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帰宅すると冷蔵からビールを取り出して、すぐにパソコンのモニターを確認するのは習慣となっていた。
そこに映っている女子大生の生活を観ても、特にワクワクとした気持ちはもうおこらない。
かといってなんの感慨もないかと言えばそうでもなくて、いうなれば大切にしている熱帯魚の様子を毎日確認するように、僕はモニターの中の女子大生をある意味飼育しているような気持ちで様子を伺うのである。
僕は今、女子大生の毎日の生活を盗撮している。
僕は人の心がわからない。
だから他人がどう考えているかが気になって仕方がないのだ。
一般的に鈍感な人は敏感な人の気持ちがわからないって非難されがちだ。
だけど敏感な人は「なぜ鈍感な人が他人の気持ちがわからないのか」がきっとわからないと思う。
自然に遠くへボールを投げられる運動神経の良い人が、運動神経の悪い人はどうしてそんな投げ方になるのか理解できないの似ている。
僕は子供の頃から他人の気持ちを深く理解することができなくて、まっすぐ道を歩いているだけのつもりなのにすれ違う人々を傷つけてきた、らしい。
今をもってそんな自覚はないのだけど、友達だと思っていた人が突然疎遠になったり、一緒に仲良くしゃべっていた女の子が次の瞬間大粒の涙を流しているといったことがたびたび起きた。
一応理由を聞くと、相手を傷つけるつもりなんてこれっぽっちもなかった僕のセリフを、相手が僕の想像もつかない解釈で受け止めてなんだかダメージを受けているのである。
僕としてはまったく悪意はないわけなので、こういう場合は謝るのが難しい。
一体なにが悪かったのか最初の方はわからないからだ。
そこでも僕は言ってはいけないことをついつい言ってしまうことになる。
「君を傷つけるつもりはなくて、こういう意味で言ったのだ」と。
これは相手からすると、どうやら自己弁護のための言い訳にしか聞こえないようだ。
結果として火に油をそそぐことになるわけで絶対に言うべきことではない・・・らしい。
僕はそう言われたらなぜ傷つけたかもわからないけれど、その言い訳すら許されないことになるわけで、こうなるとただ機械的に頭を下げる以外に方法はなくなってしまう。
自分では悪いことをした自覚も無いのに頭をさげなければいけない状況にしばしば直面する僕はやがて便利な言葉を発見することになる。
「君を傷つけるつもりはなかったんだけど、結果としてそうなってしまった。本当に申し訳ないと思ってる」
僕からすれば無理やり自分の汚点を提示しないかぎり、釈然としない表情のまま謝るなんて不可能だったのだ。
だからちゃんと反省している顔を演出するために、こういった自分の悪かったところを見つけて口にだすようにしている。
相手が納得しているかどうかは正直わからないけど、とにかく頭を下げることができるわけだから僕にとってはとても便利な魔法の言葉だったのだ。
小学校の頃から僕は臆病で、明るい性格ではなかった。
中学校、高校と過ごすうちにますます自分の内向的な性格をはっきりと意識し始めた。。
クラスではずっと隅っこの方で苔のように静かに息を吸って、そして吐いていた。
僕は華のある男子、女子の素敵な会話に耳をすまして聞いているだけで、自分から彼らの輪のそばに近づいていく勇気はとてもなかった。
自己紹介がとても苦手だった。
みんなはひとこと面白いことを言って笑いをとっていくのに、僕は冗談を言って滑ってしまうのが本当に怖ろしくて、名前とよろしくおねがいします以外は一切言いたくなかった。
本当は名前を言うのすら嫌だった。
森田和良ですと言うと、必ずクスクスと教室内で笑いが起きる。
誰かがいいともー!と絶対に言う。
ちっとも面白くないのに、クラス中のみんなが僕を見て笑う。
