表彰状
「ここでいいのかしらね?」
私は、【ウラヌス】の真ん中にある大きな建物を見上げて、そう呟いた。
私は、自分の姿を再度確認する。
真っ黒の髪に、真っ黒なローブ。
紅眼と、悩まし気なダイナマイトバデー……。
「なんで、こんな無駄な肉付けなければいけないのかしら……」
私は、頭を抱えて深い溜息を吐いた。
事の始まりは、今から1時間ほど前に遡る。
コンコンコン!
「ん?この別荘に御客人?……また、弟子志願者じゃないでしょうね?」
部屋で本を読んでいた若い女性へ転生した私が、席を立ってドアへ駆けていく。
今、この別荘にいる私は、全部で4人。
お客様対応をしようとしているメガネを掛けた若い女性へ転生したメガネ卵。
椅子で寝息を立てている豚へ転生した豚卵。
お茶をがぶ飲みしている、うねうね動く植物へ転生した草卵。
そして、最近ハマった御餅という食材を色々料理している私だ。
ちなみに、既に【変身】でいつもの幼女へ姿を変えている。
彼女らへ転生した時代の記憶があるので、私がこの中で最年長なんでしょう。
だとすると……、この後の展開も知っている。
「はぁ~……」
私が大きなため息を吐いていると、最年少のメガネ卵が手紙を持って広間へやってきた。
「なんか、【ウラヌス】の魔女から表彰式に呼ばれたみたいなんだけど……」
そうだったわね~。
魔女の使いとやらが、招待状を持ってやってきたのよね~。
なんでも『様々な魔法道具や、補助器具や、武器を開発した功績を称えて、魔女直々に表彰したいから首都にある魔女の家まで来てほしい』って話だったような……。
「なんでも、……(以下略)」
「……うん、知ってた」
「まっ!そりゃ、未来の私ですもの、知ってるわよね~。んで、過去では、コレどうしてたの?」
メガネ卵が、ヒラヒラと手紙を振ってみせた。
そんなもの……、最年長の私が行ったに決まっているじゃないか!
だって、君ら【変身】も使えないほど若いから、とても頼れないし……。
そんな言葉が喉まで出かかったが、ぐっと堪えて飲み込んだ。
【変身】が使用できないってことは、転生した生物の肉体以上の強さを得ることが出来ないってことだ。
ああ、過去の私って、こんなにも不便な生活送っていたのね……。
私は、深く息を吐き出すと、仕方ないと料理の手を止めた。
「ああ、私が行ってくるわよ。そろそろ会ってもみたかったしね……」
私は、エプロンを外すと、出かける支度をした。
部屋のコート掛けに掛けてあった真っ黒いローブを羽織ると、むくむくと体が成長し、ムチムチのお姉さんになる。
これは、私が開発した魔法防具で、身につけるとグラマーな女性へと、見た目を変えることが出来る代物だ。
要は、いつでも身に着ければ、大魔法使い【ダルスティン・ローズ】へ早変わりってわけだ。
この別荘は、大魔法使い【ダルスティン・ローズ】の別荘という扱いなので、いつでもそれっぽい姿になれる道具が、早い段階で必要になると思ったのだ。
そこで、若き日の私は、この別荘で一番初めに作り出す道具をそれに決めて、なんとか完成させたのだった。
……ぶっちゃけると、私を見た人の認識をグラマーな大人の女性へと変えるだけの、認識操作の魔法を発するだけのローブなんだけどね。
但し、未熟な時代の作品のため、私自身にも魔法が掛かる。
つまり、私にも自身の姿がグラマラスな女性な姿に見えるという、嫌な効果まであるのだ。
「それじゃあ、行ってきまーす。場所は、首都の魔女の家で良かったんだっけ?」
「あ、そうだけど……。ねぇ、さっき言ってた会いたかったって、誰に?」
メガネ卵が、私を見ながら不思議そうに首を傾げた。
ああ、そうか。
この頃は、まだ興味が無かった頃か……。
じゃあ、私の言葉で少し興味を持たせてあげよう。
私は、ニヤっと笑うと、見送るメガネ卵へ向けて、こう言ったのだった。
「そりゃ、当然【12番目の希望】、【ラリファン・ルルル】に決まっているじゃない!」
「はぁ……。そうは言っても、私って真面目な雰囲気嫌いだし、堅苦しいのもまっぴらごめんなのよね……」
【ウラヌス】の魔女には会ってみたかったが、表彰はされたくない……。
私は、目立つような行為がそもそも好きではない……。
「まぁ、ぐだぐだしてても始まらないか……」
私は、重い気持ちを押し殺して、魔女の家をノックした。
「どうぞ、開いておりますわよ」
鈴のような透き通った綺麗な声が中から聞こえた。
「失礼しま~す」
私は、家の中に入ると、その少女に目を奪われた。
透き通るような白い肌と髪。
私とは対照的な真っ白い装飾品と服。
ただ一つ私とおそろいの紅眼。
聞かなくても、直感で分かった。
この娘が、この【ウラヌス】の魔女であると……。




