木草界の魔女
アダモゼウスが管理する【木草界】とは、巨大な木【木草樹】を陸として、生物が暮らす世界である。
全ての生命が木草樹に感謝をして、恵みを受ける世界。
その木草界に存在する国の数は、十二。
①三大国の一つ目、始まりの国【マールド】
②三大国の二つ目、武力の国【グランディア】
③三大国の三つ目、化学の国【ファーベル】
④部族の国【ガラッパ】
⑤女王の国【ズラーヌ】
⑥空中の国【スカイ】
⑦魔法の国【ウラヌス】
⑧宗教の国【イブール】
⑨科学の国【ファミニ】
⑩宝石の国【エパール】
⑪昆虫の国【テントナル】
⑫苦王の島【メフィスト】
未開の秘境【サルト】
この十二の国と、未開の地で、木草界は構成されている。
そして、十二の国全てに管理者である【魔女】が存在する。
魔女の始まりは、各人々が勝手に生きていた【マールド】を纏め上げて建国した少女【ゼロ】であった。
争いの絶えない木草界を憂い、自らの特性である【不老】を最大限利用し、長い年月をかけて国を築いた。
争いを終わらせ、平和な国を作り上げたゼロは、その経験を活かそうとした。
【マールド】以外にも国を作って、そこの人々が平和に暮らせるように、私と同じ管理者を置く。
そう決めたゼロは、自分と同じ特性を持った少女を集めて、知識を教え込んだ。
少女の姿というのが、いかに相手を油断させて、無防備にさせるのかを、身をもって体験していたからだ。
不老に目覚めた瞬間から年を取らなくなった少女達は、見た目はただの可愛らしい女の子である。
しかし、少女たちは、寿命による死から解放され、外部的要因がなければ死ぬことはない。
長い年月を生きて知恵と力を蓄え続けた少女は、見た目では到底測れない存在となる。
ゼロの教えによって、知識と力を得た少女達は、それぞれの場所で国を創りあげた。
そして、いつしか少女達は、魔女と呼ばれる存在となっていった。
この5番目の魔女【五代月詠】は、元々貴族の少女だった。
何不自由なく、3兄弟の末っ子として大変可愛がられ、日々を過ごしていた。
しかし、月詠が15歳の時に【不老】の能力に目覚めたのがきっかけで、事態は急変する。
年を一切取らなくなった月詠に、周りの者が徐々に恐怖し始めたのだ。
やがて月詠は、化け物として迫害されるようになる。
今までのお嬢様としての生活から一転して、地下の牢獄で蔑まれながら暮らす生活へ。
彼女には、兄も姉もいたため、跡取りとしての価値はなかった。
そしてそれは、肉体的にも精神的にも消耗しきった、数十年目のある夜に起こった。
ボゴォォオン!!!
月詠を閉じ込めている牢獄を破壊して、彼女が助けに来たのだ。
彼女の名前は、【ゼロ】。
始まりの魔女にして、月詠の師匠になる存在だった。
ゼロは、月詠を牢獄から連れ去り、他の少女達と一緒に自分の知識を教え込んだ。
そして月詠は、長い年月を修行して、5番目の魔女として成長した。
魔女となり、新たな国を創る為、ゼロの元を旅立つ時がやってきた。
その時に、ゼロが魔女として授けた名前が【五代月詠】だ。
月詠は、大変この名前を気に入ったようで、彼女の前の名前は、記憶にも残っていない。
そして、彼女は自分だけの国を創った。
月詠を鍛えたゼロの過ちは、彼女が元々貴族だったこと、蔑まれていたことの解消をしていなかったことだ。
【三つ子の魂百まで】というが、月詠は元々非常にわがままで、誰からも愛されていないと気が済まない性格である。
だから、自分を愛する人だけを集めて国を創った。
自分を妄信する人だけを選別して……。
そうやって出来た国が、女王の国【ズラーヌ】である。
絶対王政、恐怖政治、逆らうものは死刑。
月詠による月詠のための王国。
当然、人は幸せとは程遠い暮らしを強いられていた。
自分のなんでも思い通りになる国で、月詠は調子に乗ってしまった。
どんなに困ったことがあっても、師匠から教えてもらった力で全て解決できていたから……。
だから、月詠が一番大好きで、本当に困ったら必ず助けてくれると思っていた師匠から、終わりを告げる使者が来た時には、一瞬何が起こったのかわからなかった。
自分の人生が終わっていく中で、ようやく自分の間違いに気が付いた時には、全てが遅かった。
「せめて、殺す前に叱ってやんなよ……。これじゃ、月詠が可哀想だ」
「散々、多くの人を苦しめておいて可哀想もないでしょ?ギフトさん」
近づいてくる気配は、分かっていた。
バリバリバリ!!!
上空では、激しい音を立てて、ヘリコプターがホバリングしている。
先ほど、私が立ち上がったのと同時に、離れて行ったはずのヘリコプターが戻ってくるのが分かった。
歩みを視る痛みに耐えきれず、頭を押さえてうずくまっている間に、ずいぶんと接近を許してしまったみたいだ。
私がチラリと後ろを振り返ると、そこには中学生くらいの女の子が立っていた。
先ほど、月詠の全ての知識を理解したところだから、その顔には非常に見覚えがあった。
「芭蕉紅那。まだ、この体に用があるのかな?」
それが、彼女の名前だった。
始まりの国【マールド】の最終兵器。
ゼロが寄こした終わりの使者。
彼女は、フゥ~と大きなため息をすると、口を開いた。
まだまだ続きます。