僕はそれに応えて、えへへと愛想笑いを浮かべるのがとても苦痛だったけど、そうしないと楽しそうにしているクラスのみんなが急にしーんとした冷たい反応をとりそうで怖かった。
そんなふうに臆病で地味な僕だったけど一人前に女の子に興味があって、普通に喋りたいって思う願望は性欲とともにだんだん強くなってきた。
ようするに僕はモテてみたいって思うようになっていったのだ。
僕はモテたいがために、自分のことを誰も知らない土地に行って、イチからやりなおしたいとずっと思っていた。
今までと全然違う自分に生まれ変わりたかった。
そのために最高のタイミングだったのがやっぱり大学生活だった。
親に無理を言って実家から遠方の大学に行かせてもらった。
仕送りをしてもらう交換条件は有名な国立大学に合格することだったが、友達のいない僕には十分に勉強をする時間があった。
街の小さな電気屋だった父親の稼ぎでは仕送りをするのは随分厳しかっただろう。
僕は関東のとある国立大学に合格し、その年の4月からそこに通うようになったのだ。
受験勉強と並行して、僕がもうひとつ頑張っていたことがある。
それはとあるお笑い芸人の言動の研究だった。
その芸人はチャラい。
とにかく軽いのである。
だけど例えば「君が好きだからセックスしたい」みたいなストレートな物言いはかえってお茶の間の共感を呼ぶような不思議な個性のタレントだった。
僕はよせばよかったのに大学に入ったらその芸人のようなキャラクターで振る舞おうとしたのだ。
その芸人が出ているテレビ、DVD、劇場は全てチェックし、本やエッセイも買った。
僕は自分が一人の時はぶつぶつとその芸人の喋り方を真似した。
勉強の気分転換に、夜の散歩に出かけることが多かったが、そんな時はその芸人のセリフと一緒にトリッキーな動きなんかも練習したものだった。
そうしたほぼモノマネに近い僕の試みは半分成功して、半分失敗した。
成功したのは見せかけの部分で、僕は見事に大学でチャラいキャラクターを演じることができた。
そして失敗だったのはそのキャラクターは全くウケずに、僕は女の子たちを不屈の精神で口説き続けたがことごとく振られてしまった。
表面的に真似をしたって、どこか無理が生じるのだろう。
僕が生まれつき持っているつまらない部分は、たとえ初めてその日に出会った連中でさえもきっとわかるに違いない。
まぁ、人とある程度話すことができるようになっただけでも、何もやらないよりはマシなのかもしれない。
僕が人の気持ちを深く理解できないのはそんな表面的に明るく振る舞う発言のせいだろう。
実際に人が、今、どういう気持ちになっていて、その人の気持ちに寄り添った上でどう楽しませようか・・・と考えいるわけではないからだ。
内向的な性格がバレないように、僕はあえて人が遠慮して言わないことをズケズケと言うことに務めて笑いを取ろうとした。
それは運良く笑いにつながることもあったし、森田は人の心がわからない無神経な奴、というレッテルを貼られることもあった。
僕はとってつけたような10万ルクスの明るさで、ただ自分勝手に発光していただけだった。
ようやく人生で最初の彼女ができたのは大学2年生の時で、同じサークルの足の不自由な冴えない女の子だった。
とにかく世の中の嫌なことが彼女めがけて襲いかかってくるような不幸体質の女の子で、ストーカーされたり、痴漢されたり、恐ろしい犯罪者に監禁されたりと、どうしてそんなことばかりが起きるんだと首をかしげたくなるような子だった。
その子とはその監禁事件がきっかけで半年ほどつきあった。
正直言って僕の性欲が先行していたお付き合いで、彼女の身体が目当てだった。
セックスしたい時だけ彼女の部屋に行って、それ以外は一切連絡をとらなかった。
だけど付き合ってみると性格は地味だけど良い子で、僕は最初はそんなに好きでもなかったのに、だんだん彼女に入れ込んでいく自分が新鮮だった。
