魂 VS 殺人鬼
私は、【転移】を連続で使用しつつ、【魂糸】を周りに展開させる。
ボトッ……。
私の左腕が戦闘準備中に落ちる。
「マジかい!」
初撃を【転移】で上手く躱したと思っていたけど、どうやら躱しきれていなかったみたいだ。
左腕の傷口から、瞬時に【自己強化再生】で新しい腕が生えてくる。
「へぇ……、流石は魔女様だねぇ~。そんなことも出来るんだ?」
ビルの屋上から、空中を【転移】し続ける私を見上げているドス女。
とりあえず、隣のビルの屋上まで逃げて、大きな声でドス女に語り掛ける。
「あんた!いきなり何するのよ!!!まず、自己紹介をするのが礼儀ってもんでしょうが!!!」
「プ~クスクス!!なにそれ、なぁにぃそぉれぇ!!!いきなり攻撃してきた方の言葉とは思えなぁ~いぃい!!」
ケタケタケタと本当に愉快そうに笑うドス子。
もう、こいつは、私の中でドス子で決定した!!!
「それにしても……」
先ほど、ドス子は私の攻撃を紙一重で躱して、私の後ろにいきなりやってきた。
あれは、【転移】や【転送】などの魔法によるものではない。
くそ!
間違いなく特殊能力【瞬間】を使えるようになっている!!
私は、また背後から襲われても瞬時に対応できるように、一番使い慣れている能力拳法【重罪心疲】の構えを取った。
それと同時に、【千里眼】を真上から展開して死角を無くす。
【千里眼】で広がった視界に、赤い液体が滴った道や、建物や、街路樹が映った。
「【マールド】で罪人を裁くための能力拳法【重罪心疲】……。今、あのドス子に使うには、うってつけかもしれないわねぇ……」
「ふぅ~ん、そんなのもあるんだぁ!」
まるでテレポートの様に、一瞬で私の後ろに現れるドス子。
【千里眼】のおかげで、今度は対応出来た!
私は、刀を持つ両手に向かって、拳を叩き込もうと後ろ回し気味に拳を突き出す。
が……、突き出した右腕は、無残にも斬り裂かれて輪切りにされてしまう。
「ぐっ、マジかい!」
恐ろしい事にドス子は、私が【変身】して強化した肉体に、【自己強化再生】を掛けた状態よりも、素早かった!
すぐさま、【転移】で移動をして体勢を整える。
マズイ!マズイ!!マズイ!!!マズイ!!!!
あの速さはマズイ!!!!!
力と防御に関しては、私のほうが上だという自信はある。
しかし、その力も防御もまったく意味を成さないのだ。
その大きな理由が、ドス子が持っている二本の短刀である。
あの刀の恐るべき切れ味が、軽々と私の防御力を貫通して致命傷を与えてくる。
切れ味鋭い武器を持っていれば、力なんて必要ない。
後はただひたすら速く斬ることが出来れば、簡単に相手をバラバラに出来るだろう……。
実に合理的な戦闘方法だと感心する。
攻撃も守備も、短刀任せにして、只々速く動くだけ。
「ああ、くそぅ……。勝てないかもしれない……」
私は、連続【転移】で移動しているので、ドス子もまだ捉えきれていないようだ。
だけど、あちらも連続で【瞬間】を使ってきたらと、考えるとゾッとする。
早いとこ突破口を考えないと、こちらが先に切り刻まれてしまうかもしれない。
私は、色々な方法を考えてみたが、能力拳法で凌ぐのは、どうにもきつそうだ……。
能力拳法が無理ならば、後は私には【魔法】しかない!
「紫色の雲が泣いてる、哀れな魂を悲しんでいる……」
私の呪文詠唱が始まると、星空が雲で覆われ始め、ぽつりぽつりと雨粒が落ちてきた。
「天は怒り、悲しみ、感情をむき出しにして、全てを吐き出す!」
高速で【転移】を繰り返しつつ、呪文詠唱を続けていく。
「怒りは、雷鳴へ!悲しみは、豪雨へ!唸り声は、暴風へ!天の感情は、嵐と成らん!」
町中の血を洗い流すかのような土砂降りの雨が、辺りを包み始めていた。
暴風雨の中、ドス子は、ニヤニヤと嫌らしい笑顔を浮かべながら、私を見つめ続けている。
「天の裁きを受けよ、罪人!【招雷】」
私が腕を振り下ろすと、ドス子目掛けて雷が落ちた!
ドス子の武器は、短刀だ。
金属は電気を通す。
子供でも知っている原理だ!
あの攻撃は、防げないはず!!
「あ、それ、無駄ですよ!」
突然、私の頭の中に声が響いた。
足元を見ると、いつの間にか誰かの【魂糸】が刺さっていた。
頭に響いた声からすると、双葉ちゃんのようだけど、その【魂糸】は、上空の雲の中へ伸びていて、その姿を確認することが出来ない。
「ああ、今は僕、雲の中にいます!ちょっと充電中でして……。って、そんなことよりも気を付けてください!彼女に電気は効きません!!」
「は?」
双葉ちゃんの言葉に、私はドス子の姿を確認する。
すると、ドス子は、二刀を逆手に持ち、雷に向かって思いっきり振り上げたのだ!!
そのまま、二本の短刀は、雷を斬り裂く!!!
「え!?嘘でしょ??」
驚き過ぎて私の動きが、一瞬動きが止まる。
そりゃ、そうだ。
何処の世界に雷を切り裂く刀と、腕前を持つ剣士がいるというのか!
「あはぁ!」
その刹那の瞬間をドス子は、見逃さなかった。
ドス子は、私の真後ろに【瞬間】で回り込んできて……。
「しまっ」
ザシュ!
軽い音と共に、私の体を上下に真っ二つにしたのだった。
高層ビルの屋上の更に真上での出来事だ。
このままだと、落下して二人共お陀仏だろう……。
「願ってもないじゃない!」
私は、右腕で彼女の胸元を掴むと、そのまま逃さない様にぐいっと引き寄せた。
「一緒に落ちましょうか!」
私は、ありったけの【魂糸】を相手に突き刺し【魅了】で意思を攪乱させる。
今まで余裕の笑顔を浮かべていたドス子が、初めて少し焦った表情をしたのだった。




