終わりゆく国
「あ~、良かったぁ」
そう言って、紅那は笑顔でほほ笑んだ。
私は、『正直、殺されるかも……』と緊張していたので、その笑顔に面食らってしまう。
「いやいや、傲慢の魔女を仕留めそこなったと思いましたよ。良かった~、ちゃんと終わらせられたみたいですね~」
紅那は、大きく息を吐き出すとその場に座り込んだ。
どうやら、立っていられないくらい疲れているようだ。
「ん?あれ?私の正体ってバレてるの?」
「ええ、先ほどまでと気配が違います。青い光と共に一日だけ神様から復活を赦される存在。えっと、貴方様は、ギフトではありあせんか?」
ん?なんだ、そのギフトっていうのは?
魔女の知識を検索する。
なんせ、736年分もの知識があるのだ。
理解は終わっているが、咄嗟に情報が出てこない。
えーっと、……おっ!あったあった!
【ギフト】とは、この木草界において、昔から一定の確率にて発動する奇跡である。
完全に死んだ生き物が、青い光に包まれ1日だけ寿命を延ばす出来事のことを差す。
復活した生物は、全て高度な知識を持ち、生前とは比べ物にならないほどの善人になる。
人格なども変わってしまうので、神様の遣いが乗り移ったともいわれている。
うん、これ完全に私のことだな……。
なんだよ、奇跡扱いで、ものすごく有名になっているじゃないか。
うわ~私、これから一体何回転生するんだろう?
あたふたしている私を覗き込むように観察してから、紅那は、興味ありげな視線をこちらへ向けた。
「フフフ、やはりギフト様でいらっしゃいますね。もしも、あの暴君が生きていたら……もう既に私は殺されていたでしょうから」
紅那ちゃんは、クスクスと楽しげに笑う。
「いやいや、なんで殺されるかもしれないのに、そんなに楽しそうに笑うのよ?おかしくない?」
当然の疑問だと思う。
私は、死ぬのが嫌いだ。
痛いし、苦しいし、何度死んでも永遠に慣れない自信がある。
「何を言っているんですか?私は、この国を終わらせに来たのですよ?……殺される覚悟なんて、とうの昔にしてますよ」
私の疑問に、さも当然といった感じで答える紅那ちゃん。
残念ながら、私はまだ【マールド】の常識を知らない。
彼女の国では、これが普通なのだろうか?
バババババババババ!!!
上空のヘリコプターから、ロープが下ろされる。
紅那ちゃんは、それを掴みながら立ち上がると、上に向かって指で輪を作って見せた。
「では、ギフト様。その暴君のお体を一日お貸しいたします。どうぞ、お好きになさってくださいませ」
ヘリコプターが、そのまま上昇を開始する。
紅那ちゃんは、まるで猿のようなスピードでロープを登りきると、ヘリコプターの中に入っていった。
轟音と共にヘリコプターが遠ざかっていく。
ヘリコプターの大きさが砂粒くらいになって、ようやく私は緊張を解いた。
「ふぅ~。……さて、状況整理の時間だな」
私は、独り言をつぶやくと、砂漠にゆっくり腰を下ろした。
月詠が創った国【ズラーヌ】は、ついさっき【芭蕉紅那】に潰された。
彼女の不思議な力によって、国ごと月詠は殺されたのだ。
恐ろしいのは、紅那の能力である。
いくら月詠の歩みを視ても理解が出来ない。
国が一気に朽ちて砂漠になった。
人も建物も何もかも全てだ。
「ゴクッ」
口の中に溜まった唾を飲み込む。
「そりゃ、国を滅ぼした後だもんな……。そうとう消耗してるはずだよ……」
正直言って、この国の人々や月詠に同情する部分は、少なからずある。
紅那ちゃんに、文句の一つも言ってやりたかった。
だが、純粋な恐怖でとても言えなかった。
個人で国を潰せるなんて、器が違う。
この魔女の肉体で、魔女の知識を理解した、完璧な月詠状態でも、国を潰すなんて無理だろう。
暴力で国民を押さえつけていた実績があっても、国そのものを潰す実力があるようには視えない。
「……暴傷外与、奥義【豪傷撃】」
技名と共に、力を込めた右手を前に向かって思いっきり突き出す。
その瞬間に、物凄い閃光と轟音が拳より放たれた。
ズギャア!!ガガガガガ!!!
右手より生み出された力が、真っ黒な砂漠に大きな傷跡をつけていく。
砂煙が晴れた後には、底が見えないほどの大きな裂け目が、砂漠に残っていた。
「すごい威力だなぁ……」
これが5番目の魔女の実力である。
傷つける能力を付与した拳法【暴傷外与】の開祖。
ゼロが開発した拳法を、アレンジして作り上げたものである。
元々、魔法の覚えが悪かった月詠は、武術をメインに自身を鍛え上げた。
魔女の中で一番魔法を使うのが下手だが、一番の武闘派。
RPGでいうなら、殴りプリーストってのが、一番分かりやすい例えかもしれない。
良くも悪くも、この魔女のメイン武器が【暴傷外与】なのである。
「よし、この体の内にやれることはやっておこう……」
まだ時間はたっぷりあった。
しかも、どんだけ暴れても平気な黒の砂漠地帯。
「さてと、まずは【暴傷外与】を一通り確認しておこう」
月詠には、申し訳ないが、もう二度と転生できるか分からない魔女の体だ。
時間が許すまで、色々と実験させてもらおう。
その後、体が朽ちて黒い砂に戻るまで、魔女の体を堪能させてもらったのだった。
<今回の転生先で得たもの>
・魔女としての知識
・この世界の正確な歴史
・魔法の知識
・能力拳法:暴傷外与
・女王の国【ズラーヌ】の全て
今回は、ここまで!
転生先の募集を開始いたしました。
興味がある方は、下記への移動、又は活動報告の確認をお願いします。
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