鈴の音に導かれ
どこからか鈴の音が聞こえる。華峰は立ち止まり周りを見回した。暗いアスファルトの道。何も無い。
リンリンリン。
高く澄んだ綺麗な音。だけれど、音の発生源が分からない。
綺麗なあやしいおと。
華峰は前を見る。
リンリンリン。
華峰は歩き出した。
「はーなーね?」
「!?」
後ろから、いきなり声を掛けられた。華峰はとても驚いた。
相手は、そんな華峰を見て、クスクス笑う。
相手は、黒い影に包まれ姿が分からない。声色は中性的。しかし華峰は怖がってはいない。
「華峰も気になる?」
コクン、と華峰は頷いた。相手の名前を華峰は知らない。
相手は華峰を面白そうに見たあと、言った。
「華峰、吾が名前は知ってるでしょ?。」
「……?」
しばらく、華峰は考え、相手をチラッと見た。
「……旭翔。」
「せいかーい。」
相手の影が消え、現れた童子、旭翔はニコッと笑う。
しかし、その童子の容姿は異常。1本の角に、三つの目。
旭翔は華峰の手を引いて、歩き出した。
「行こう。華峰。お祭り始まるよ。」
「ん。」
暗いアスファルトの道を進み、鳥居を数個潜り、林を抜け、たどり着く。
リンリンリン
「旭翔、ここどこ?」
「どこって、お祭りだけど?」
旭翔はこっちこっちと手をふっている。
鈴の音が強くなる。
リンリンリン
その音に混じって、唄が聞こえる。
さあさ、たのしめ夜明けまで
祭りはみじかく、またながい
1つに連れられ、また1つ
新しき物が増えるだろう
祭りにゃ人は、入られぬ
「ひとがいない。」
ポツリと呟く。旭翔は華峰の手をぎゅっと握る。
「吾が案内した。もうすぐ、皆くる。」
ならば、この唄は、この鈴は誰が鳴らしているのだろう。華峰は旭翔の言葉に従いそのまま待つ。
ドンシャララ、シャラン、ドンシャララ
遠くから祭り囃子が聞こえてくる。祭りが移動してくる。
一つ目、鬼、唐笠、ろくろ首、蜘蛛。
様々な物が、祭りに参加している。
華峰は目を見開いた。
「賑やかだろう」
「旭翔、ありがとう」
賑やかな祭りに華峰は泣いた。
旭翔は華峰に遠慮がちに手を伸ばした。
「ごめん、華峰。遅くなった。」
「ううん。いいの。」
華峰は涙を拭い、旭翔の手をとる。その額には、小さな角が生えていた。
「本当に吾れと共に行くの?」
「それが私の望みだから。」
華峰は旭翔に笑いかける。迷いなど無いというように。
旭翔は、華峰と一緒に物の中に入っていった。
「これから宜しくね。」
「吾も宜しくな。」
祭り囃子が大きくなった気がした。
リンリンリン。
さあさ、たのしめ永遠に
祭りは永久に続くだろう
1つの仲間が増えたこと
我らは、喜び、唄うだろう
その、妖たちの祭り、百鬼夜行はゆらゆらとどこかに行った。
後には、沈黙が降りるだけ。
誰も知らぬ女の子の物語。
その子は、愛を知らなかった。
その子はいつも孤独だった。
その子は、傷をたくさん負った。
その子はある妖に願った。
妖になりたい、と。
人を辞めたい、と。
そして、愛が欲しい、と。
ある妖は、その子を気に入った。
―いや、その子に恋をした。
その子の願いは叶えられ、今もどこかにいるでしょう。
ある妖の願いは叶い、今もその子の隣にいるでしょう。
また、この瞬間にも妖は増えているかも知れません。
ではでは皆さん、またいつか。