快楽
私は、強い者が好きだ……。
私は、弱い者も好きだ……。
私は、人間が好きだ……。
私は、命が好きだ…………。
いや、命が好きなわけでは無かったな……。
私は、 命が 失われる 瞬間が 好きだ !!!
人間が、死ぬ瞬間が好きだ!
私の手によって、人間が息絶える瞬間を見るのが、堪らなく好きなのだ!!!!!!
「ううっ……うぅぅ…………」
今日も、私の手によって、命が失われようとしていた。
本日の命は、【ファーベル】の魔女だった。
名前は、よく覚えていない。
確か、【双葉】とか言ってたかな?
もう、そんなものに興味もなかった……。
今回の相手は、中々手強かった。
やはり、強い相手を完膚なきまで叩きのめして、殺すのが一番気持ちがいい。
親父殿は、私の事を戦闘狂だの、快楽殺人者だの、めちゃくちゃに蔑みやがったけど、それは大正解だったみたいだ。
私は、戦闘狂で快楽殺人者なのだから……。
自覚してしまったのだから、もう止まらない。
誰にも私は、止められない!
だって、私は強いから。
魔女さえも殺せるほどに強いから!!!
私は、両手に持った短刀を握りしめて、魔女の最後を楽しんで見ていた。
コヒュー……コヒュー……
私が開けた喉の穴から、空気が漏れる音が聞こえる。
うん、最高のメロディ♪
人が死に向かうにつれて、体が奏でる断末魔のメロディが堪らないぃ!
ゾクゾクっと背筋に、気持ちがいいやつが流れ出した。
私は、能力拳法の使い手でも、特異能力者でもなかった。
ただ、生まれ付き特別な力を扱える【天才】だったのだ。
私の特殊能力は、【刀神】。
誰よりも刃物を上手く扱えて、誰よりも刃物で上手く切り裂くことが出来る力だ!
こんな素敵な能力を試すなってほうが無理だった。
初めては、母親だった。
綺麗に分解できたと思う。
そして、次は父親だった。
この時点で、私を抑える者が居なくなった。
今、世間では、連続殺人犯が夜の街を彷徨っていて、大変危険な状態らしい。
だから、魔女様直々に私を狩りに来たらしい。
だけど、結果は、ご覧の有り様!
「アーッハッハッハッハッハ!!!!!!!」
自然に笑い声が溢れる。
私の相棒である、短刀【時雨】と【千雨】が、血に染まって紅く綺麗に輝いていた。
刀集めが趣味だった親父殿が、一番自慢していた刀だ。
私と、この子達で斬れないものなど無い。
私たちが、この世界最強なのだ!
だから、殺す。
私自身の快楽のために、強き者を殺す!
強き者がいなくなったら、弱き者でもいいや……。
人が死ぬ瞬間を楽しめれば、それはそれで……。
魔女の痙攣が目に見えて、弱まっていく。
ああ……。
「堪らない……」
ジェットコースターの一番高いところから落ちる感覚と似ている。
恐怖と快楽で、手の先まで痺れるような興奮。
これだから、殺しは止められない。
特に、この国に必要な人物ってだけで、興奮度が増す。
この国を創った魔女様を、ガムの噛みカス以下の私が滅ぼしたのだ。
しかも、私を生み出したのは、この国で暮らしていた私の両親だ!
滑稽すぎて笑えてくる。
「ああ、楽しい!」
これから、私はどうなるのだろう?
歴史に名を残せるくらいの大悪党になっていくのだろうか?
「キャーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
おや?
路地裏の向こうを見れば、若いOL風の女性が叫び声をあげて逃げ出していた。
どうやら、この血だらけの現場を見てしまったようだ……。
「私は、魔女の最後を見たいのに……無粋なお方だ……」
私はポケットから、カッターナイフの刃を一枚取り出すと、逃げている女性目掛けて投げつけた。
カッターナイフは、狙い通り頸動脈を切断したようで、面白いように血が噴き出していた。
「ああ、どちらも見たいなぁ~。ピクピク痙攣する魔女に、血を撒き散らしながら踊り狂う女性、どちらも魅力的だ……」
だが、女性は、あっという間に倒れこみ、そのまま動かなくなってしまった。
ああ、やはり一般人はつまらないな。
死までがあっという間だ。
私は、魔女の死に際を楽しもうと向き直ろうとした、その時……。
不思議なことが起こった。
女性の体が震えだし、爆音と共に稲光が辺りを包み込んだのだった。
「へぇ~……、面白いことになったじゃない」
私が呑気に眺めているのを尻目に、彼女は傷を癒して立ち上がったのだった。




