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第八話 苦しみ~60年1月3日~
本格的な冬が来た。コックを引き連れてト・モルへ向かう。
「お兄様、今日はどう過ごしましょう」
「ト・モルの郊外に綺麗な花畑があるんだ。そこに行こう」
「まあ、素敵! 」
貴族がこぞって訪れるト・モル。王族もいるため、自由きままに遊ぶのは難しい。
「着きましたよ。お坊ちゃま」
「ありがとう」
さっそく王族を見かけた。ああ、素敵!
「ディスという村にお花畑があるらしい。歩こうか」
「うん」
空気がすんでいる。お花畑はまもなく見えてきた。
「わあ、お兄様、早く行きましょ! 」
「そんなに慌てなくても」
お兄様が苦笑した。楽しい。こんな日々が続いたらいいのに。
お花は色んな種類があった。お兄様にプレゼントしようと冠を作ってみる。
「ヴェルナ」
「? 」
まるであの時の貴族のように唇をくっつけられた。
「……ヴェルナ」
ハーソンがこちらを見ていたので、少し苦しくなり私はすぐに離れた。ハーソンはもういなかった。
「ハーソン、いたよ」
「え、ま、まあ大丈夫だろう」
お兄様が微笑んだ。