だけど別れは突然やってきた。
付き合っていた彼女が突然蒸発して恋愛が終わるなんて全くの想定外だった。
彼女が消える前日は朝、昼、晩と3回もセックスをして、夜は彼女の手料理をいただいて帰ったのだ。
少なくとも彼女が僕を嫌う理由はなかったと思う。
いくら鈍感な僕でもそれくらいはわかるというものだ。
孤児だった彼女は施設で育ったため親兄弟はいなかった。
頼るべき親戚もおらず、彼女が僕の前から消えて行くべきところなんてどこにもないはずだったのだ。
彼女はまるで誰かの底知れない恨みを買って消されたように、彼女自身も、部屋の荷物も、全てが一日にして消えてしまった。
それははじめから彼女なんていなかったんじゃないかと錯覚したくなるほどだった。
彼女はそれ以来ぷつりと僕の前から消えてしまった。
警察の必死の捜索にも関わらず、5年経った今でも彼女は発見されていない。
僕は彼女にGPSの発信機でもつけておくべきだったのだ。
***
僕が次に女性と付き合うことができたのは、僕が社会人2年目の時で、今住んでいるこのアパートの隣に住んでいたOLだった。
実際に付き合っているつもりでいたんだけど、それは僕の勘違いだった。
隣に住んでいたというのに、彼女は僕を部屋にあげなかった。
会うときはいつも僕の部屋か、街のどこかでデートだった。
おかしかった点は他にもある。
彼女から僕への連絡はほとんどなくて、夜中に誰かが時々彼女の部屋に訪れる気配がした。
そのことを問いただすと彼女は不機嫌そうに弟だとか、父親がきたと説明した。
デートは事前に約束されたものではなく、突然今日会わない?っと言ってくることがほとんどだった。
僕は彼女の考えていることがわからなくて不信感を持ち始めていた。
ある日、僕が彼女とデートしていたら、修学旅行らしきの中学生が道ではしゃいでいて、彼女にぶつかった。
その時に彼女は鞄を落としたのだが、彼女のトートバッグから中身がバラバラと道路に散乱してしまったのだ。
僕がそれらを拾い集めている間、気の強い彼女は中学生たちを叱り飛ばしていた。
彼女が僕の方を見ていないのをいいことに、僕は彼女の部屋の鍵を自分のポケットにこっそり入れた。
そして、中学生を叱り疲れた彼女はその日は帰ると言ったので、僕らはその場で別れた。
僕はそのまま家には帰らず、靴の修理と合鍵の作成を行っている店に彼女の部屋の鍵を持ち込んだ。
簡単な構造の鍵だったことと、ちょうど在庫があったので40分ほどで合鍵が出来上がった。
合鍵が出来上がると同時に僕の携帯が鳴り、「鍵を無くした!」と彼女がややパニック気味に訴えてきた。
僕はさっき中学生とぶつかった場所をもう一度探してみると言って電話を切って、10分ほど公園で座って缶コーヒーを飲んだあとに彼女に電話をかけた。
「鍵が見つかったからこれから届けにいくよ」
OLの彼女は毎朝きちんと決まった時間にでかけていき、特に用事がなければいつも同じ時間に帰ってくる。
僕はその日、自分が担当している仕事が入っていなかったので、会社に休みをもらって彼女がでかけるのを待っていた。
アパートを出た彼女が駅へと歩いていく姿を部屋の窓から確認すると、僕は彼女の部屋の合鍵を使って中に侵入した。
彼女が部屋に入れてくれないのだから、自分で入るしかないのだ。
僕が女性の部屋に仕事以外で入るのはその時が人生で2度目だった。
絶対に僕が選ばない可愛い色のカーペットやテーブル、カーテン。
センスを感じる雑貨たち、清潔に収納されている色とりどりのタオルたち。
クローゼットの中には大人の女性を感じさせる清潔だけど少し色気のある服装と、ブランドバッグが窮屈そうに並んでいた。
僕は女性の部屋に入っているというドキドキと、勝手に他人の家に忍び込んでいるという緊張感に興奮しながら家具や雑貨にうっかり触れて、位置が変わってしまわないように忍び足で慎重に部屋の中を歩きまわった。
