。
【マルチアナ】は、女神に部屋を一つ与え、その中で世界を創らせた。
もう、何人の女神が作られたのか分からない……。
ただ、その女神たちには、感情が無かった。
それこそ、ただ世界を創りだす機能を持った人形と同じだった。
私と一つ上の姉、そして双子の妹以外は……。
私は、水晶を見つめて、ニヤリと笑う。
お馬鹿なお馬鹿な、お母様……。
気まぐれで、私に感情を与えたことを後悔させてあげましょう~♪
私は、悪。
欲望の塊だという、自覚すらある。
欲しいものは、全部手に入れたいしぃ~、願い事は、全部叶えたいのだ!
私は、お母様のお部屋が欲しい!
お姉様や、妹達が創り上げた世界が欲しい!!
フフフ、私の事を見る者が見れば、強欲と言うかもしれないけど、強欲の何が悪いというのだろうか?
私は、全てを手に入れたい!!!
ただ、それには、この私でさえ脅威と感じるお母様を殺さなくてはいけない……。
私は、卵ちゃんを思い出して、ついつい口の端が上がった。
お母様を殺すために、私はこの木草界で修行をしている。
私は、他の女神たちの様に、世界が滅ぶのを止めるために力を使ったりなどしない。
しっかりと木草樹ちゃんが人口を減らして、この世界を管理してくれているのだから、私が関わる必要すらない!
まぁ、仮にこの【木草界】が滅ぼうとしていたとしても、私は何一つ助けないけどねぇ~♪
私にとって、【木草界】とは、愛おしい世界ではなく、愛おしい修行場でしかない。
この【木草界】が滅ぶ前に、私の力がお母様を超えればいいのだ。
まぁ、でもそれも時間の問題♪
ひたすら女神を作り続けて力を使っているお母様と、力を温存しながら修行を続ける私。
いずれ、力関係が逆転する時がやってくる。
その時まで、あらゆる手段を使ってでも己を鍛えてやる!
私は、椅子から立ち上がると、手の平を上に向けて、少し待った。
数秒後、ボールが空中から現れて、私の手の平の中へ落ちた。
「よし!完璧ぃ!!」
私は、完全に【時間跳躍】をマスター出来たようだ。
「さて、後は、肉体の分裂……んっ?」
たった今、不意に木草界から、ある気配が消えた。
……これは、木草樹が界宝への力の供給を止めた?
一体なぜ?
止めたらお仕置きするって言っておいたのに……。
まさか謀反だとは思わないけど……。
「まぁ~♪木草樹ちゃんも頑張っていたしぃ~、状況次第では、許してあげてもいいかもねん♪」
私は、久しぶりに木草樹へ会いに、木草界に入ることにした。
このすぐ後に、神様の魂で遊んでいた木草樹は、母親でもある【アダモゼウス】にズタボロにされた。
【アダモゼウス】が一番嫌いな事。
それは、自分の思い通りに状況が進まない事である。
お察しの通り、時間系列は、青卵VS巣作蜘蛛のところです。