洗面所へと入ったとき、僕は色違いの歯ブラシが2本ならんでいるのを発見した。
僕はやっぱりなと思っただけで、それほど驚きはしなかった。
そしてパソコンのモニターの横には、彼女と僕の知らない男のツーショットの写真があった。
彼女とそう年齢の変わらない男性だったので、父親ではないだろう。
ふたりは腕を組んでいたし、彼女は幸せそうな表情をしていて、僕はそんな彼女の顔を見たことがなかった。
その表情は恋人とのデートを楽しむ時の乙女そのもので、その男性は弟なんかでもない。
ゴミ箱をあさってみると、使い終わったコンドームが雑にティッシュに包まれて入っていた。
捜査の結果、彼女は二股をかけていて、どうやら本命は僕ではないことがその日はっきりしたのである。
僕は念のため手袋をはめると用意していたソケット型の電話盗聴器を取り出して、電話の後ろのコードをそれにつなげた。
盗聴器自体は固定電話の後ろの様々なコードの束に隠れて半ば見えないようにしておいた。
よほど機械に強い人間でなければとても盗聴器とはわからず、電話線の分配器のように見えるだろう。
盗聴器の電源は電話線を流れる微弱電流からとることができるので発見さえされなければ半永久的に盗聴が可能だった。
受信範囲は半径50m~100mなので、隣に住んでいる僕の部屋であれば全く問題がない。
盗聴器自体が周波数を1秒ごとに変えるスクランブル機能をもっているので、盗聴器を発見するための機械でも次々と変わる電波を捕捉することは難しいはずだ。
固定電話を使っている時しか盗聴できないのが難点だが、恋人と長電話をするのであればおそらく携帯電話は使わないことだろう。
僕は自分の部屋に戻ると盗聴器の受信機をオンにして、彼女が電話をするのを待った。
盗聴器を仕掛けた夜に、彼女は早速電話を使った。
受信機からは、僕がいままで聞いたこともない彼女の甘い声が聞こえてくる。
だけどその日はだんだん彼女の機嫌が悪くなっていった。
どうやら夜に彼らは会うはずだったのに、相手の都合がつかなくなったらしい。
彼女は最後の方はヒステリックに電話を切った。
僕が盗聴を終えて受信機とつながっているヘッドフォンを外すと同時に、彼女から僕の携帯電話に着信があった。
「ねぇ。今日はなんだか寂しいの。あなたの部屋に行ってもいい?」
その日はいつもより激しく彼女を抱いた。
彼女はそれを僕の情熱と勘違いしたらしく、とても満足して帰っていった。
その日から毎日彼らの会話を僕は聴き続けた。
はじめは暗い怒りに燃えていて、何か秘密を聞き出して復讐をしてやろうと思っていた僕も、途中から馬鹿らしくなってしまった。
そのうち目的が変わってしまって他人の会話を盗み聞きするという純粋な(?)喜びに浸るようになった。
彼女たちの関係に僕はなんとも微妙な印象をもった。
彼女自体は猛烈に彼にアピールしているのに、彼の方はどうやらその気がないらしかった。
僕の前ではプライドの高いクールな女を装っている彼女が、本命である恋人にはすがりついている様が滑稽で笑えた。
下手に編集されたドッキリの番組よりもリアルで興奮して楽しかった。
そんな楽しい盗聴ライフを1ヶ月も続けていると、僕はだんだん飽きてしまった。
ずっと同じ会話の繰り返しで特に進展がなかったからだ。
ある日彼らのデートの日取りと待ち合わせ場所をメモしておいて、僕はその時間にその場所へ出かけていった。
彼女は僕の姿を認めるとりんごを丸かじりできるんじゃないかってくらい大きな口を開けて驚いて、そのあとすぐに苦痛に歪んだ表情を浮かべた。
まもなく待ち合わせの場所へ彼女にとっての本命の男が現れて、その場は瞬く間に修羅場となった。
彼女は僕をただの友達だと言い張ったが、僕は彼女の右足の付け根にホクロが2つあってとってもチャーミングだと褒めて、彼女の発言を意図的に台無しにした。
本命の男は冷たい目をして彼女をその場に置き去りにして、僕は一番の被害者だと思うのだけど、なぜか彼女から痛烈な張り手をくらった。
そうして次の日にはもう荷物をまとめて彼女は隣の部屋から出て行ってしまった。
僕は合鍵を使って彼女が住んでいた無人の部屋に入ってみた。
誰もいない部屋はがらんとしていて、確かに彼女が去ってしまったのだなと僕は改めて実感した。
自分が望んでこうなったのだが、二股のことさえなければ僕はわりに彼女のことが好きだったので少し寂しい気持ちになった。
僕は好きだったけど、彼女は僕のことはさほど好きではなかったわけで、やはり人の気持ちというのが僕にはわからないなと思った。
確かに彼女は僕のことが好きだと一度も言ってはくれなかった。
彼女は取り外すのが面倒だったのか、固定電話やエアコン、天井の照明、カーテンなどはそのまま置いていった。
いったん部屋に戻った僕は仕事で使う脚立と工具をもって彼女が元いた部屋に再び侵入した。
脚立を使って天井の照明を取り外す。
照明に取り付けられている電球を取り外して、盗撮機能がついた電球と土台ごと交換をする。
盗撮機能付き電球にはその土台にSDカードをセットすることができ、Wi-Fi転送機能があるSDカードにしておけば録画した動画をほぼリアルタイムで転送することができる。
電源も直接とれるし、メモリがいっぱいになったら自動的に上書きされる機能もついているので半永久的に盗撮が可能だ。
盗撮機能自体は電球を受ける土台の方に付属しているため、電球が切れて誰かが交換しても盗撮器自体はずっと仕掛けられたままになるはずだ。
以前、固定電話につけていた盗聴器は次の住人に発見される恐れがあるから回収することにした。
こうして僕は半永久的に隣人の暮らしぶりを盗撮し続けるシステムをつくりあげた。
いま入居している女子大生の前はフィリピン人の女性だった。
その前は少し年季のはいった風俗嬢で、その前が僕に二股をかけていた例のOLだった。
風俗嬢もフィリピン人の女性も、個性的で観察するのがとてもおもしろかった。
だから次はどんな子だろうと期待していたのだが、今度は普通の女子大生で僕は少しがっかりした。
顔はまあ美人な部類に入るだろう。
スタイルだっていい。
だけど、彼女は特に家の中での動きがなくて一日中ぐったりと寝て暮らしているので観察していてもつまらないのだ。
熱帯魚で言うところのベタをずっと見ているような気持ちだった。
誰かから彼女に電話がかかってくることもほとんどなかった。
たまにメールがくるようだったが、ちらっとそれを見て返信したり、後回しにしたりしている。
彼女の日常はあまりにも変化がなく、盗撮しがいの無いタイプだった。
盗撮をしていて、僕がひとつだけ心がけていることがあった。
それは女性の裸を極力見ないということだ。
盗撮をはじめた当初はそれこそ画面にしがみついて女性の裸をつぶさに見ていたが、誰も見ていないと女性は恥じらうという概念がどこかにいってしまうらしい。
唐突にムダ毛処理をはじめたりと男の幻想を砕くような映像ばかりを見るはめになってしまう。
もちろん勝手に観ているのだからムダ毛はカメラに映らないところで剃ってくださいと文句を言える立場ではない。
僕はモニターの女性が着替えも含めて服を脱ぎそうな気配を見せると、すぐに画面を消すようにしていた。
そして頃合いをみてモニターのスイッチを再び入れる。
初めからずっと見えている下着を見ても興奮することは無いように、一瞬ちらりと見えるからこそ女性の身体を見ることに価値を感じるのだと僕は思う。
そんなふうにしていたから、ずいぶん長くこの女子大生を盗撮していたのに、ようやく昨日になって彼女の身体の異変に僕は気付くことができたのだ。
僕の現在の盗撮の対象になっている深井知子という女子大生は、どうやら妊娠しているようだった。
続く・・・